わたあめ

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 紅葉の時期が終わり、木々の葉が落ちていく。色とりどりの山々は色彩をなくしていく。
 山の動物たちの冬支度も落ち着き、山は静けさに包まれる。
 陽の落ちた山には『フィー』という鹿の声が山に響き渡る。
 布団の中でその声を聞きながら、寧音は眠れずにいた。加速度的に季節が進むこの頃、自分だけが取り残されて行きそうで寂しくてたまらなくなる。
 3歳年上の姉が隣で寝息をたてている。寧音はそっと姉の布団に潜り込む。眠っているはずの姉がそっと布団の端にずれて寧音を迎え入れてくれた。寧音は姉の呼吸に合わせて息をしてみる。姉の眠気がゆっくりと自分の中に入ってくるのを寧音は感じていた。

『奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 
 声聞く時ぞ 秋は悲しき』

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お題:哀愁を誘う

ずっと鹿の鳴き声を知りませんでした。
数年前の秋、山の麓でキャンプしていました。夜寝ていると野生の動物の大きな鳴き声がしていました。翌日聞いたところ、鹿の鳴き声だとのこと。私にとって鹿の鳴き声は哀愁を誘うものではなかったのですが、昔の人は冬が近づく寂しさの様なものを感じるのかなと思いました。

百人一首:2024/10/23

11/5/2024, 7:41:24 AM