わたあめ

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私は22世紀のアーティストだ。
21世紀の前半までは筆や絵の具などを使っていたと聞いてる。
その後デジタル機器で作品を作るようになった。最初はペンやタブなどを使っていたらしい。自分が描きたいものを『描く』という表現力が不可欠な時代だった。
それが徐々に考えたものをAIに描かせるようになる。『描く』技術は不要になり、何を表現したいか、それがどれ程人々を惹きつけるのかということが重要になった。

作る作品についても変わった。現実と忠実に表現するようなものは芸術品としては認識されなくなった。ちょうど19世紀に写真が広まって肖像画が描かれなくなったように。
誰も見たことのないもの、誰も想像できないようなものに価値を見出されるようになった。

私は今まさに傑作を産み出さんとしている。
22世紀の今では脳波を読み取り、自分の考えたことが直接作品として出力されるようになっている。
どこに何色をおくか、どのようなタッチなのか、私は作品の細部まではっきりとイメージをしなくてはならない。私の作品の持ち味は幾何学的で豊かな色彩に彩られた曼荼羅のようなものだ。目には見えない世界を描きだしたいと考えている。

私が考えたことがそのまま作品になるため、絵を描く時はそれだけに集中しなくてはならない。目の前を猫が通れば猫のイメージが描かれる。やっているゲームの続きが気になれば、ゲームのキャラクターが現れる。お腹が空いたと思ってラーメンのことなんか考えたら、作品にラーメンが描かれる。そんな作品、誰も見たくない。

私は作品に集中できるように、ゲームをクリアし、部屋の物をを取払い、カーテンを締め切った。空腹を満たし完璧な状態にした。
それなのに、こうして余計な考えが次から次へと湧いてくる。

私の脳内で完成した作品は最高傑作だ。
ただ、私に足りないのは集中力だ。

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お題:脳裏

11/10/2024, 4:20:08 AM