人間は夢がないとかなんとかいって
自分の色を見落とし
世界が暗く見える時があるらしい
人生は塗り絵みたいなもので、
その章が終わっただけだと思う
次のページをめくったら、
ただ白くて黒かっただけだと思う
鮮やかな蛍光色はここでおしまい
次は色鉛筆かな。
水彩かな。
ペン画かもしれない。
また染め上げればいい
人から色をもらえばいい
少しずつ本から会話から趣味から
暗く見えるのは平常仕様だよ
新しい絵が出来上がるなら
モノクロもなんだか悪くないね。
モノクロ
それでもあの夏の匂いは
胸の奥をくすぶっている。
蝉の声
湿ったアスファルト
蚊取り線香の残り香
大人を横目に
終わらない暑さに身を覆われて
小さな体は畳に転がる
戻らない時間と消えない記憶
いつかは忘れてしまうのだろうか
巡り巡る季節の裏で
未だ少しだけ思い出す
永遠なんて、ないけれど
布団の温もりを惜しんで朝を迎えると
窓の外に小鳥がとまっていた
サンドウィッチをトーストして
コロンビア豆のコーヒーを淹れて
少しの時間眺めていたら
余裕という名の贅沢など跡形もなく消えてしまった。
何時に起きても
支度をすれば同じ時刻
無情にも進む時計の針を尊敬するよ。
コーヒーは後味にとっておくべきだったと
少し悔やみながら日付に印を入れる
静謐で優雅な朝を夢見る日々は
いつも少しだけ忙しない
コーヒーが冷めないうちに
二人掛けのベンチ
一面黃葉したイチョウに
老夫婦は霞んだ空を眺める
はだけてますよ
指先の向こうで整うマフラー
秋色に一際目立つ緋色に
紡がれる温度と
輪郭の歪んだ雲の冷たさが
肌寒さを象徴した
cloudy
気にしたことがなかった
こんなにも胸が高鳴ってしまうのかと
声にならない声を呑み込んで
画面をつけては消す
若干おろかである気がして我に返るが
反して静寂すぎる部屋から視線を感じるまでに
高揚していることを隠せない
現を抜かすほどの
相手を待つ一日千秋な時間を過ごす上では
理性は感情に勝てないものである
既読にならないメッセージ