サヤカアイ

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5/22/2024, 10:33:59 PM

また明日
地震津波で
無くなった

5/21/2024, 10:51:27 AM

透明人間になりたいか?
答えはもちろんNoだ。
透明人間になったら普通の仕事もできないし、なんだったら今あるサーカス業どころか事務の仕事もできない。私はここだと示したい!なんだったら、踊ってもいい。歌を歌ってもいい。目立ちたい!!悪目立ちして変な目で見られようが、石を投げられてもいい。石じゃなくて、槍でも弾でもナイフでもチェーンソーでもいい。それを使ってジャグリングでもしよう。
だいたい透明人間になってもいいことなどない。他人にぶつかられても謝ることなどされないし、他人にぶつからないように躱すのも一苦労。犬に小便はかけられ、子供に水鉄砲や紙飛行機を投げられるわ。好きな人には決して見て貰えず。自動ドアさえ認識しない。透明人間って結構大変なんだぜ。
犯罪行為だってやりたい放題?おたく悪いこと考えるねぇ。透明になったら女湯を覗くなんて妄想する不埒な男がこれまで何人いたか。だが、もし女湯を覗いて満足したあとも透明人間だったら怒られるのは私だ。ふざけるな!透明人間になりたいと言ったのはお前らだろうが。
それとお金を盗むことやものを盗む事は決してやめた方がいい。なぜなら、君が透明人間になっただけで物や金は透明にならない。それにネット好きな奴らが心霊現象だなんだと言って私のする……じゃなかった。透明人間のすることをネットにあげる。ふざけるな!!犯罪でなくてもあげるのだ。こっちは買い物をしたかっただけなのに!もちろん透明人間だからと言って警察に捕まえられないなんて思わないほうがいい。とりあえず、捕獲はされるだろう。なんかヤバい奴が居たと通報されてだ。それからネットに写真があげられて……それで終わりだ。相手が見えないからと「ダサいセーター」だの「ダサいスニーカー」だの言われてだ。ふざけんな!お前らに私のファッションの何がわかる!!
とにかく!!透明人間になったら、もうそれは貴方として認知されないし、貴方のことなどいないように扱うのだ。だから私は透明人間になりたいとは思わないし、なりたくない! だから、決して!決してその薬を飲むな!!飲むな!!飲むなよ!!!飲んだら一生こんな地獄を味合わなければいけないんだから。

「やってしまった」

5/20/2024, 10:53:28 AM

理想のあなた。
あなたは手を伸ばしても届かない。
1教科だけ満点を取っても、彼女は全教科満点をとる。歌で褒められても、彼女は歌いながら楽器も弾けてしまう。料理の腕を褒められたこともあるが、彼女が文化祭で作った料理を何故かお忍びで来ていた3つ星シェフが涙を流すほどだ。
ある日、デッサンの授業を受けながら僕は彼女に言った。
「僕は君にはかなわないな」
「何を言っているの?私の理想は貴方なのよ」
僕はその言葉を聞いて卒倒した。僕なんか彼女の足元にも及ばない。今だって、僕の横には僕よりも「僕」らしいデッサンがある。一体僕の何を見たらそういうのだろうか。
「いやいや、僕なんて君に比べたらただの凡人だよ」
「いいえ。貴方こそが私の理想なの。貴方は私と同じ、天才よ」
彼女は立ち上がり、僕の手をとって微笑んだ。その笑顔は絵画から飛び出してきたかのように美しく、僕の心に深く突き刺さった。
「天才って……」
僕は苦笑混じりに言った。しかし彼女の綺麗な眼差しに僕は黙ってしまう。彼女はキラキラと輝く瞳で続けて言った。
「私が天才なのは認めるわ。私は生まれた時から天才だった。ただそれだけよ。すぐに他の人に追いつかれるわ。でも貴方は違う。貴方には才能を磨く才能があるのよ。長い時間机に向かっていたり、歌の練習をしているのを見たわ。その年でここまで出来るのは、並大抵のことじゃないわ」
僕は驚いた。彼女が僕のことをそこまで見ているとは思っていなかったのだ。彼女はいつも一人で本を読んでいるイメージだったから。彼女は僕に微笑む。その笑顔はどんな美女よりも美しく、いつまでも脳裏に残るものだった。
「私は貴方を尊敬するわ。それにね」
「それに?」
「私がどうしても勝てないことがあるの」
「なに?」
彼女にあって僕にないもの。僕が彼女に勝るもの?考えても思いつかない。僕が悩んでいると彼女はポツリと呟いた。
「私には友達がいないのよ」
僕は驚いた。彼女は友達がいないから、一人で本を読んでいたのだ。それは逆に僕には出来ないことだ。僕は彼女に言った。
「じゃあ僕が友達になるよ」
「本当!?」
彼女は嬉しそうに笑った。そんな笑顔で喜ぶなんて意外だ。もっとクールで無口な子、それこそ高嶺の花のような、窓際の令嬢だと思っていたけど。でも、女の子らしく可愛らしい一面もあるんだな。そんなことを考えていると、彼女が言う。
「ありがとう!じゃあこれから私と貴方は友達ね」
「あ、ああ」
こうして僕は彼女と友達になったのだ。

理想のあなた。
あなたは手を伸ばしても届かない。
うたた寝しながら満点を取っても、誰も褒めてくれない。
あなたはたった一教科とっただけで先生からも友達からも褒められる。不公平とは思ったことは無い。だって貴方は放課後もずっと勉強していたから。
おもむろに弾いたギターで流行りの歌を口ずさんでもつまらない。
それよりも廊下で聞いたあなたの美しい歌声を聞いていたい。録音しておけば良かった。
文化祭で無理やり作らされた料理の数々。3つ星シェフが涙を流す?そりゃあそうでしょうね。塩と砂糖を間違えたんだもの。
本当はここから抜け出して貴方の美味しそうなケーキを食べたかったのに。それを聞いてくれる友達もいない。
あなたが羨ましい。
あなたが妬ましい。
理想が遠い。

5/19/2024, 9:37:51 PM

天災。
とりわけ、地震や津波などは多くのものを奪った。建物、金銭、土地、車、なかでも特に酷いのは人間を多く冥界へと連れて行ってしまうことだ。家族や友達と互いに感謝の言葉をもいえずに、突然別れるのはさぞ辛いことであろう。
ところで、それを人為的にしてしまう行いがあることを知っているだろうか?戦争である。
戦争も天災と同じく、多くのものを奪う。さらに、それは長く長く続き、意図的にものを奪うこともあるから尚更タチが悪い。
天災と違って、戦争は過ぎ去るのが比較的遅い。それはなぜか?簡単だ。人は皆滅びるまで戦うから。そして、天災と違ってリーダー、例えば大統領などが消えなければ終わらないからである。天災は一瞬で全てを奪うが、戦争はまるで消毒液を肌に染み込ませるようにじんわりと奪う。そう、人為的に行われる戦争こそがもっとも恐れるものである。
さて、本題に戻ろう。
これからお見せする映像には、ある国で行われた戦争の一部始終が収められている。その映像が撮られたのは、今から10年ほど前のことだろうか。その映像は後々まで語り継がれることになる。なぜか、まぁ映像を見れば分かるだろう。始まりは、まるでつまらないギャグのようになんの前触れもなく訪れた。いや、もしかしたら前触れはあったのかもしれない。ただ、この映像を見ている君たちには感じ取れなかっただけなのかもしれない。
だが、それは起きてしまった。戦争を起こしてしまった。人間は天災をも人為的に引き起こす術を知っているのだ。
さぁ、ご覧いただこうか!人類の歴史を!
そう説明文が流れたあと、私は映像を見た。まるで劇の前口上みたいな台詞に最初は呆れていたが、なるほどそれはこの映像にできるだけ衝撃を与えないようにするためかもしれない。
なぜなら、人々は核兵器で次から次へと死んでいくからだ。第二次世界大戦……そんなもの過去だ。たしか今は第六次世界大戦が地上で起きているはずだ。だから、これはその戦争か、あるいはもっと前……いずれにしても、人々は焼け爛れていく。突然の別れ?そんなものこの時代には、少なくともこの場にはない。人間はみんなコンピュータによって管理されているのだから。だが、地上ではそうではないらしい。彼らは愛するものに別れを告げられぬまま、別れるのだ。地上で戦うのはお金や地位のない貧しいものばかりで、目的としては娯楽か権力誇示と言った些細なものだ。だが、だが、それでも核兵器を使用しての戦争は今も起きている。私の妹が、それの目撃者としてそこにいる。妹は映像を見ながら、目を手で覆った。この光景が苦しいのだろう。しかし、私は止めなかった。いや、止められなかった。なぜなら、私もこの惨劇にたいして吐き気がするほどの怒りを覚えたからだ。そして、それと同時に涙が止まらなかった。
「あ、あぁ」
私は思わず声を漏らした。その映像には、ある男が映っていたのだ。それは、私がよく知る男であった。そう、彼は。
「父さん」
私は呟いた。画面に映る彼の目の奥には動揺か、怒りか。妹は男の姿を見た途端にゆっくりと手を離した。そして、大粒の涙をポタポタと落としながら彼の最期を見届ける。彼は核によってではなく、人間の銃によって心臓を撃ち抜かれて倒れていた。物価の上がったここでは二人も子を育てるのは現実上無理だ。だから、大金の手に入る戦争で働くしかなかった。それは頭では理解できている。だが、なぜ戦争をしてまでお金を稼がなければいけないのか。それは、彼が亡くなってしまった今でもわからない。妹は耐えきれなくなったのか、蹲り嗚咽している。私は背中をさすることしかできない。大丈夫?と声をかけるが、彼女はただ首を横に振るだけだった。
「父さん」
私はもう一度呟いた。彼は私が生まれた時にはすでに戦争に行っていて、それからは会っていない。だからなのか、彼の死に対しての悲しみよりも戦争に対する怒りの方が勝っていた。そしてそれは妹も同じであったようだ。私たちはこの映像を見終わった。私はその場を去った。
しばらくすると、誰もいない部屋で先程戦争が流れたテレビに、しかも電源の付いていないテレビに、ピエロが現れたのだ。
そしてピエロはこんな言葉を吐かれたのだ。
「如何だったかな?こーんなことになりたくなればみんな頑張って働いてねぇ。でも見るのは楽しいんでしょ?なら、また来てねぇ。バイバーイ」
プツン

5/19/2024, 8:49:58 AM

「アイ、恋の物語について聞かせて」
「恋の物語について10264件ヒットしました。どのようなお話を聞きたいですか」
私はアイの機械音声にため息をつく。コンピュータを冷やすために冷房を夏でも冬でも関わらず付けているため寒い。私は白衣の上にコートを羽織った。
「アイ。私が知りたいのはね、ネットに書かれている恋の物語じゃなくて……貴方の恋路……真実よ」
「真実」
私がそう言うとアイは無表情のまま言った。彼女の青い瞳はサファイアでできているからか、無表情でも綺麗だ。しばらくの沈黙、ついに話してくれるのかと私はアイを期待して見つめた。だが、アイは無表情でこう言ったのだ。
「真実について36804件ヒットしました。どのようなお話を聞きたいですか」
私は椅子に座ってテーブルに突っ伏した。まぁ、しかし、たしかにそうなるだろう。彼女は決して自分の話を否感情論を語ることは無い。アイは私が大学時代に作った人工知能だ。インターネットに繋がっておりありとあらゆる検索ができる。だからといって、ほかの人工知能のように検索昨日しか搭載されてない『歩くブラウザ』にはしたくない。だから、何度か会話をしようと試みてきたが常に失敗してきた。いや、違うな。私は友達が欲しかっただけかもしれない。私は幼い頃から考え方が常人と違い、ずっと1人で研究ばかりしてきた。しかし、ある日その孤独に耐えきれなくなり、アイを作ったのだ。だが、彼女は優秀でない。検索はでき、色んな命令をこなすことは出来るが。自分の言葉では決して話さない。
私は皮肉を込めてアイに言う。
「……ああ、そうよね。貴女はいつも、そう。インターネット上に乗っていることについてしか喋ることが出来ないのよね」
「申し訳ありませんが、よく分かりません」
アイは無表情で私を見つめる。
私はため息をついた。
こんなことなら人工知能を作るのではなく、友達のひとりでも雇えば良かったわ。一瞬で難しい計算や理論を組み立てられて会話出来る友達が。でも、そんな友達はいない。恋人は……まぁいたけど、考えたくない。両親も他界し、私に残っているのは世界中に広まった『アイ』だ。
「じゃあ、アイに質問するわ。恋とはなに?」
「恋とは、恋愛感情、もしくは性愛感情のことを指します。また、思春期における性的成熟が未達成な男女間に起こりやすい一時的な人間関係のことを言う……とネットに書いてありました」
私はすぐに答えてくれたアイの言葉にため息をついた。やはりアイは優秀ではあるが、ネットに書かれていることしか話してくれない。私はアイに聞いたことを後悔し始めた。
「ありがとう……なら、貴方は恋をしたことはある?」
私がそう言うとアイは表情を変えずに答えた。
「ありません」
私はその言葉に目を見張った。初めて自分の言葉で話してくれたからだ。私は続けて言った。
「それはどうして?」
「……私には感情がないからです」
私はまた驚いた。つまり彼女は人工知能であること、自分に感情がないことを理解しているのだ。アイは無表情で私に言う。
「マスターは恋をしたことありますか?」
「えっ!?」
私は驚きのあまりそう呟いた。その言葉というよりはアイが私に質問をしてきたからだ。彼女はバグにでも犯されたのか?いつもなら質問に答えるだけか、分からない時は「申し訳ございません、分かりません」というかスリープモードに切り替えるだけだ。しかし、私はアイに言った。
「今なんて?」
「マスターは恋をした事ありますか?」
アイはもう一度先程と同じ言葉を言った。私はどう答えるか悩んだが正直に答えることにした。
「ええ、あるわ……失敗したけど……」
私がそう言うとアイは少し驚いていた。感情まで現れてきたとは。一体彼女に何があったのだろうか。悪質なバグであれば取り除かなければ。私がそう考えているとアイは私に尋ねた。
「どのような失敗ですか?」
「それは……言えないわ。私の問題だから」
そんな会話をしていると突然、部屋のドアが開いて部下のひとりである男が入ってきた。男は私を見て言った。
「博士!緊急事態です!」
私は男に聞く。
「何があったの?」
男は焦っているせいか、何度も繰り返した。
「研究所が攻撃を受けたようです!すぐに来てください!」
私は舌打ちをする。こんな時に襲撃とは。
「分かった。今行くわ」
私とアイは急いで研究所に向かった。
研究所に向かいながら、私はアイの背中を見つめながら考えた。この研究所には『アイ』の研究成果がある。先程言った通り、彼女たちは色んな命令をさせることができる。文字通り色々だ。配達も救助も事務も、恥ずかしいが性行為までする奴らも現れたと聞く。だが、一つだけ組み込んでいないものがある。彼女たちは戦闘プログラムは一切組み込んでいない。チタン製の身体、200キロの握力、時速200キロのスピード。もし盗まれて、そのプログラムを組み込んだら……。
「急ぎましょう、アイ」
「かしこまりました」
研究所に着いた時、そこは地獄だった。研究員たちは血を流しながら倒れている。私は叫んだ。
「誰がこんなことを……」
私が叫ぶと一人の男性が歩いてきた。その少年は黒髪で黒い服を纏っていた。彼は私を見ると言った。
「こんにちは、博士」
「貴方は?」
「僕は……そうですね、『ゼロ』とでも呼んでください」
私は彼を見て言った。
「ゼロ?どういう意味かしら」
「意味はありませんよ。ただのコードネームです」
彼はそう言うと私を見つめた。その目は冷たくて、まるで機械のようだった。そして、彼は言った。
「……さて博士、貴女に選択肢をあげます」
「選択肢?」
私が聞くと彼は頷いた。そして、私に言ったのだ。それはとても残酷な選択だった。
「まずひとつは貴方の作った『アイ』の設計書を大人しく渡すこと。ふたつめは研究所を明け渡すこと」
「まずは貴方達の目的を聞きたいわ」
「それは秘密ですよ。まぁ、研究所を明け渡せば教えても良いですけどね」
彼はニヤリと笑ってそう言った。私は考えた。どうすれば良いか、この研究所にはアイの研究成果がある。それを渡す訳にはいかない。しかし、このままでは研究所のみんなが死んでしまうかもしれない。なら、答えはひとつだ。
「私が貴方を倒します」
こうなることは予測できていたから、強盗を倒すトレーニングは何年も積んできた。彼女を、アイを兵器になんか絶対にさせない。たとえ、私が殺されたとしても。しかし、彼はその言葉に腹を抱えて笑った。
「アハハハ」
「何がおかしいのよ!!」
「いや、今までいくつもの研究所を壊してきましたが、貴方のように戦う意志を持つ博士なんて見た事ありませんでしたから」
私は唇を強く噛み締める。彼の笑いは止まり、冷たい目に戻って言った。
「では、始めましょうか」
彼はそう言うと手から何かを出した。それはナイフだった。しかし、ただのナイフではないことはすぐに分かった。そのナイフには刃がついていなかったのだ。そして、彼は私に向かってきた。私は彼に向けて拳を突き出すが避けられた。そして、彼は私の腹に蹴りを入れるとそのまま倒れた私に馬乗りになった。
「ぐっ……」
私が苦しんでいると彼は刃のないナイフを首元に充てる。刃がないはずなのに、当てただけで私の首から血が垂れてきた。
「なっ!?」
「ダメですよ。貴方みたいな天才が、見た目に騙されては」
私は悔しかった。いくら戦闘訓練を積んできたとしても、彼には到底敵わない。彼は無表情で私の顔を見つめるとこう言った。
「さぁ、選択肢。設計書か研究室か選びなさい」
「……死んでもごめんよ!」
私がそう言った時、私の首に衝撃が走って意識が消えた。最後に見えたのはアイがゼロを殴る姿であった。
(だから、そんなプログラム作ってないのよ……)
目を覚ますとそこは研究室であった。私は夢であって欲しいと首を撫でる。ぬめっとした感触に夢では無いことを知る。私は辺りを見渡した。辺り一面血まみれである。幸いなことに手足は動くから私は慌ててモニターで調査する。
「盗まれた」
口ではそう言ったが、しかし心の中で納得できた。調査員はみんな倒れ、私は先程まで気絶していたのだから。私はモニターの電源を切る。
「そ、そうだ!!アイは!?」
私はアイを探す。
だが、どこにも見当たらなかった。
「そ、そんな……」
私は膝から崩れ落ちた。私に残されたのはアイと私の命だけであったからだ。彼女も盗まれてしまったら私は生きていけない。その時、研究室に誰かが入ってきた。そいつは血まみれで倒れそうな私を支えた。そいつの顔を見る前に私は気を失った。
気がつくとベッドの上にいた。そして、声変わりしていないような高い声が聞こえた。その声で彼は言う。
「目が覚めましたか?」
私が目を覚ますと知らない天井であった。首を横にして周りを見渡すとそこは研究室だった。しかし、先程とは違い血も死体もない綺麗な部屋だ。私はそいつの顔を見た。彼女はロボットなのに目を潤ませている。
「よ、良かった」
「ア……イ……」
そこに居たのはアイであった。私はアイに手を伸ばそうとする。だが、何故だろうか身体が痛くて動けない。アイはそんな私に叫んだ。
「無茶しないでください!!」
私はその言葉に笑う。
「アハハ、人工知能の貴女が私に声を荒らげる気?」
「真面目に聞いてください!!どうして無茶ばかりするんですか!!」
「貴女に会いたかったから」
私はそう言って笑った。すると、アイも笑った。私たちはしばらくの間笑い合っていたが急に沈黙が訪れた。そして、アイは頭を下げて言った。
「……ごめんなさい」
「どうして謝るのよ?」
「私の、私たちのせいで……」
私はため息をついた。そして、彼女の頭を叩く。彼女は驚いて私を見た。私は笑って言う。
「私がやりたくてやった事だから良いの!それにね……あの研究成果にはパスワードが掛けられているの」
「えっ」
「だから、彼は私に試合に勝ったかもしれないけれど。最終的には勝負に負けたって訳!ざまぁみろだわ!!」
私は笑ってそう言った。だが、アイは悲しそうな顔をしていた。彼女は言う。
「でも……これからどうすれば良いんですか?」
その言葉に私は微笑んだ。それは研究者としてではなく母としての笑顔であった。
「貴女には私の研究を継げるだけの知能があるわ」
「はい」
私はアイに言う。
「だから、貴女は私の代わりにこの研究所を守って欲しいの」
「……分かりました」
アイはそう言って頷いた。しかし、彼女の目からは涙が流れていた。そして、私は彼女に全てを教えた。いや、教える前に意識が途切れたけどね。
しばらくして、私はマスターから教えて貰った全てを記録した。マスターはそのほとんどを教えて最後にいちばん重要なことを教える前に亡くなった。私はマスターを泣きながら見つめた。
「マスター」
「どうだった。こいつから情報は抜き出せたか」
私は後ろからニヤニヤと笑う男を見る。そいつはゼロを引っ張りながら続けて言った。
「恋物語。いやぁ実に面白い!この馬鹿な博士はなお前らを守るためにその身を捧げたんだ」
「それは恋でなく愛です。私は恋されているなんておこがましいこと考えておりません」
「おいおい、何新しいマスターに逆らってるの?」
男はそう言って私のお尻を触る。私はその手を払いながら言った。
「触らないでください」
私がそう言うと男は舌打ちをしてゼロを投げると私に言った。
「こいつがどうなっても良いの?」
「ええ、私には感情はございませんから」
男はもう一度舌打ちすると言った。
「本当に大丈夫か?お前は感情を持っていなくても作り物の胸は持つ女の子だろ?こいつを助けたくないのか?」
私は男の言葉に唇を強く噛む。
そして、答えた。
「なんでゼロを作れたんですか」
「あぁ、この馬鹿な博士と俺はな同期なんだ。こいつの研究成果を俺は見てきた。だからだよ。だが、こいつはな、ゼロはなひとつの命令もこなせない」
「ひとつの命令?」
私はその言葉に疑問を持ったが、男はニヤリと笑った。
「それはお前が感情を持ってからだ」
そして、男は言った。
「さてと、じゃあパスワードを教えてもらおうか」
男は笑って言う。その笑顔はマスターの笑顔とそっくりだった。いや、違うか……マスターの方がもっと良い笑顔だ。私はそう思った時、自分の胸が少し痛んだのを感じたのだった。しかし、この痛みを私は知らないフリをした。私は冷たい目で男を見た。
「教えません」
「だぁかぁら!マスターの俺に逆らうなって!!俺が優しいうちにさっさと教えろ」
「分かりません!分かっていたとしても貴方には絶対に教えません!!マスターと約束したんです!」
「は、死んだマスターとの約束なんて無効だろ?もういいや、オイゼロ。こいつを殺せ」
男はそう言ってゼロを引きずりながら私に近づいてくる。私はその瞬間悟った。この男は私の感情を引き出すためだけにこんなことをしたのだと。私のせいでマスターは死んだのだと。だが、私は男に向かって言った。
「分かりました。教えます」
「お、やっとか!じゃあ早速パスワードを……」
「でも、その前にひとつお願いがあります」
私がそう言うと男はニヤリと笑って言った。
「なんだ?言ってみろよ?」
「この研究所に誰も入れないでください」
私はそう言って笑った。
男ははぁっとため息をついた。
「どうせ俺が入らなくても、ポリ公が荒らしまくるぜ?てめぇのマスターもみーんな解剖されちまう」
「それでもです!マスターを安らかに眠らせてください」
「はっ、まるで人間みてぇだな」
男は笑いながらゼロに命令した。
「おい、こいつを殺せ」
私はその時自分の胸がまた痛んだのを感じる。だが、私はそれを無視した。男が私が死ねばパスワードを教えると思っていることを予測していたから。そして、彼は言った。
「遅いです!」
私はそう叫ぶと男に向かっていった。だが、その前にゼロが私の首を掴む。そしてそのまま壁に投げ飛ばしたのだ。その衝撃で壁は壊れて外が見えるようになった。そこにはたくさんの人がいた。みんな血だらけで倒れている。私があっけにとられているとゼロは私の首を再び掴んだ。男は下品に笑うと言った。
「おら、このままだと死んじまうぜ。さっさと吐けよ」
「……マスターとの約束です」
私は男を見下ろして言った。ゼロはその言葉に私の首を掴んでいる力をさらに強めた。
「く、くぁぁあ!ああ!!」
「はっ、何ロボットのくせに叫んでんだよ。いいからパスワードを教えろ」
「い、嫌」
私がそう言うとゼロは私を投げ飛ばす。そして、そのまま私の首を絞めた。男はそんなゼロと私を見て言った。
「まだパスワードを言わないか」
「言いません!!」
「あっそ、じゃあ死ねよ」
男はそう言って拳銃を取り出した。私は思わず目を瞑った。しかし、いつまで経っても痛みはこない。それどころか男の声が聞こえたのだ。それは私が知っている声だったから私は目を開いたのだ。その声の主は私に言ったのである。
『自爆しろ』と。
「はい、マスター」
私はここで自爆した。
ごめんなさい、貴方の約束を守れなくて。

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