あの人へ渡す花束はなるべく大きな花束にして。私の赤くなった顔が見えなくなるくらい。
そう、それがいいの。
花に全部の想いを乗せるから。
【花束】
ネガティブな言葉を書けば指を指されるから、周りの目を気にして私は私の言葉を隠す。
自分の気持ちを素直に書きたいのに、書いて、消して、ぐしゃぐしゃになった言葉たち。今日も模範生としてこの世界に操られながら書いている。私の言葉は綺麗で明るいテンプレートをなぞっている。
でもね、ふと自分の言葉たちを見て感じるの。あれ?私の本当に書きたかったことは何だっけ?
【どこにも書けないこと】
夕暮れ時に見るブランコは私を寂しい気持ちにさせる。
だって、遊んでいた私たちは明るいお家へ帰るのに、あなたはここで1人暗い夜を過ごすのでしょう?
でもね、明日もあなたがいるならね、私はあなたに会いにいくからね。私はお家の楽しいお話をするから、あなたは夜に見た流星群の話をして。
さっきまでブランコに乗っていた私の余韻が残っていて、少し揺れている。そんなあなたに手を振り返して、また明日。
【ブランコ】
言葉が好きだ。素敵な情景を伝えることができるから。
けれどその輝きに見合う言葉が見つからなくてもどかしい。もっとふさわしい呼び名があったような、そもそも言葉では伝えきれないような。言葉を投げ捨てて今すぐにあなたを連れ出して、その景色を見せに行きたい衝動に駆られる。ほら、こんなにキラキラ輝いている、と。でも、あなたは臆病だから世界を見ることを拒むでしょう。
だから私はあなたに言葉を紡ぐ。今出てくる精一杯の言葉たちでこの世界の話をしよう。
遥か彼方まで続いていく水平線だとか、飛行機からミニチュアのように見える知らない街並みだとか。
言葉を紡いであなたと2人、世界のどこまでも旅に出よう。
【あなたに届けたい】
片想いをしていた先輩と帰る時間が被った。昇降口を出てふと前を向くとその後ろ姿はあった。
先輩が少し前を歩く。私はその後ろ。先輩が後ろを振り返りそうになったら顔を下に向けてしまう。そんなつもりはないのにまるでストーカーみたいだと私は1人苦笑する。
雲の隙間から見える暮れ時の空。ひしゃげたフェンスと若々しい植物たち。いつもの帰り道はこんなに眩しかったのかと感じた。
前に目をやると、変わらずその後ろ姿はあった。少し野暮ったい髪とゆったりとした歩調。そういうところが好きだったと思い返す。思い出すのは先輩の後ろ姿ばかりだった。私は話しかける勇気がないほどに意気地なしだったから。
帰り道が別れて1人空を見上げる。そこにはもう既に月が浮かんでいた。下が欠けた夕方の月だった。
ついさっきまで見ていた後ろ姿を思い出す。もし私が先輩に声をかけることが出来ていたら私は何と言っただろうか。
考えてもどうしようもなくて、また月を見上げた。私は夏目漱石の有名な台詞を誰にも聞かれぬように呟いた。
【I LOVE …】