「拝啓私へ」
そんな始まりをした手紙をアルバムから見つけた。
アルバムは10年前のものだから、恐らく10年前の自分が書いた未来の自分宛の手紙なんだろうか。
手紙を読もうと開けると、中には「彼氏はいますか?」とか「将来ケーキ屋さんになっていますか?」とか書いている。本当にごく普通の未来宛の手紙だ。けどこんなくだらない割には3枚という結構書いている。流し目で見て行き、3枚目に差し掛かった。
「もう虐められていませんか」「夢は諦めていませんか」「無理していませんか」
3枚目には悲痛な叫びが書いてあった。目を逸らしたくなるぐらい哀れな内容ばかりで。そして最後の言葉に書かれた言葉に目を通した。
「無理して生きなくてもいいから、ゆっくり休んで幸せになってね」
あぁ、どうしよう。最後の本を積み上げる時にちらっと見ただけなのに決意が揺らぐ。本が積まれてその上にロープがあるという光景で私は泣き続けた。
「なんでこんなことになったんだよ...。」
1人の男の子が海辺で嘆いていた。
そこにはもう1人の男の子の遺体が横たわっていた。
2人は仲睦まじい子達だった。同じ病院で生まれ、同じ学校に通い、同じクラスで学び、同じ部活に入り、同じ趣味にハマり、皆は一同に「生き別れの双子」、「奇跡の幼なじみ」と呼んではやし立てた。
しかし、それは突然終わった。もう1人の男の子が少しずつ1人の男の子と差別化を図ったからだ。段々と2人とも話さなくなりそのまま成長していった。
そして昨日、電話が来た。「あいたい、」そう言って電話を切った。今思えば場所すら言わないのはどうかと思うが、昔のよしみで何となくわかった。
しかし出向くと変わり果てた姿。そっくりだった頃や、離れていった頃とは一段と変わった姿になってしまった。唯一手首に巻かれた一緒に願ったミサンガだけは残されて。
「なんでだよ...、まぁ、お前らしいけどさぁ...。
俺も覚悟決めるか。」
そう言って1人の男の子はもう1人の男の子を抱え眠るように息を止めた。
『なにがあっても俺たちは最後まで一緒にいような。』
その現場に駆けつけた彼らを知る人々はこう唱えた。
「奇跡よ、彼らを起こしてくれ。」
晴天の空の元で深く淀んだ道を歩く。
少しばかり不可思議な情景に足が弾んでしまって、
空には7色ばかりの線がかかっている。
いつもは無い7色の線、
いつもは無い晴天に淀んだ水溜り、
そんな空間が焦がれるほど好きだった。
自分の知らない間に沢山の時間が流れて
自分の知らない間に沢山の出来事が行われて
そのつらさはかけがえなくて
目が覚めてからではもう遅い
最後を君と迎えたくて
無理をして延命治療を施していたけど
もう疲れたかな
最後の心音が止む瞬間
君の泣きながらの愛してるを聞けて
少しまだ少しでいいからと後悔をしてしまった
狭い病室で私は掴めない君を抱きしめた