雨空を見上げて
卒業式の日は雨が降っていた。
空が泣いていて、
私も泣いていた。
悲しかった。
貴方とわかれてしまうことが、
もう、会えなくなることが。
辛かった。
――
雨の日は空を見上げる。
あの日のことを思い出すために。
たしかに悲しいし辛い。
だけど、忘れちゃいけない。
忘れた時が本当の別れになってしまいそうだから。
空を見上げて心に浮かんだこと
お前には生きていてほしかったよ
終わりにしよう、この世界を。
悲しく、苦しい世界を。
勉強、塾、部活、友達、大人…全てから逃げ回った。
辛いから。
辛かったから。
「だけど、もういいや。」
彼はそう言ってベランダから飛び降りた。
人生で最後の切り札を使って
彼は逃げたのだろう。
辛くない世界へ。
私もそっちに逝きたいな。
全部投げ捨てて。
だから、
もう、
終わりにしよう。
ドンッ
だんだんと周りが騒ぎだした。
さっきまで自分の中にあった血が目に映る。
意識が掠れていく、そんな時彼の顔がチラッと見えた。
彼は泣いていた。
終わりにしよう
過去に戻って
目が覚めると、私は小学生に戻っていた。
ちょうど6年生。
身の回りを見渡すとすぐにわかる。
いつも使っている眼鏡のフレームが微妙に違うし、中学生になってから買った本がなくなっている。
そして机に、もうずいぶんと使われたランドセルが無造作におかれており、確信した。
小学生に戻ったのだ。
寝起きが悪い自分でも、ベッドから飛び降り、階段をかけ下がる。
驚いたようにお母さんは「今日はどうしたの」
とまだ首もすわっていない弟を抱えながら私に尋ねる。
「6年生に戻ったの!」と言いたかったがおかしく思われると思い、「ううん、なんでもないよ!」と答えた。
もうとにかく嬉しくて、かなり早めに外に出た。
刹那、グニャリと世界が歪んだ。
さっきまで明るすぎる色が失せていく。
何故か足に力が入らない。
私、なんで…過去に戻りたかったんだろ。
朦朧とする意識の中でそんなことを考える。
……そうだ、貴方に伝えたかった、ことがあったんだ、
今、思い出した。
もう、遅いけど。
目が覚めると
私は今日も
あなたは血だらけで立っていた。
目からも透明な血を流して。
でも、人前では笑顔を絶えずに。
パッと見ただけでは普通に見える。
だけど、その人の一つ一つの行動を表情を見ているとだんだんと視えてくる。
見えない刃で斬られたところに血が滲む。
自分にしか分からない痛みに一人もがき、苦しんでいる。
そんなところが視えてくる。
でも、彼はそれが当たり前なのだろう。
可哀想に…。
本当はそんなこと当たり前じゃないのにね。
知らないってそういうこと。
そんな彼を私は今日も哀れむように見下す。
それが私の当たり前。
私の当たり前
このまま
光がない暗闇。
自分が何処に居るかもわからない。
何処へいけばいいのかもわからない。
だから、暗闇を照らす光を探さなければ。
でも、私にはもうないの。
貴方という光が――。
真っ暗だ。私は歩く。何の光もなしに。ふらふらする。
ああ、このまま倒れて真夜中の暗闇の中に溶け込んでしまいたいなぁ。
<真夜中>