明太子

Open App
5/3/2025, 4:18:12 PM

路地裏を進んだらそこは花畑だった
幼い頃の世界が目の前に広がる
遠くまで花に埋め尽くされまるで天国であった
呑気に感動していると不自然に消える出口を見た
焦った。
走ったが間に合わない。
恐怖によって現実に引き戻された
ああ、夢だったのか。
良かったのか悪かったのか、
夢ならもう少し見ていたかった。
体を起こしてコーヒーを入れる
変わらない日々に飽きて動きが鈍い
それでいて刺激を求める自分
矛盾している
欲望と怠惰の争いは常に怠惰が白旗を上げる
そうやって今日もまた
他人の幸せを見ることしかできない
羨ましい、欲しい、勝てない、呆れる
隣の芝生は青い
今日はいっそう青くみえた。


#16青い青い

4/27/2025, 8:58:10 AM

貴方は地獄に行くとおっしゃいました。
宿世からの契りを果たさせばとおっしゃいました。
なぜ私を連れて行かないのです。
後れるのは辛いものです。
どうか一日だけ下界にいらっしゃって。
そして一緒に身罷るのです。
貴方のいない天国になんぞ行きたくありませぬ。
ならば貴方のいる地獄で成仏いたします。
心安き場所は天国ではございませぬ。
貴方の胸で焼かれたい。
何を差し上げたら貴方に会えますのでしょう。
貴方に会えるのなら、
足一本など容易いことでございます。
今日も叶わず終わります。
ここに訪れたら夢かうつつか教えてくださいませ。
叶いそうにない本望を抱いてあと少し生きていきます。

今宵も貴方を想います。


#15どんなに離れても

4/24/2025, 3:49:27 AM

高く舞い上がる鳥をみると、
空を飛べたらと思う。
優雅に泳ぐ海の生き物をみると、
水中でも息ができたらと思う。
暗雲から雨が降ると、
水と一緒に流れたいと思う。
ないものねだりに似た実現不可能なこの思考は
毎日、毎日、繰り返されている。
空を自由に操れる羽もない
広大な海に家を持つこともできない
地に泉を生むことさえできない
人間には何も与えられなかったのか
そんなことはないらしい。
何もできない代わりに伝承を語り文明を生んだ
何もできなかった先人たちが
命を懸けて興味を後世に継いだ
何にもなれない代わりに学ぶことを許された
人間にはどこまでも想像する知恵が与えられた。
知恵こそ羽のように、尾鰭のように、雲のように、
自らを自分の世界へ導いてくれる

さあ、今日はどこへいこうか


#14どこへいこう

4/21/2025, 3:38:32 AM

午後9時23分
住んでいる地域が停電した
スマホのライトで照らして安否を確認
10分、15分、
長引いているみたいでなかなか回復しない
――外へ出よう
不意に駆け巡った思考
感情に支配されたように
気付けば靴を履いて玄関に手をかけていた
同居人に声をかけられた気がしたが足は止まらなかった

満天の星で埋まる天井
こんなにも鮮明に星を眺めたことは初めてだった
胸が高鳴り夢中で上を向いて目を輝かす
まるで幼い頃に戻ったよう
電気のない時代にタイムスリップしたかのよう
この星をみて人は航海をしていたのだろうか
この星をみて時間を測っていたのだろうか
以前は真っ暗な世界を照らした小さな星明かり
溢れ出す感動に生きていて良かったとまで思う
まだ夜は空気が冷たい季節
まだ凍えるのに
その寒さがなぜか心地良い


#13星明かり

4/14/2025, 2:31:09 AM

気に入った花びらを1枚だけ
葉っぱも1枚
綺麗な植物からひとひらずつ。
押し花にして栞にするの


#12ひとひら

Next