明太子

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5/14/2025, 4:19:00 AM

記憶を遡る
昨日置いた鍵がないことに気が付いた
どこにしまったっけ
どの鞄を使ったっけ
忘れた、
幸い外では使わないものだから
きっと家の中にあるだろう
鍵が見つかるまで合鍵使います。
しょうがないこんな日もある
母はこんな日しかないよと言う
鍵の乗った船は未だ記憶の海を漂う


記憶の海

5/10/2025, 12:46:23 PM

人間が手を加えていない世界
未知不気味恐怖廃墟
つまらないもので存在を印象づける
そのくせ都会に疲れたからと逃げてくる
ある人は縄を、ある人はテントを持って、
都合の良い生き物である。
──景色が圧倒的だった
──心霊現象起きるらしいよ
拡散されれば人が集る
ここもまた汚されるのか
死神がポーンとピアノを弾く
景色が好きな老人が、
廃墟に住む綺麗な恋人が、
熊に乗った子どもが、
ピアノの周りへとやってくる
静かな森が、戻りますように。

密かな望みが届くことを願って。


静かな森へ

5/5/2025, 3:50:54 PM

神様は時々残酷である。
向日葵の咲く季節に人を摘む。

その人は人より少し乱暴で、忘れっぽくて、
人見知りなくせに慣れれば気さくで、
何よりも本が好きで誰よりも世界を愛していた
そんな人が突然帰ってこなくなってしまった
難病だった。と
悲哀、混沌、動揺、拒絶
突然の出来事で血管がはち切れそう
難病なんて聞いていない
いなくなってから考えが巡る
あの時の言葉もあの時泣いていたのも
全部この世から、この世からいなくなるから、
徐々に生きた心地が消えてゆく
もっと何か思い出を、、

「隠しててごめんね――」

あぁ、だめだ読まなきゃ良かった
流れる涙にインクが滲み、
声が届かない虚しさで息が詰まる
これから一人でどう過ごせと言うんだ
手紙なんかより君が欲しい

そんなことが3年前
向日葵をみるとよみがえる
神様は時々残酷である。


手紙を開くと

5/3/2025, 4:18:12 PM

路地裏を進んだらそこは花畑だった
幼い頃の世界が目の前に広がる
遠くまで花に埋め尽くされまるで天国であった
呑気に感動していると不自然に消える出口を見た
焦った。
走ったが間に合わない。
恐怖によって現実に引き戻された
ああ、夢だったのか。
良かったのか悪かったのか、
夢ならもう少し見ていたかった。
体を起こしてコーヒーを入れる
変わらない日々に飽きて動きが鈍い
それでいて刺激を求める自分
矛盾している
欲望と怠惰の争いは常に怠惰が白旗を上げる
そうやって今日もまた
他人の幸せを見ることしかできない
羨ましい、欲しい、勝てない、呆れる
隣の芝生は青い
今日はいっそう青くみえた。


青い青い

4/27/2025, 8:58:10 AM

貴方は地獄に行くとおっしゃいました。
宿世からの契りを果たさせばとおっしゃいました。
なぜ私を連れて行かないのです。
後れるのは辛いものです。
どうか一日だけ下界にいらっしゃって。
そして一緒に身罷るのです。
貴方のいない天国になんぞ行きたくありませぬ。
ならば貴方のいる地獄で成仏いたします。
心安き場所は天国ではございませぬ。
貴方の胸で焼かれたい。
何を差し上げたら貴方に会えますのでしょう。
貴方に会えるのなら、
足一本など容易いことでございます。
今日も叶わず終わります。
ここに訪れたら夢かうつつか教えてくださいませ。
叶いそうにない本望を抱いてあと少し生きていきます。

今宵も貴方を想います。


どんなに離れても

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