もしも君が逃げようとしても、俺は絶対捕まえるよ。
だって君を愛しているんだから。
重いって? それがどうしたの?
君を絶対逃がさない。
フフッ。
「待って!」
私はコロコロと転がっていくおにぎりを追いかけていく。
なんで止まらないのよ……
おにぎりの勢いは増すばかりだ。
「痛っ」
私は勢いよく地面に尻餅をついた。
ふぅ、やっと捕まえた。
私は少し、いや結構汚れたおにぎりを手に持ち、辺りを見回す。
「ここは……どこなのよ……」
高層ビルや電車などはなく、あるのは畑や、森などの自然ばかりだ。
私が住んでいた東京とは全く違う。
「大丈夫ですか?」
いきなり声をかけられる。
かなりのイケメンだ。
程よい筋肉、すらっとした鼻、透き通った瞳……
「どこか痛いんですか?」
「大丈夫ですっ!」
私は我に帰り答える。
「おにぎりを追いかけていたら、ここに来てしまって……」
「……何年頃から来られましたか?」
妙な質問をされる。
「2025年から…です」
彼は「やっぱり」といい、私に説明し始めた。
「あなたは過去の時代に来てしまったんです。この場所には次元の狭間があり、頻繁にこういうことが起きてしまうのですよ。……あと、戻ることはできません」
「!!!!!!!」
そ、そんな……
まぁ、そういうこともあるよね。たぶん。
私は無理やりこの状況を受け入れた。
■■■
3年後---
私は、この地域にもすっかり慣れた。
そして、あの時会った彼と結婚をしたのだった。
「あっ、そのチョコめっちゃ美味しそう! 一個ちょうだーい」
舞華ちゃんが今日も私のお菓子を狙ってくる。
ぐぬぬ……最後の一個なのに……
「この飴と交換するからお願い!」
図々しくも私の目の前に手を出し、チョコをもらう準備をしている。
まるで、くれると確信しているかのように。
その飴嫌いなんだよなー。
しかも、サイズ小さすぎないか?
「あー、うん。いいよ」
私は仕方なく交換をした。
少しずつ大切に食べていたのに……
「ありがとー。めっちゃ美味しい〜」
私が食べるはずだったのに。
はっきりと「嫌」と言えない自分にも腹が立つ。
でも、部活が一緒で気まずくなると困るしなぁ。
都合の良い時だけ、話しかけてくるのもやめて欲しい。
チョコを手放す勇気と、舞華ちゃんとの縁を手放す勇気が必要かもしれない。
お題【手放す勇気】
「あなたは私にとって、酸素のような存在です!」
私は放課後の屋上で、霧岡くんに告白をしていた。
霧岡くんは口を開け、ぽかんとした表情をしている。
もうちょっと普通の告白の言い方があったかも……
焦りながらも私は言葉を紡いでいく。
「酸素はいつも身近にあり、なくては生きていけない存在ですよね? 霧岡くん、あなたも一緒です!」
私は一生懸命に言う。
「なので、付き合ってください!」
目をぎゅっと瞑りながら、右手を前に出す。
「ふふふっ、もちろん」
え? 成功したよね?
私は嬉しさのあまり、口元がにやけてしまう。
だが、少し疑問が浮かんできた。
「なんで少し笑ってたんですか?」
「鈴森さんっぽいな、と思って。まあ、そういうところが好きなんだけど」
「そういうことですか……」
ん? 今、好きって聞こえたような……
「好きだよ。ずーっと前から」
私は顔が赤くなってしまう。
まるで赤く熟したリンゴのように。
お題【酸素】
俺は、あなたのためだけに曲を書き、歌い続けるよ。
この世にいない、あなたへ。
俺が愛した、たった一人のあなたへ。
あなたのことだけを、愛し続けるよ。
今までも、これからも、ありがとう。
お題「ラブソング」