10日目【特別な夜】
あの夜から、流れが変わってしまった。
もう貴方と和気藹々と一緒に仕事をしていた頃には戻れない。
貴方にとって、私は目の上のたんこぶであり、目の前から消えて欲しい人になってしまった。
私と貴方の仕事に対するスタンスの違い、私の組織内の立場から、どんどんズレていき、私は追い詰められて、貴方の元を去ることになった。
あの夜は何が起こったのか、今もわからない。
だけど、貴方にとっても、私にとっても、特別な夜だったのだ。
9日目【海の底】
「恐怖」への捉われは、深い海の底に私を沈めていった。
果てしなく深い深い。光は…見えない。
どうにか浮上しようと、「恐怖」を振り切ってみるけど、すくに沈んでしまう。
何度も試みては沈み…
ついに私は、もがくのを止めて、じっと海の底に身を委ねてみた。
すると、光は見えないけど、苦しまずに生きている者達がいることに気づいた。
彼らはそれなりに、何かと向き合いながら、精一杯生きていた。
私も「恐怖」と向き合いながら、この暗い海の底で生きていこうと決意した。
彼らのように、そのうち苦しまずに生きられるようになるのを期待しながら。
8日目【君に会いたくて】
君に会いたくて堪らなかったのは、去年の夏までだった。
私に女としての可愛らしさを取り戻してくれた人。感謝の気持ちでいっぱいだった。
夏のうだるような暑さと、照りつけるギラギラした太陽は、君との思い出を輝かしいものにしてくれた。
すっかり寒さが厳しくなった頃、私の君への気持ちは恨みつらみとなってしまった。
君と出会わなければ、私は予定通りの人生を歩めたのに、出会ってしまったばかりに、狂ってしまった。
その後私は、散々恨みつらみを吐き出した後、君への想いを昇華させた。
君に会いたくて堪らなかった私は、君のことをほとんど思い出すことなく、毎日過ごしている。
7日目【閉ざされた日記】
2023年は、ほぼ毎日、日記を書いた。
コロナやインフルエンザなど病気で書けない時は、少なくとも2日後までには、その時のことを書くと決めて、1年間やり通した。
正月休みに、1年間の日記を読み直した。
よくもまあ、こんなにネガティブな感情とマイナス志向なことばかり書けるものだと、自分自身で呆れてしまった。
その日の記録や、小さな目標なんかほとんど書いていない。後悔と自責の念と、恨みやら苦しいやら、嫌だ嫌だばかり書いていた。
最近、目標達成やポジティブに人生を送る為の、夢や希望に溢れた未来を作るスケジュール帳(日記帳)が並んでいる。
実は私の書いていた日記帳もその類いだった。
なのに。
私の去年は、夢も希望もない、未来が閉ざされた日記。真逆のものを作り出してしまった。
6日目【木枯らし】
もともと、九州は秋が短くて、夏から冬になるのが早い。ここ数年は特に早くて、秋が2週間ぐらいで、すぐ冬になる。
だから、猛暑だと思ったら、いつの間にか木枯らしが吹いている。
いつもの帰り道に思い出す、あの恋の思い出。
夏にはキラキラしてた思い出も、冬になると切ない思い出に感じる。同じ思い出なのに。
楽しかったな、眩しかったな、って区切りをつけた感情が、どうしてるかな、会いたいなって未練に変わる。
私自身は何も変わってないのに。
木枯らしはきっと、昇華しようとした過去を、吹き戻しているのかもしれない。