臨時班長

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過去に戻って

目が覚めると、私は小学生に戻っていた。
ちょうど6年生。
身の回りを見渡すとすぐにわかる。
いつも使っている眼鏡のフレームが微妙に違うし、中学生になってから買った本がなくなっている。
そして机に、もうずいぶんと使われたランドセルが無造作におかれており、確信した。
小学生に戻ったのだ。
寝起きが悪い自分でも、ベッドから飛び降り、階段をかけ下がる。
驚いたようにお母さんは「今日はどうしたの」
とまだ首もすわっていない弟を抱えながら私に尋ねる。
「6年生に戻ったの!」と言いたかったがおかしく思われると思い、「ううん、なんでもないよ!」と答えた。
もうとにかく嬉しくて、かなり早めに外に出た。
刹那、グニャリと世界が歪んだ。
さっきまで明るすぎる色が失せていく。
何故か足に力が入らない。
私、なんで…過去に戻りたかったんだろ。
朦朧とする意識の中でそんなことを考える。
……そうだ、貴方に伝えたかった、ことがあったんだ、
今、思い出した。
もう、遅いけど。

目が覚めると

7/10/2023, 3:07:32 PM