あなたは大きい、わたしは小さい
あなたは強い、私は弱い
あなたは社交的、わたしは内向的
あなたは激しい、わたしは穏やか
あなたは黒い、わたしは白い
あなたは外を自由に歩き、わたしは籠から出られない
正反対のあなただから、あなたに憧れる
正反対のあなただから、一緒にはいられない
わたしは小鳥、あなたは猫
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お題:あなたとわたし
はるな「おはよー。雨だと髪の毛、めっちゃ広がる〜」
みき「それな。うちなんかくせっ毛だからすごいよ〜」
はるな「え〜、みきの髪型かわいいじゃん」
みき「でしょ〜、雨だから特別に巻いてきたの」
さや「おはー。見て、この傘ヤバくない?」
はるな「かわちい❤︎どしたん?」
さや「昨日買ってもらったの。長靴とお揃い〜」
みき「雨の日コーデ、いいよね」
ゆめの「私のレインコートも見て〜。帽子かぶるとユニコーンになるの」
さや「めちゃかわいいじゃん」
はるな「ねー、今日どうする?」
みき「もちろん雨でも外で遊ぶっしょ」
はるな「それな!雨ならではの遊び」
みき「水たまりジャンプ」
ゆめの「行こう〜」
ひだまり幼稚園のみんなは今日も元気いっぱいです。
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お題:柔らかい雨
この部屋はとても居心地がいい。静かで暖かく、辺りは暗闇に包まれている。ここにいれば安全だ。僕はここから出て行きたくない。もう少し眠っていよう。
なんだか最近部屋が狭くなってきた。腕や脚を伸ばすとすぐに壁にぶつかってしまう。でもこの部屋はやっぱり居心地が良い。小さく丸まって眠っていよう。
ちょっと部屋の外が騒がしい。何が動いたり壊れたりする音がする。ちょっと静かにしてくれよ。僕はまだまだ眠っていたいんだ。
あっ!誰が僕の部屋にぶつかってきたみたいだ。やめてくれ!僕も部屋の壁を叩き返す。部屋の中に一筋の光が入ってかた。ああ、僕の部屋の壁が壊れてしまった。部屋の中に光が溢れてくる。あれ?僕の部屋ってこんなに小さかった?なんだか汚れてる気持ちする。
もぉ、よしこうなったら僕も外に出て見よう。僕の仲間がいっぱいいるね。
「やあ、はじめまして。みんなどこに行くの?」
「着いておいでよ。みんなで外に出るよ」
んしょ、んしょ。わぁ、きれい。なんて広いの。頭の上には満天の星空。
「あっちだよ。海の方へ行くんだよ」
僕らは広い世界に放たれた。この世界は静かでも暖かくも安全でもない。でも、この世界は美しい。
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お題:一筋の光
紅葉の時期が終わり、木々の葉が落ちていく。色とりどりの山々は色彩をなくしていく。
山の動物たちの冬支度も落ち着き、山は静けさに包まれる。
陽の落ちた山には『フィー』という鹿の声が山に響き渡る。
布団の中でその声を聞きながら、寧音は眠れずにいた。加速度的に季節が進むこの頃、自分だけが取り残されて行きそうで寂しくてたまらなくなる。
3歳年上の姉が隣で寝息をたてている。寧音はそっと姉の布団に潜り込む。眠っているはずの姉がそっと布団の端にずれて寧音を迎え入れてくれた。寧音は姉の呼吸に合わせて息をしてみる。姉の眠気がゆっくりと自分の中に入ってくるのを寧音は感じていた。
『奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声聞く時ぞ 秋は悲しき』
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お題:哀愁を誘う
ずっと鹿の鳴き声を知りませんでした。
数年前の秋、山の麓でキャンプしていました。夜寝ていると野生の動物の大きな鳴き声がしていました。翌日聞いたところ、鹿の鳴き声だとのこと。私にとって鹿の鳴き声は哀愁を誘うものではなかったのですが、昔の人は冬が近づく寂しさの様なものを感じるのかなと思いました。
百人一首:2024/10/23
子どもの頃、家には鏡台があった。母の花嫁道具であるその鏡台は、扉開きの三面鏡だった。私はその鏡台を覗き込んで遊ぶのが好きだった。左右の鏡の角度を変えるとどこまでも自分の顔が映る。普段は目にしない自分の横顔や頭の後ろをみることができる。
ある日、ひとりだけ私と違う動きをしている子を見つけた。
鏡を覗く度に違う場所に移動している。どこにいるのかは毎回違う。それを見つけるのが楽しかった。
私はその鏡の中の自分に「かがみちゃん」という名前をつけた。
かがみちゃんを見つけて何度目かのある時、かがみちゃんと目が合った気がした。その次の時、かがみちゃんが私に話しかけてきた。
「あなたは鏡の前にいない時、どこにいるの?」
「幼稚園に行ったり、公園にいったりするのよ」と私は答えた。
かがみちゃんはずっと鏡の中の世界にいて、そこからいろんな人を見ている。だけど、それ以外の事はわからないし、鏡の前から人がいなくなるととても寂しくなるのだと言っていた。
それから私は毎日鏡を覗きかがみちゃんにその日の出来事を話した。幼稚園で遊んだ事。お兄ちゃんとケンカした事。私は悪くないのに怒られた事。
かがみちゃんはいつも表情豊かに笑ったり、驚いたり、時には一緒に怒ったりしてくれた。
友達の少なかった私にとって、かがみちゃんは一番の親友だった。
小学校に入ると外に友達もでき、かがみちゃんと話すことが少なくなっていった。たまに暇になるとかがみちゃんと話にいった。かがみちゃんは他に映る自分より少し幼い気がしていた。それでも私の話す友達の話や学校の話を楽しそうに聞いてくれた。
5年生になった頃、私は学校で除け者にされた。いじめというほどではないが、仲良しグループのみんなから遊びに誘われなくなったり、無視をされたりした。理由もわからず、悲しさと悔しさでいっぱいだった。かがみちゃんの前で泣いて、全て吐き出した。かがみちゃんに全て話すと気持ちが少し軽くなり、なんとか毎日学校に通えていた。学校での除け者扱いも時間とともになくなり、またかがみちゃんと話す機会が減っていった。
中学に上がるのを機に我が家は引っ越しをした。母は鏡台を処分することにした。私はかがみちゃんの事が心配になったが、母に話すことはできなかった。
鏡台を覗いてもかがみちゃんが現れる事が少なくなっていた。引っ越しの前日、久しぶりに現れたかがみちゃんに鏡台が処分される事を話した。
「大丈夫だよ、鏡の中の世界はつながっていて、どこの鏡にでも行けるから」とかがみちゃんは言った。それでもいつでも会えるわけではなくなる。それはわかっていた。私はかがみちゃんの前で泣いた。これまでのお礼をたくさん伝えた。
あれから数十年経った。昨日、美容室で髪を切ってもらった。最後に合わせ鏡で後ろ姿を見せてもらった。何番目かに映った私はとても幼くこちらを向いて笑っていた。私が小さく手を振ると、同じく小さく手を振り返してくれた。
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お題:鏡の中の自分