大切な人は今はただ出掛けているだけで
今も尚生きていると、そう考えてしまいます。
祖母はまだ50数の人でした。
孫の私たちにいつも甘く、母に叱られて
それでも笑ってどこかへ連れていってくれる。
面倒見がよく、いつも励まし、私たちを笑顔で迎える。
そんな祖母が大好きでした。
孫の中でも
私が1番叔母に名前を呼ばれ。
私が1番叔母と仲良しで。
私が1番叔母と笑い合った。
そんな記憶しか毛頭ありません。
3年前の丁度今日、母から告げられたあの言葉。
私は忘れたとは言わせません。
『祖母は肺癌になった。後3年、持つかも怪しい。』と。
泣きながら電話ごしに聞いた時は、
私も頭が真っ白になりましたよ。
あの元気な祖母が肺癌だなんて、そんな筈がないと
信じて疑いませんでしたよ。私は。
祖母は我慢強い人でした。
私たちに何も告げないで
逝く予定だったのでしょうか。
それは、今でも分かりません。
私には、この世でたった一つだけ後悔があるのです。
それは高校1年の頃、
好いていた女子と両思いだとダチから聞きまして、
それでも告白へと挑めなかったことであります。
次は、次は、次こそは
と先延ばしにしてしまった告白。
私は無事高校2年となりましたが、
彼女は___
遠い所へと行ってしまいました。
もう過ぎたことだと、そう自分に訴えても
やはり後悔は残りました。
両思いだったのに、何故。
何故私は彼女へ告白しなかったのか。
そうすれば
彼女にあんな思いをさせなかったかもしれません。
妻は告白時の話を楽しそうに、笑いながら
それでねーあれでねーと話しますが。
私としては、あなたから告白され付き合う前に
自ら告白したら良かったと。
後悔、しています。
久しぶりにとてもいい夢を見ました。
私と夢の中で出会った女の子と。
雲一つない空、澄んだ小川、小鳥の囀りがよく聞こえる
そんな場所で楽しくお話をしてる夢。
どこに住んでるの?
恋人は居るの?
好きな人は?
そんな女子トークに花を咲かせていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、夢の中で鐘がゴーンゴーンと鳴った。
鐘の音が鳴ると、その子は私の耳元で何かを言う。
そして小川を超えて何処かに行ってしまう。
もっとお話したかった私は、その子を追いかける。
が、足がもつれ小川の中にドボン!
そこで目が覚めた。
そんな話を私は旦那へ話した。
旦那は静かに頷きながら、泣いている。
夢に出てきた子は戦争で亡くなった私の親友である___らしい。
戦争で親友を亡くした時のお前はすごく、見てて辛そうだったと旦那は言う。
だが、私は覚えていない。
戦争から数十年が経ち、今は20××年。
私は後期高齢者で、認知症。
加えて肺癌を患い、後数ヶ月も持たない体でほとんど寝たきり状態。
『お前の親友からの合図かもしれんな。』
『そうね。』
私は旦那にこの話をした数日後、空へと旅立った。
次に目を開けると、夢の中で見たあの場所がそのまま。
私はあの子と出会ったあの場所に向かう。
やっぱり、あの子はそこに居た。
私を見ると、今まで堪えていたであろう
目から大粒の涙が出ている私の親友___ちゃん。
『お疲れ様。頑張ったね』
そう泣きながら、私を抱きしめる。
『お互い様。戦争で死んで苦しかったでしょ。お疲れ』
『何年も前の話だから忘れたわ』
『そんな事よりも、私を忘れるなんていい度胸ね』
『えぇ。あなたの姿は子供のままだったけど、
私はこんなに老けてしまったわ。そして認知症』
『長生きおっつ〜』
『なんか、腹立つわ』
『ここに居たら若い人も来るから。
現代風の話し方、いいでしょ?』
『私は今まで通りが1番落ち着くよ』
『あっそう?昔っから変わってんね〜』
『はは。おおきに』
私の姿はいつの間にか、親友と同じ子供のまま___
__あなたが好きでした。
いつも私の隣でよく笑って
いつも私と不良との喧嘩で怒り
いつも私と普通の友達として接してくれた
そんなあなたは1年前、
不慮の事故で亡くなりました。
私はとてもじゃないほど泣き叫び、次の日も次の日も
あなたが火葬されると知るまで
冷たいあなたを抱きしめておりました。
これはあなたの手の込んだ冗談で
この後私の手を強く握り
いつもの明るい笑顔を見せてくれると
そう信じて疑いませんでした。
ですがあなたは一度も、私に笑顔を向けるどころか
手を握り返してもくれなかった。
大の大人は大きく泣き崩れ、
あなたはより一層冷たさが増したように思いました。
あれから1年という年月が経ちました。
思えばあの時が、何年も泣かず生きてきた私の中で
唯一泣いた日であったとしみじみ感じています。
1年前のあの日。
私はあなたへ伝えたかった事がありました。
今まで混乱と社会復帰の為、
あなたとはあの日以来会わず、
仕事に打ち込んで参りました。
あなたへ顔を見せるのが、遅くなり
大変申し訳ありません。
ようやく心の整理がつきましたのでお伝えします。
私はあなたの眠っている墓に向けて
長年の思いを吐露するのです。
私は___、、