'25年4月18日 物語の始まり
預かっていた鍵を鍵穴へ差して右へ回す。
カチャリと音がすると同時に、古びた木製のドアはドアノブを回さなくてもひとりでに開いた。
「こんにちは、お邪魔します」
誰も居ないのはわかっていたけれど声を掛けながら玄関を上がる。
電気の消えたリビングへ入ると奥の和室に明かりが灯っていた。
消し忘れかな。
そう思い和室へ入ると目の前の箪笥の上には懐かしい写真。
出会った頃よりも前の、少しふっくらした柔らかい笑顔が私を見つめる。
そうだ。
食器棚から一番綺麗なコーヒーカップを取り出し、持っていたペットボトルの緑茶を注いで写真の前に置く。
お久しぶりですね。
手を合わせ心の中で話しかける。
あれからもう5年も経つんですね。
懐かしい日々と優しい笑顔を思い出す。
* * * * * * * * * * * * *
人生で一番の恩人との物語の始まり。
続きはまた次の機会に。
'25年4月17日 静かな情熱
今まで私は、本は「読むもの」だと思ってたの。
それが拙いながらも自分で文章を書くようになって、みんなはどんな風に書いた文を発表してるんだろうか、調べるようになったのね。
そうして初めて「ZINE」というものを知ったんだよね。
いつか本物を手に取ってみたいと思っていたら、少し離れた街の小さなお店でZINEを展示販売するイベントがあることを見つけたの。
たまたま時間が空いた平日に行ってみたら、お客さんは誰もいなくて私一人。
こんにちは、と控えめに声を掛けながらドアを開けると、色とりどりの小さな本のミニチュア達。
お店の方が出てきてショップカードをくれた後、すぐに奥へ戻って行ったから、貸し切り状態。
平日に来て良かったぁ。
お店の方も私がゆっくり見れるようにしてくれたんだろうな。
私は本当に全てを一冊ずつ手に取りパラパラ捲ったりじっと見入ったり。
自分の体験談を書いたもの、歴史的建造物を精密に模写したもの、海外の国を写真とイラストで紹介したもの、等々。
どれも拘りの詰まったものばかり。
作者の静かな情熱が伝わってくるようだった。
お店に来る前から直感で選ぼうと思ってたんだけど、まさに表紙が気に入り、中を見てすぐに欲しいと思ったものが一冊あったの。
一応他のものも全部見たけどやっぱりそれが気に入ったから購入したよ。
中は漫画のような絵本のような不思議で個性的な絵とお話で、一気に読んでしまうのが勿体なくてじっくり味わって読むことにしよう。
その日見たZINE達は同じものが二つと無くて、気軽で自由で拘りがあってその人にしか書けないもの。
私ももしかしたら作れるかも知れない、という夢を抱かせてくれるものだったの。
本は「読むもの」から「書くもの」へ。
私も静かな情熱の持ち主になれるかも知れない。
'25年4月16日 遠くの声
人が忘れていく順番は最初に「声」を忘れるんだって。
そんなことない、私はちゃんと覚えているよ。
そう思って思い出そうとしても、声ってどうやって再生すればいいんだろう。
なんとなく浮かんでくるのはイメージだけで実際に聞こえる訳じゃないから思い出せてるのかな。
次に忘れるのは「顔」らしい。
顔はまだちゃんと覚えてるよ。
目を閉じて思い出すと浮かんでくる。
そう、こんな顔だった。
そして耳を澄ませば遠くの声が聞こえてきそう。
そうか、顔と一緒に思い出せばいいんだ。
目を閉じて顔を思い出す、そしていつも私に言ってくれた言葉を思い出すと、脳内であなたが私に話しかけてくれている。
遠くの声が近くなってすぐそばにいるような。
でもまたすぐに遠くなる。
嗚呼、やっぱり私はあなたを忘れてしまいそうだよ。
'25年4月15日 春恋
春になって、新しい環境での生活が始まって、慣れない人間関係の中でミスするとすごく落ち込むよね。
そんな時に優しくしてくれる人が現れると恋に落ちてしまうことがあるよね。
自分だけに優しくしてくれたんじゃないかと思ったりして。
でもその人は本当に良い人だから、困ってる人に優しいだけなんだとわかって、ちょっとがっかりしちゃうよね。
ただ優しいだけなのか、好意を持って優しくしてくれるのか。
春の恋は見極めるのが大切ね。
'25年4月14日 未来図
一年の初めに手帳に書くのは未来図。
図というより年表のように書く。
自分がやってみたいことや、欲しいもの、こうなったら嬉しいなと思ったことを書く。
特に決まりはない。
その年のことだけじゃなく来年も再来年もずっと先まで、思い付く限りの年表を書く。
それを年末に見て叶ったことを私の歴史とする。
始めたのはいつだったか。
何年も続けていてわかったこと。
書かないより書いた方が叶いやすい。
毎年同じようなことを書いてるうちに、自分で行動に移すようになっているのかも知れない。
やっぱり自分の未来は自分で切り開くしかないんだろうな。