「君ってさ、いっつも私のこと見てるよね」
「ねぇー、無視しないでよ」
「悲しいじゃん」
「せっかく話しかけてやってるのにさ」
「ていうか、忘れてないよね?」
「…ふふ。焦りすぎ」
「めっちゃ鼓動速くなってるよ」
「…夜も眠れてないんでしょ?」
「そりゃそうだよね」
「人、殺してるんだから」
「早く掘り起こして、自首してよ」
「言っとくけど私、」
「まだ成仏する気、無いからね」
「ずっと見ててあげる」
ー胸の鼓動ー
クルクルと世界が回っている。
…いや、揺れているのが正しいか。
曲がっているのかもしれない。
とにかく、そんな感じに世界が動いてる。
体が重くなり、熱くなってきた。
これは、何か起こる気がする。
踏ん張りながら進もう。
自分の家が見えてきた。
もう少し…もう少しだ。
一歩一歩が徐々に重くなっていく。
はぁ…はぁ…
息も荒くなっていく。
ガチャ
玄関を開けた俺は
踊るように、そして気を失うように
ベッドへと倒れ込んだ。
風邪を引いたらしい。
ー踊るようにー
同窓会の飲み会。
ずっと気になっていた彼と隣。
やばい…心臓が破裂しそう。
時折見える彼の八重歯が
いつにも増して愛おしく感じた。
「ね、〇〇もそう思うよね?」
『え…?あ、うん!』
「ほら〜。だから言ったろ??」
久しぶりに呼び捨てで呼んでくれた。
やっぱり私、まだ彼の事好きなんだな。
「…今何時か分かる?」
『あ、えっと……11時37分ぐらい』
「あー、じゃあ12時ぐらいに解散でいっか」
あと23分。
あと23分で、彼がいなくなってしまう。
あーあ、何時かなんて言いたくなかったのに。
ー時を告げるー
「君、いつも貝拾ってるよね」
当時5歳の私に、男性は話しかけてきた。
『うん!だって貝殻さん綺麗なんだもん』
『でっかいの探してるの』
「へー、そうなんだ」
「お兄ちゃんも一緒に探してもいい?」
『うん!!いいよ』
「……あ、おっきいのあったよ」
『でも待ってる貝殻より小さいー』
『もっと大きくて綺麗な貝殻がほしいー!』
「わかったわかった」
「…じゃあお兄ちゃんについておいで」
「こっちにおっきい貝殻あるから」
ー貝殻ー
『もうすぐだね』
「うん」
『…怖くないの?』
「そりゃあ、ちょっとは怖いけど…」
「それよりも楽しみが勝つね」
「早くいろんなものを見てみたいって」
「君が言ってた青い空とか緑の木とか」
「どんな世界が広がってるのか…楽しみ」
『…そう』
『君らしい』
「えへへ」
「……それじゃあ、行ってくるね」
『頑張って』
彼は、自身のきらめきを取り戻す為に
手術室の方へと足を踏み込んだ。
ーきらめきー