生まれ変わりたい。
貴方のような繊細な人間に。
美しく、ツヤのある髪の毛。
何本にも重なった細い血管。
生きてるって感じがする。
…ほら。
僕らには…無いからさ。
羨ましいんだよ。
いや、僕たちも生きてるんだけど…
やっぱり人間として生きてみたいよね。
動けないし、呼吸して光合成を行うだけだもん。
…そんなこと考える時点で、ある意味繊細かもね。
ー繊細な花ー
「ご飯…ちゃんと食べてる?」
「仕事は?遅くまで残業しなくてもいいよ」
「君が私の為にお金を稼いでくれてるのはもう十分わかったからさ」
「早く帰ってゆっくりしなよ…私の事なんか忘れて」
「…え、ちょっと…泣かないでよ」
「私まで…泣いちゃうじゃんかぁ……」
「………」
「……ごめん。心無い事言っちゃった…」
「今度から…気をつけるよ…」
「でもね。君の事を心配してるのは本当だよ?」
「…なんで君は私に尽くしてくれるの…?」
「………」
「君にはもっといい人が居るよ…だから…ね?」
「もう泣かないで」
「………ねぇ」
「大好き」
「………うん。知ってる」
ー一年後ー
「けえきやさんになりたいてす」
押入れを整理していると
幼稚園児の時に書いた短冊が出てきた。
(…ふ。「けえき」って…。しかも「てす」じゃなくて「です」なのに……)
ふふっと笑いが込み上げてきた。
同時に、なんともいけない嫌悪感も。
『あーあ……。何やってるんだろ。私』
叶いもしない夢を願って…馬鹿みたい。
…いいや違う。
夢を叶えるために努力しなかったんだ。
『本当に……。大っ嫌い』
子供の頃は…こんな想いなんて無かったのに。
ー子供の頃はー
いつも通りの日常は
たった一瞬で崩れるものだ。
目の前で母を亡くした私には、分かる。
本当に一瞬だった。
大きな鉄の塊がスピードを出して横切ったと思えば、
赤く染まった母がいた。
話し掛けても何も答えず、
ただ目の前が揺れるばかりだった。
私はいつも母に守ってもらっていた。
そんな母が居なくなれば、
あの人は今よりもっと攻撃的になる。
そして私も死ぬだろう。
それまで、耐え続けるのが私の日常だ。
ー日常ー
赤が好き。
だって吸い込まれそうな色してるもん。
紫も、黄色も混ざってそうな深い色だよ。
本当に綺麗なの。
君は笑顔で言った。
そんなに赤色が好きなんだ。
確かに綺麗だもんね。
君によく似合う色だよ。
………。
赤が好き。
そう言ったから、
君を赤に染めてあげた。
うん、やっぱり君によく似合う色だ。
ー好きな色ー