NoName

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8/16/2024, 4:25:32 PM

 自分で自分を褒めてやろうではないか。
 そうだ。これは決して間違いではないし、恥じる事でもない。むしろ、誇るべき事であろう。
 己の仕事に直向きに、真摯に向き合った結果だ。
 今日も仕事を頑張るぞ、という勤労精神の発露だ。素晴らしい事ではないか!

 ……休日であった事を忘れていて、ガッチリと施錠されている入り口を前に、心の中でそんな御託を並べ自分を慰めるのだった。


  お題『誇らしさ』

8/15/2024, 3:15:03 PM

 真っ暗で何も見えない。
 今、自分がどこに立っているのかも。そして、どちらが前なのかも。
 波の音がするし、潮の匂いが鼻をつく。
 恐らく、自分の前方か後方(或いは上か下?)に海があるのだろう。
 人というものは、とても不便で頼りない生き物だ。
 目印がないと、自分が何処に居るのかさえ分からないのだから。
 潮騒が聴こえる。潮の香りがする。だからきっと、ここは海岸なのだろう。
 ……果たして、本当にそうだろうか。

 確かめるには、何れかの方向へと踏み出すしかない。
 足を進めるか、ここでずっと立ち尽くすか。
 それを決めてくれる存在はない。
 自分で決めるしかない。
 踏み出した先に、地面が続いている保証もない。

 それでも。
 踏み出してみようか。
 『未知』への第一歩を。


 お題『夜の海』

8/12/2024, 3:15:07 PM

 母が立つ台所から聞こえるは
  世界でいちばんすきな音楽


  お題『君が奏でる音楽』

8/11/2024, 4:27:27 PM

 公園のベンチの上に、麦わら帽子がぽつんと置かれていた。
 誰かの忘れ物だろうか。周囲には自分以外に誰も居ない。
 忘れ物なのだとしたら、交番にでも届けておこうか。ちょうど公園のすぐそこに交番もある事だし。
 そんな風に考え、何気なく帽子を手に取った。
 ベンチに伏せるように置かれていた帽子の中から、ひらり一匹の蝶が飛び去ってしまった。
 ああ。捕らえた蝶を入れていたのか。やってしまった。
 どうしようかと逡巡している間に、小さな虫籠を持った少年がやってくるのが見えた。

 蝶を取り逃してしまった事を謝り、その後、少年と共に代わりに虫籠に入れる虫を探した。
 数十分の後、虫籠にトンボを入れ、少年は満足げな笑顔で手を振って去って行った。

 首から虫籠を下げ、麦わら帽子をかぶって走り去る後ろ姿を見送りながら、たまにはこういう日もあっても良いなと思った。

 そんな、真夏の昼下がり。


  お題『麦わら帽子』

8/7/2024, 4:58:39 PM

 初めから分かっていた。決まっていた、と言っても良いかもしれない。
 これまで幾度も、その言葉に騙され、裏切られてきたのだ。信じた心を踏み躙られてきたのだ。
 それでも。
 今度こそはと、そんな希望を持ってしまった自分の負けなのだ。

 そう。
『こちら側のどこからでも切れます』という言葉に——。


 お題『最初から決まってた』

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