無色の世界
全てが壊れた
たった一夜の数瞬、一回瞬きをしただけで
気づけば辺りは赤黒い異臭と
少し明るく見えた燃える匂い
今や時代も変わった
映画だけであって欲しかったあの風景が
''戦争 を 失くすため'' なんて名前だけ借りて
他所の紛争には目もくれない
数年前、流行ったモノクロカメラ
それで写した乾いた涙腺
日の当たんない路地裏に積み上げた〇体と
瓜二つ
桜散る
後追いするように咲く枝垂れ桜
白い雪解け水が染み込んで
濃いピンク色も実を透かす
とうに散った街中の桜並木も
今では惜しまれながら
真新しい靴跡を残している
咲いてしまえば一瞬で
敷いたシートにも既に花弁が落ちる
来春もきっと良い香おで
快晴
モザイクがかった風景に
熱い体感温度が触れる
嫌なほど清々しい青色が
空を仰ぐ横顔に差す
蓋を放り投げた河川敷
弾けた勢いで雫も辺りを汚す
綿菓子好いたあの童子も
薄く滲んだ虹色の眼
トンボを通り見れば
思い出した平坦なおとぎ話
今では塗りつぶされた
繰り返される喜劇の童話
ところにより晴れ
閉め切った二重窓は分厚く
重い色に堕ちたカーテンで隙間なく光を遮る
日光を嫌うように
時計も置かぬ部屋の壁紙に広がるのは
いつか描いた色褪せた夢
カーテンを一枚脇に開けば
差し込む光はとうに弱々しい
なぜ、威厳を保っていられるのか分からないほど霞む
朝方交わる人すらも空を見上げないのに
次期の晴れ間が見えたら
覚えた笑顔の芽をこんなにも愛おしく育ててくれる
平穏な日常
何かに高値な
それでいて意地悪しい価値をつける。
『もうすぐ春が来る』
そう笑顔で駆け出して
まだ冬空のもと
肌触れる想風はとても冷たい
出会って何年、あの日見た笑顔とは変わらない
あぁ、これは僕が惚れた笑顔だって
今でも惚れ直すだろう笑顔を愛す
愛の形をもつ紅色を
沢山集めて いつか枯葉で散りゆくまで
僕のフォルムは全て君で
散った後の風景は
ずっとその地に溶けていく