わたあめ

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11/10/2024, 4:20:08 AM

私は22世紀のアーティストだ。
21世紀の前半までは筆や絵の具などを使っていたと聞いてる。
その後デジタル機器で作品を作るようになった。最初はペンやタブなどを使っていたらしい。自分が描きたいものを『描く』という表現力が不可欠な時代だった。
それが徐々に考えたものをAIに描かせるようになる。『描く』技術は不要になり、何を表現したいか、それがどれ程人々を惹きつけるのかということが重要になった。

作る作品についても変わった。現実と忠実に表現するようなものは芸術品としては認識されなくなった。ちょうど19世紀に写真が広まって肖像画が描かれなくなったように。
誰も見たことのないもの、誰も想像できないようなものに価値を見出されるようになった。

私は今まさに傑作を産み出さんとしている。
22世紀の今では脳波を読み取り、自分の考えたことが直接作品として出力されるようになっている。
どこに何色をおくか、どのようなタッチなのか、私は作品の細部まではっきりとイメージをしなくてはならない。私の作品の持ち味は幾何学的で豊かな色彩に彩られた曼荼羅のようなものだ。目には見えない世界を描きだしたいと考えている。

私が考えたことがそのまま作品になるため、絵を描く時はそれだけに集中しなくてはならない。目の前を猫が通れば猫のイメージが描かれる。やっているゲームの続きが気になれば、ゲームのキャラクターが現れる。お腹が空いたと思ってラーメンのことなんか考えたら、作品にラーメンが描かれる。そんな作品、誰も見たくない。

私は作品に集中できるように、ゲームをクリアし、部屋の物をを取払い、カーテンを締め切った。空腹を満たし完璧な状態にした。
それなのに、こうして余計な考えが次から次へと湧いてくる。

私の脳内で完成した作品は最高傑作だ。
ただ、私に足りないのは集中力だ。

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お題:脳裏

11/8/2024, 8:22:46 PM

床に伏せて外を見ていると寒空に枯葉が舞っている
間も無く閉ざされた冬がやってくる
外を出歩くことすらままならないこの身体
自分の命が永くないことを悟っている

山の中にひっそりと佇むこの家には、旅人や商人が宿を求めて我が家へ顔を出すことがあった
彼らの語る煌びやかな都の様子や珍しい土地や生き物たち、そんな話を聞くのが大好きだった
その後、彼らはどの様な人生を歩んだのだろう
彼らもすでにこの世を去っているのだろうか

チテチテとかわいらしい足音が響く
孫娘の寧音だ
手にもった紅葉や銀杏の葉を、私の枕元に並べる
「とてもきれいね」というと、にかっと小さな歯を見せて笑う

ひとりでこの世にやってきて、ひとりでこの世を去る
孫や子どもが産まれた時、どんなに嬉しかったことか。どんな気持ちで赤子を迎え入れたことか。
私がこの世を旅立った後、先に旅立った家族たちが笑顔で迎えてくれるのではないだろうか


『誰をかも 知る人にせむ 高砂の 
 松も昔の 友ならなくに』

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お題:意味がないこと

「意味があること」「意味がないこと」、それを分けること自体が無意味なのかもしれない

11/7/2024, 7:14:43 PM

あなたは大きい、わたしは小さい
あなたは強い、私は弱い
あなたは社交的、わたしは内向的
あなたは激しい、わたしは穏やか
あなたは黒い、わたしは白い
あなたは外を自由に歩き、わたしは籠から出られない

正反対のあなただから、あなたに憧れる
正反対のあなただから、一緒にはいられない

わたしは小鳥、あなたは猫
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お題:あなたとわたし

11/7/2024, 3:24:06 AM

はるな「おはよー。雨だと髪の毛、めっちゃ広がる〜」
みき「それな。うちなんかくせっ毛だからすごいよ〜」
はるな「え〜、みきの髪型かわいいじゃん」
みき「でしょ〜、雨だから特別に巻いてきたの」
さや「おはー。見て、この傘ヤバくない?」
はるな「かわちい❤︎どしたん?」
さや「昨日買ってもらったの。長靴とお揃い〜」
みき「雨の日コーデ、いいよね」
ゆめの「私のレインコートも見て〜。帽子かぶるとユニコーンになるの」
さや「めちゃかわいいじゃん」
はるな「ねー、今日どうする?」
みき「もちろん雨でも外で遊ぶっしょ」
はるな「それな!雨ならではの遊び」
みき「水たまりジャンプ」
ゆめの「行こう〜」

ひだまり幼稚園のみんなは今日も元気いっぱいです。
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お題:柔らかい雨

11/6/2024, 2:33:50 AM

 この部屋はとても居心地がいい。静かで暖かく、辺りは暗闇に包まれている。ここにいれば安全だ。僕はここから出て行きたくない。もう少し眠っていよう。

 なんだか最近部屋が狭くなってきた。腕や脚を伸ばすとすぐに壁にぶつかってしまう。でもこの部屋はやっぱり居心地が良い。小さく丸まって眠っていよう。

 ちょっと部屋の外が騒がしい。何が動いたり壊れたりする音がする。ちょっと静かにしてくれよ。僕はまだまだ眠っていたいんだ。
 あっ!誰が僕の部屋にぶつかってきたみたいだ。やめてくれ!僕も部屋の壁を叩き返す。部屋の中に一筋の光が入ってかた。ああ、僕の部屋の壁が壊れてしまった。部屋の中に光が溢れてくる。あれ?僕の部屋ってこんなに小さかった?なんだか汚れてる気持ちする。
 もぉ、よしこうなったら僕も外に出て見よう。僕の仲間がいっぱいいるね。
「やあ、はじめまして。みんなどこに行くの?」
「着いておいでよ。みんなで外に出るよ」
 んしょ、んしょ。わぁ、きれい。なんて広いの。頭の上には満天の星空。
「あっちだよ。海の方へ行くんだよ」

 僕らは広い世界に放たれた。この世界は静かでも暖かくも安全でもない。でも、この世界は美しい。

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お題:一筋の光

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