時々タイムマシーンを夢見ることがある
未来の自らの姿を見てみたいと思って
だがそれは少し怖いことでもあった
会社で働いて失敗してるんだろう
酔った同僚に馬鹿にされたりもするんだろう
或いは作家になって創作に夢中になるんだろう
そして部屋から一歩も外に出なくなる
腹が減ろうが空気が悪かろうが外に出なくなるんだろう
もしくは街の清掃員だろう
街を歩き回ってゴミを集めて捨てるんだろう
郵便局の局員かもしれない
人々の手紙を集め届けるのだろう
こうして働けず
結局ただの引きこもりになって
親の脛をかじる生き方をしていくかもしれない
それは絶対に避けなければならないのだ
こうして頭の中に存在せぬ無駄に生々しい未来の記憶が広がった
無論それぞれの未来の細かいことは分からない
だがその記憶の主の顔は共通して笑顔であった
作り笑いではない本当の優しい微笑みであった
よくわからないがきっと幸せなのだろう
未来の記憶ではきっと
幸せなのだ
僕は生まれる前に歌を聴いた
暗闇の中から微かに聴こえる
優しい優しい歌を聴いた
僕が生まれた頃
誰かが微笑んでいて
誰かが泣き続けていた
それが父なのか母なのか
或いは祖父か祖母か
また或いは病院の職員だったのか
分からないが
そんなだった気がした
「ココロ」とか言うものは
もうこの頃から僕の体内に存在していた
具体的な場所なんか知らないけど
小さな頃からもうあったことはわかる
生まれて十数年経ち
僕は未だにあの歌を口ずさむ
生まれる前を忘れぬために
生まれた「ココロ」を忘れぬために
なぜ覚えているのか
分からないが
まあそんなものだろう
これは一つの
いのちの話
ちいさなこどもが
ながれぼしにねがう
なにをねがい
なにをいのっているのか
まったくわからないが
ねがいをかけていることは
さだかであった
りんごのきが
はえているおかで
じべたにかつきみそうがさいていた
うつくしいはなをさかせて
ただそこにある
うちゅうぜんめんにひろがるこどものおもいが
いまわれわれののうないでうずをまく
みらいとはなにか
いまとはなにか
そしてねがいとはなにか
君は後ろを向いて振り向くことをしない
その広い背中が世界を背負っているような…
そんな優しさを感じた
風が吹いている
そんなときでも
振り向かない君は
一体何を考えているのだろう
誰かの泣き声が聞こえた
遥か遠くの国から
誰かが血を流した
それも遥か遠くの国で
ここからずっと遠い国で
幾つの命が消えてしまったか
瓦礫の中で蠢く子どもと
脳天を撃たれた大人たち
遠く…
ずっと遠くで…
願いが消えゆく
沈黙だけを残して…
誰かが苦しむ声が聞こえた
遥か遠くの国から
男の亡骸を見た
それも遥か遠くの国で
遠く…
美しくない現実…
鳴り響く銃声と
一輪の花…