明太子

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神様は時々残酷である。
向日葵の咲く季節に人を摘む。

その人は人より少し乱暴で、忘れっぽくて、
人見知りなくせに慣れれば気さくで、
何よりも本が好きで誰よりも世界を愛していた
そんな人が突然帰ってこなくなってしまった
難病だった。と
悲哀、混沌、動揺、拒絶
突然の出来事で血管がはち切れそう
難病なんて聞いていない
いなくなってから考えが巡る
あの時の言葉もあの時泣いていたのも
全部この世から、この世からいなくなるから、
徐々に生きた心地が消えてゆく
もっと何か思い出を、、

「隠しててごめんね。

私が話した世界旅行の夢、代わりに行ってきて。

ほんとはもう少し一緒に居たかったんだけど、

ちょっと無理みたい」

あぁ、だめだ読まなきゃ良かった
流れる涙にインクが滲み、
声が届かない虚しさで息が詰まる
これから一人でどう過ごせと言うんだ
手紙なんかより君が欲しい

そんなことが3年前
向日葵をみるとよみがえる
神様は時々残酷である。


#17手紙を開くと

5/5/2025, 3:50:54 PM