六月

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4/11/2026, 3:04:57 PM

不能感、内側、残留



午後の時報が響き渡っている。部屋の輪郭はぼんやりとしていて、締め切ったカーテンの隙間からは妙に白っぽい外界の光が漏れ出ている。その光が部屋の色彩を混ぜ、幻のようにみせている。静けさ漂う暗間に包まれていると、自己が際立つ。誰にも見られていない空間、光を当てられていない体。他者の存在がないからこそ、自分の形を触り、自分をよく知ろうとする。人混みは嫌いである。他者の視線と思考が神経質に身をつつき、評価される人間となっていく。勝手に他者を借りて自己を評価することに疲れてしまう。だから、私が私を「他者の目に留まらない私」として認識できるように、自己の境界を薄め、誰でもないそこらにある有機体を演じる。そんなふうに過ごしていると、自己の意識が沈んでいき、自分が何者であるのかわからなくなる。でもこの部屋では、誰にも私を見つけられる手段はなく、外に向かう五感を断ち切ってしまえる。本体が一つのままに感じることが全てであり、その全てが私であった。

数分前に出て行ったあの子は、どんな心持ちで、どんなことを考え、これから何をするのだろう。寝転がったシーツにあの子の汗が染みている。私は人と交わるより、自分のことを探る時間が好きだ。だから私は、人と触り合った後、必ず一人になって自分と過ごす。それは自分と遊ぶことでもあるし、自分を愛すことでもあり、自分の存在を探求することでもあった。でも他者との交流にも意義は感じられた。相手を通して、自分の思考や癖、隠れている欲求の発見になるからである。自分の好き嫌いの数も増える。私は私の研究対象であるため、情報が豊富になっていくことに自己が満たされるような実感があった。しかし、他者と関わる上での問題は、自分の面も増えるということであった。誰を相手にするかによって、反応や言葉遣い、漂わせる雰囲気、思考や価値観まで調節する必要がある。これまでに作り上げてきた私は、何体いるのだろう。

いつからか、私は本来の私を失ってしまうような気に迫られて、持っているはずの人間の核を探すようになっていた。今日みたいに誰かと密に体を擦り合わせた日は、一段とその意欲が通いた。自分の核を探るうちに気づいたことは、相手と快感を味わうほど、体の内側に黒くざらざらしたものが残っていくということである。その気持ち悪い残留感は、内臓から侵食し、やがて私を不透明に覆い隠してしまうように感じられる。だから私はその靄を掻き出すのに必死になって、内を発散できるように体をくねらせながら、自分を愛撫するのである。

内に溜まっていた黒さが散った後は、それからは自分との交流の時間であった。自分の体を探って形を確かめ、触る感触と触られる感触をただ追いかけていると、姿が隠れるほどの暗い空間から、自己の存在が明確に光をもって浮かび上がってくる。今なら、日中感じた自分への劣等感や不能感が押し寄せてきても、純粋な自己への魅力がそれらを押しのけるはずである。視界には輝いた自分の存在しか映らない。次第に、無調整の私の本性が露わになり、内包されていた核がめくれ上がる。

4/10/2026, 1:50:39 PM

ー月経に対する、直接的な表現があります。自己判断のもと、読んでいただきたいです。


私の体から、臓器から血が出ている。体の発達にしたがって、頭や腹に重く鈍い痛みが増している。

私は、女の人生で苦痛と不快感しか生まないであろう月経があまり嫌ではなかった。初潮がきた時は、自分の体が女である事実を身をもって感じ、安堵の心持ちで血を迎え入れた。最近になるまでは血が出る不快感を除けば、私にとっての害はなく、便器に垂れる鮮血が、マーブリングのように水に滲む様に美しさを見出すまでにいたった。だけれども、月を重ねるほどに強くなる鈍痛が身を襲った。子宮、排泄口、腰、頭。それでも生活はやってくる。

今日すれ違った女性の中で、何人の人が血を流しながら歩いていたのだろう。今日同じ空間にいた女性の中で、何人の人が血を流しながら座っていたのだろう。皆んな、普通の顔をして過ごしている。痛みと不快感を知られまいと何食わぬ顔をして過ごしている。これが女の生活なのである。

ナプキンを替えようとトイレで下着を下げると、女性の成熟の証である、真っ赤に染まった綿が、まるで、まだ躾のなっていない性器から出る糞尿を溜めるオシメのようであった。傷口の血を多量に吸い取ったガーゼを、ナースが医療措置として、新しく清潔な真っ白いガーゼに取り替えるような、はたまた愛しい我が子が汚したオシメを替えて大事なものの世話を焼くような、そんなことが頭に浮かんだ。ナプキンを取り替えるのは、不健康であるからなのか、それとも自分に愛を持って接する行為なのか。私は女の体を愛しているし、女でないと経験できない自分の血との交わり、触れ合いを幸福に生きている。いつか遠い将来に閉経したとしても、その血との関わり合いはずっと覚えているだろう。
幸福と嫌悪と共に。

(これからも、ずっと)

3/31/2026, 2:36:45 PM

(幸せに)

3/18/2026, 1:09:31 PM

(不条理)

3/3/2026, 12:00:16 PM

 体が、意識が強く引っ張られている。
 まるで別次元へ転送されるように引き摺られている。

 息は浅く、口先から空気を吸いながら吐いている。
 口内と口外を行き来する小さな風が生まれ、前歯に滲みていく。

 貧弱な呼吸を繰り返すことで、心臓が止まりそうなほど豪速に跳ねている。
 鼓膜を押さえたり、胸に手を当てたりせずとも迫り来る鈍い音が聞こえる。

 切れない感覚が手足を勝手に動かす。
 体が求めるままに表出されていく。


 やがて興奮は止み、息が深く深く入っていく。
 そして瞼を開けないうちに私が暗く重く沈んでいく。


(真昼の夢)

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