明日の朝日

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片想いをしていた先輩と帰る時間が被った。昇降口を出てふと前を向くとその後ろ姿はあった。
先輩が少し前を歩く。私はその後ろ。先輩が後ろを振り返りそうになったら顔を下に向けてしまう。そんなつもりはないのにまるでストーカーみたいだと私は1人苦笑する。
雲の隙間から見える暮れ時の空。ひしゃげたフェンスと若々しい植物たち。いつもの帰り道はこんなに眩しかったのかと感じた。
前に目をやると、変わらずその後ろ姿はあった。少し野暮ったい髪とゆったりとした歩調。そういうところが好きだったと思い返す。思い出すのは先輩の後ろ姿ばかりだった。私は話しかける勇気がないほどに意気地なしだったから。
帰り道が別れて1人空を見上げる。そこにはもう既に月が浮かんでいた。下が欠けた夕方の月だった。
ついさっきまで見ていた後ろ姿を思い出す。もし私が先輩に声をかけることが出来ていたら私は何と言っただろうか。
考えてもどうしようもなくて、また月を見上げた。私は夏目漱石の有名な台詞を誰にも聞かれぬように呟いた。

【I LOVE …】

1/30/2026, 10:21:00 AM