ヨルガオ(短編小説)

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6/25/2023, 12:13:07 PM

生まれ変わりたい。

貴方のような繊細な人間に。

美しく、ツヤのある髪の毛。

何本にも重なった細い血管。

生きてるって感じがする。

…ほら。

僕らには…無いからさ。

羨ましいんだよ。

いや、僕たちも生きてるんだけど…

やっぱり人間として生きてみたいよね。

動けないし、呼吸して光合成を行うだけだもん。

…そんなこと考える時点で、ある意味繊細かもね。


ー繊細な花ー

6/24/2023, 10:59:24 AM

「ご飯…ちゃんと食べてる?」

「仕事は?遅くまで残業しなくてもいいよ」

「君が私の為にお金を稼いでくれてるのはもう十分わかったからさ」

「早く帰ってゆっくりしなよ…私の事なんか忘れて」

「…え、ちょっと…泣かないでよ」

「私まで…泣いちゃうじゃんかぁ……」

「………」

「……ごめん。心無い事言っちゃった…」

「今度から…気をつけるよ…」

「でもね。君の事を心配してるのは本当だよ?」

「…なんで君は私に尽くしてくれるの…?」

「………」

「君にはもっといい人が居るよ…だから…ね?」

「もう泣かないで」

「………ねぇ」

「大好き」

「………うん。知ってる」


ー一年後ー

6/23/2023, 10:24:44 AM

「けえきやさんになりたいてす」

押入れを整理していると

幼稚園児の時に書いた短冊が出てきた。

(…ふ。「けえき」って…。しかも「てす」じゃなくて「です」なのに……)

ふふっと笑いが込み上げてきた。

同時に、なんともいけない嫌悪感も。

『あーあ……。何やってるんだろ。私』

叶いもしない夢を願って…馬鹿みたい。

…いいや違う。

夢を叶えるために努力しなかったんだ。

『本当に……。大っ嫌い』

子供の頃は…こんな想いなんて無かったのに。


ー子供の頃はー

6/22/2023, 1:01:44 PM

いつも通りの日常は

たった一瞬で崩れるものだ。

目の前で母を亡くした私には、分かる。

本当に一瞬だった。

大きな鉄の塊がスピードを出して横切ったと思えば、

赤く染まった母がいた。

話し掛けても何も答えず、

ただ目の前が揺れるばかりだった。

私はいつも母に守ってもらっていた。

そんな母が居なくなれば、

あの人は今よりもっと攻撃的になる。

そして私も死ぬだろう。

それまで、耐え続けるのが私の日常だ。


ー日常ー

6/21/2023, 12:07:31 PM

赤が好き。

だって吸い込まれそうな色してるもん。

紫も、黄色も混ざってそうな深い色だよ。

本当に綺麗なの。

君は笑顔で言った。

そんなに赤色が好きなんだ。

確かに綺麗だもんね。

君によく似合う色だよ。

………。

赤が好き。

そう言ったから、

君を赤に染めてあげた。

うん、やっぱり君によく似合う色だ。


ー好きな色ー

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