さぁ引っ越そうか。
掃除中の突発的な発言
断捨離の規模が破裂する
我に返る前に今のうちに荷造りを。
思考が幽体離脱をしたのだろうか
散らかった部屋の時間が止まる
諧謔的な言葉遊びではないみたい
安定を捨て、不安定を迎える
住居を変えるのは楽じゃない
ほんの少しの興味に大人が負けていいのだろうか
仕事は?お金は?関わりは?
なんとかするのだろうか
なんとかなるだろうか
それでもバックパックを背負い
空を泳ぎ海を渡り
無知の世界に踏み入れる
想像は案外容易くできてしまうもので、
前のめりな鼓動に任せて
1ヶ月後の作戦会議が始まった。
#24 君と飛び立つ
お風呂から鼻歌が聴こえる
愉快な恋人に頬が緩む
同じシャンプーの香りを纏わせた君に
見慣れているはずの心がまた胸が高鳴った。
誤魔化したくて目を逸らす
同じ歌を歌って今日という余韻に浸る
感情が移る瞬間を隣で見られる幸せを
今はまだ引かれそうで言えない
#23歌
20歳になった
年齢は数でしかないけれど
10代が終わってしまった喪失感は拭えない
青年期が終わり
大人へ変わってゆく
嬉しいような寂しいような
今になって全力で楽しめの意味が分かる気がする
早かった。
自分も小さな子を見て思う側になってしまうのだろうか
あの全てが輝く世界はもう見れないのだろうか
年上の言葉を素直に受け取ることにしよう
戻ってこない時間、忘れる記憶
皆が通る道だからこそ恐怖を感じてしまう
変わらない事のほうが多いのに
なぜこんなことを考えているのだろうか
人生第3章の始まり
さぁ、お酒を飲んでみよう。
#22昨日と違う私
記憶を遡る
昨日置いた鍵がないことに気が付いた
どこにしまったっけ
どの鞄を使ったっけ
忘れた、
幸い外では使わないものだから
きっと家の中にあるだろう
鍵が見つかるまで合鍵使います。
しょうがないこんな日もある
母はこんな日しかないよと言う
鍵の乗った船は未だ記憶の海を漂う
#21記憶の海
人間が手を加えていない世界
未知不気味恐怖廃墟
つまらないもので存在を印象づける
そのくせ都会に疲れたからと逃げてくる
ある人は縄を、ある人はテントを持って、
都合の良い生き物である。
──景色が圧倒的だった
──心霊現象起きるらしいよ
拡散されれば人が集る
ここもまた汚されるのか
死神がポーンとピアノを弾く
景色が好きな老人が、
廃墟に住む綺麗な恋人が、
熊に乗った子どもが、
ピアノの周りへとやってくる
静かな森が、戻りますように。
密かな望みが届くことを願って。
#19静かな森へ