私の足はいつか動かなくなって
ただ黄昏ゆく世界で
朽ちていくのでしょう
砂の中に埋もれて
波の音を聞きながら
星が煌めくのを待つだけ
君が歌う優しくて哀しいメロディー
もう一度だけ聞かせてほしい
この宇宙の広さにただ身を任せて
いつかまためぐり逢えたらいいな
きっと明日も僕らの世界は平和に朝を迎える
そんな根拠のない確信に溺れているのかもしれない
もしかすると今この瞬間に火山活動が始まって
火の海に包まれるかもしれない
でも君の寝顔を横目に見ながら
僕はそっと目を閉じた
生まれてここまで色々あったけれど
今この部屋に君がいてくれる
どんな夢を見ているのだろう
悩み事は何だろう
僕は幸せだけど君は
ここに来たことをどう感じるだろう
せめて朝が来るまで
明日朝が来るまで
静かな空間に身を委ね
流されていたいものです
せめて朝が来るまで
明日朝が来るまで
君の寝息を聞きながら
流されていたいものです
静寂に包まれた部屋
わけあって一緒に暮らして
もう何年だろう
怖がりな君は部屋を出ようともせず
それでも窓の外を眺めている
窓の外はくもり空
天気予報は夜には雨
ツバメが去った軒下に
秋が舞い降りていく
僕の方へ寄り添って
頬擦り寄せて
切ないほど澄んだ眼差しに
吸い込まれそうだよ
そうだった君が初めてここに
たどり着いたのは
まだ目も閉じたまま
何も知らない子猫だったね
別れ際に
電車が速度を落とす
その時僕を見上げ
そっと会釈したね
それでも何も言えず
ただ黙って笑ったよ
会えなくなった日
指先まで数センチ
手を伸ばせば届くのに
全ての世界と切り離されて
一瞬二人になれたのに
次の瞬間ブレーキに
急いでつり革をつかんだら
もう君は旅立った
新しい希望を胸に抱き
立ち向かっていく強い背を
見つめていたあの頃に
今は未練も無いけれど
少しずつ緑のなかに
色が混じり始める
赤や黄色や紫色
茶色いキノコが落ち葉の下からのぞいてる
僕はしゃがんで観察する
小さな世界が広がっている
ハネカクシがどこかから舞い降りた
愛する世界はささやかに煌めいている
太陽が傾いて
午後の陰を落とす
陽射しのなかにぬくもりを感じて
少しだけあなたを思い出した
秋はなぜか切なくて
けれど胸に染み込んで
一人佇む小さな眼差し
見とれたようにずっと見ていたい