学校では一人の方が楽。そう気づいたのは高校生になってから。
でもその楽も楽じゃなくなる。
「藍佑(あいすけ)!お昼一緒に食べよう!」
そう言って声をかけてきたのは同じクラスの委員長山吹(やまぶき)。ちょっと...だけ、苦手。
「好きにしたら?」
「では隣失礼するね」
そう言ってコンクリートで出来た段差に腰を下ろす。包みのみで持ってきてるのか、それは落とすよ。
委員長って言っても堅苦しいわけじゃないからクラスに馴染んでて仲の良さそうな人も多い。なら何故、僕みたいなのと一緒にいるのか。
たぶんコイツは僕を可哀想とか思って一緒に居るんだと思う。
粗方クラスにも馴染めず、ひとりぼっちが惨めに見えたのだろう。余計なお世話、放っておけばいいのに。
僕だって放置してるわけじゃない。何度か突き放そうとしたことはある。でも駄目だった。
「藍佑、これを食べてみてほしいんだ!兄さんと一緒に作ったんだけど上手くできた気がするからさ!」
善意100%。彼の目の真っ直ぐな輝きからそう読み取れる。
「...ありがとう」
だから邪険にも出来ない。僕は善意をはね除ける程も強くもないから。
でも彼の眼差しは嫌いじゃない。それは彼の輝きが太陽ではなく星に近いからだと思う。別に太陽が悪いわけじゃない。太陽だと眩しすぎて、僕は光を直視してしまうから目が潰れてしまう。だから星の輝きが心地よい。
だからと言って君と居たいわけじゃない。もう人と関わるのは懲り懲りなんだ。
流れ星みたいにこっちに見向きもせずにどこか遠くに光っていってくれないかな、と僕はいつも思ってる。
お題 「好きになれない、嫌いになれない」
出演 藍佑 山吹
「人生で大好きな人と出会う確率って30億分の一らしいよ」
ソファに座って恋愛ドラマを見ていると彼がそう言う。
「ほぇー、意外と低いんだね。いっぱい居そうなのに」
「ね。俺らもその確率で出会ったんだなぁ」
「...ん?なにそれ遠回しに私の事めっちゃ大好きって言ってる?」
パッと彼の方を見るとそこまで考えていなかったらしく、小さい口をぽか、と開けていた。
「なにその顔!可愛いね~」
「いや、えっと、俺別にそういうつもりじゃなくて...!」
「んー?分かってるよぉ?無意識なんでしょ?それくらい私が大好きって事なんだねぇ」
「違...!...くはない、けど...」
「んー、可愛い~」
うにうに、と私が赤くなったその頬を触る。
愛おしいってこういうことを言うんだなって凄く納得してしまった。
お題 「巡り逢い」
出演 葉瀬 玲人
午後、昼飯を食べて話が長くて寝そうな歴史の授業を受ける。目を瞑りそうになると隣のやつが叩き起こしてくれる。起きてもどうせ暇なので。
「真人(まひと)のノートに落書きしちゃお~...」
「...おい、何すんだ......」
俺は小声で真人に話しかけ、ノートに勝手に絵を描いた。猫の顔。
「じゃじゃーん...!」
「......なにこれ、ハリネズミ...?」
「猫🐱ダヨ、真人クン...!」
ふふん、とどや顔をすると真人は眉をひそめた。
「...お前の絵ってさ...味わい深いよな」
「デショ、陽太(ひなた)クンてば天才なんだからァ~...」
「...そうだな、天才天才」
「あんもう、そんなに連呼しないで...(*σ´ェ`)σ照れちゃうワ☺」
「そうかそうか...」
「なら天才👨🎓のアタクシがもっと描いて🖼️あげるワネ;-)」
と真人のノートに更に落書きを増やす。おい止めろ...!と声が聞こえたが気にしない。
もう二人共、途中から授業を聞いていなかった。
お題 「ささやき」
出演 陽太 真人
夜。ふと目が覚めるとカーテンが少し開いていて、星の明かりが部屋に差し込んでいた。
少しくらいならいいか、とカーテンを閉めようとは思わなかった。
「.........」
目の前で眠る彼女の頬に軽く触れ、額にキスをした。
「ん......」
睡眠の深い彼女なら起きないだろうと高を括っていた、が。
彼女が薄目を開けた。
(...起こしちゃったか)
「............」
お互い無言でいると彼女は時計をチラリと見て、目をつぶり頭をぐりぐりと押し付けてきた。まだ起きる時間じゃない、とでも思ったのだろう。そのまま寝てしまった。
軽く頭をひと撫でして、差し込む星の光に目を細めながら眠りについた。
お題 「星明かり」
出演 玲人 葉瀬
紫色の髪の男が目を開けるとそこは、何もないただ白い床と空間が広がっていた。
なんだここは?
男が辺りを見渡すと、一人の少年が立っていた。
「初めましてー何年ぶりでしょうかー」
その少年は軽くお辞儀をして近づいてきた。声の伸び方からして、面倒3割と好奇心5割と渋々2割といったところだろう。
「君は俺が小学生の時以来だから、何十年と時が経ってるのか。時間の流れって残酷だよね」
やれやれ、と肩をすくませる。
「玲人(れいと)には間違えちゃったけど、君が一番最初の創作者なんだよね。あとから気づいたよ。なんなら氷華(ひょうか)の前に君を含めて、既に四人いただなんてね...ミスだよミス」
申し訳ないねぇ、と謝ってくるがなんだかこの話は本題では無い気がする。
「...勘の良い君なら気づいてるよね。だって仕方ないだろ!?君の初期設定は紫の髪のクールな男としかなかったんだから!」
くわっ、と少年は食って掛かる。
「それに名前も洋風だったんだ。俺の話には和名が必須だからね。おっと、例外もいるがそれはそういう設定だからだよ。でも君は外国人じゃないでしょ?」
男はどこかで聞いたことのある喋り方だと気づいた。
もしかして...『 』?
「お、マジか。気づいたんだ...凄いね!流石クールな男!頭脳派って設定も追加しておこう」
『 』はここで何を?
「番人かつ代理かつ『 』をしてる。まぁ要はあの人からの通信手段ってとこだよ。今はどうでもいいけど君の和名まだ決まってないから、通り抜けは不可なんだ。すまん。今頑張って考えてるから待ってて」
和名ってどんな?
「んー、君の名前を当て字にすると月花になるからそれ関連でいくつもり。決まってないから変わるかもだけど」
そこまで言うと少年は近づいて男の肩を叩く。
「まぁ君の友達もまだだからその時は一緒に連れてくよ。なんなら馴染みのある葉瀬(ようせ)の近くに転生させてあげよう!」
なにやら一方的に話が進んでいくが、止める気力はなかった。
「今日はこのくらいにしておこうか。じゃあまたね。会える日を楽しみにしているよ、ルカ」
少年がそう言って手を振ると男の視界は段々と暗くなっていって、遂には意識そのものが閉じ込められたようだった。
お題 「物語の始まり」