ぱいなぽう

Open App
2/5/2024, 1:30:55 PM

テーマ 溢れる気持ち

この気持ちを留めておくのはもう無理だ。
意地張って突っかかっていた自分が一気に恥ずかしくなる。

何バカな事してたんだよ、俺。
今まで本当にごめんな。

半年前のケガで部活は困難に。
在籍はしているもののリハビリで一緒に活動できない日々。
強くなる仲間を見て、治らない傷に焦り、
どんどん自分自身を見失っていった俺。
捻くれていくのも必然と言って良い程条件が揃っていた。

そのせいでクラスメイトも部活のメンバーとも
精神的な距離が生まれて溝は深くなっていった。

そんな中でもアイツは毎日いつもと変わらない姿で、
毎日俺に声をかけてくれていた。
何なんだよ、と捻くれていた俺は気が付かなかった。
いや、気が付けなかった。
アイツは俺の事見捨ててなかった。
なんだかんだでアイツは俺の近くにいつもいてくれたじゃねぇか!!

スッと息を吸って溢れた言葉。

「ダイキ!!ショボくれてんな!ダセーぞ!!」

俺は今までにないくらい、周りが驚く程大きな声で叫んだ。

「マナト…来てくれたんだ…。」

ダイキは呟くと、袖で滲んだ汗と涙を拭いた。
そして静かに目を瞑り、ゆっくりと相手を見つめ直した。

「⁈」

目つきが変わり、闘志が輝く瞳。
まるで牙を剥き出しにした獅子のよう。

「(そうでなくちゃ、お前じゃねえ。)」

頷く俺。
ふと相手選手をみると
気迫に圧倒され、微かに震えているのが見えた。



12/24/2023, 12:59:52 PM

テーマ イブの夜

「ここはお前みたいなガキが来るトコじゃねぇ。とっととお家に帰んな。」
タバコを吸った背の高い中肉の男性が出てきて言い放つと
乱暴にドアを閉められた。

「待ってください!ここにこれを持っていけって…」

ふと手渡された封筒を思い出し、閉ざされたドアをドンドンと強く何度も叩いた。

「ったくしつけぇな!何持ってき…」

苛立つ彼はそれを見た途端吸っていたタバコを思わず落としてしまった。

なんと渡してきたのは真っ黒の封筒に雪の結晶の封。

「これ一体どこで…」

「すぐそこの商店街です。この路地をぬけてある家に届けろって言われたんです…知らない人に…。人、だったかも分かりませんが。」

「ふん、とんだクソガキだな。ルドルフ!仕事だ!ダッシャー・ダンサーはプランサーとビクスン、コメットを呼んでお前達も準備をしろ!キューピッド、ダンダー、ブリッツェン!俺のソリ出してこい!」

「?」

「気が変わった。すぐに俺も支度する。」

「へ?」

間も無くすると、赤い帽子に赤い上下のセットアップ。黒いブーツを履いてベルトをした彼が現れたのだ。
「ここからは俺の仕事だ。」

12/23/2023, 12:39:29 AM

テーマ ゆずの香り

湯が溢れ湯気が立ちこもると同時に
包み込むようなゆずの香り

水切りネットにつめたゆずを沈めて
肩まで浸かる私

アヒル隊長を浮かべ
冬至の柚子湯は完成する

「無病息災、無病息災…」

ブツブツと呟く私
それを聞いてフッと笑う母

キッチンのガボちゃの煮物が
ぐつぐつと音を立てて
私の風呂上がりを待っている

10/25/2023, 1:19:43 PM

友達

新学期早々
「消しゴム貸して」
と声をかけた隣の席のアイツが
まさか一生の友達になるなんて
誰が想像しただろうか。

金曜日の夜
「モンハンしようぜ」
のメッセージ。
お互い家族を持った今も
相変わらずの連絡をくれるコイツ。

「いいよ、部屋作っておく。パスはいつもと同じ」
そう返事をして僕はチャットアプリで今日も楽しく
ゲームをするのだ。

10/15/2023, 11:14:57 AM

鋭い眼差し


全身で鼓動を感じるアディショナルタイム
疲労困憊の全身が時間を遅く感じさせる

流れる汗、駆け抜ける風、轟く声援
スローモーションに見えるそのボールを
しっかりと捉えて一蹴り

「一蹴入魂!いっけぇーーー!!」

ベンチの監督は鋭い眼差しでこちらを見て
腕を組んで静かにうなづいていた

吠えたキャプテンの想いは真っ直ぐに
終了直前の逆転ゴールを決めたのだった。

Next