世間はクリスマスだというのに、私は今日も変わらず家で寝ていた。何もすることなんてない。いつも通りの日だった。恋人とやらが身近に居たならば、そんなことは無かっただろう。だが私には恋人は居ない。独りで家に居たのである。私は閑静な家で独りで過ごすのは、そんなに悪いものではないと思っている。(世間はそれを強がりだと言うのだろうが、そんなつもりはない)外よりも暖かく、炬燵に丸くなって、蜜柑か何かを食いながらテレビでよくわからない番組を見る。無理に外に出て寒さを感じながらイルミネーションやクリスマスのイベントに行くよりも、暖かいこういった生活のほうが、私は幸せだと感じる。そして外には、庭で犬が駆けている。そんな光景を窓から見るのも、その理由の一つである。
これがそんなに世間で悪く思われているのだろうか?私は到底理解できなかった。
もともとクリスマスというのは、日本で生まれた行事では無かったはずだ。だがこういった行事が積極的に今催されているのは、人間の生活の変化の末なのだろう。神の誕生を祝う日なのだ、外に出てみればどうだと、それ故問われることがあるが、そんなことはしない。恋人と抱擁し合う日になるくらいならば、神様に祈りを捧げろと思うこともある。こういう妬みのせいで、私は弱者扱いされるのだろう。しかし私は外に出ない。炬燵から出たら、このまま眠りについて、来る大晦日を、おとなしく待とうと思う。
ふわりふわり
ふわりふわり
消えては光って
光っては消えて
クリスマスツリーに
飾られた光
街の電灯
そして私の
口から出てくる
真っ白な息
寒い夜に今
光り続ける
白い息を
反射して
ふわりふわり
ふわりふわり
人々が
祈り続ける
何処の誰にも
それは分からぬ
駅前に
誰かを待つと
思われる女が
マフラーをかける
あの女も
祈り続ける
この街に
彼が来るまで
イルミネーションが
光った夜は
きっと私を
置いていかない
永遠が
存在するなら
今がずっと
続けばいい
人々の行き交う
クリスマスイヴに
今日も夜は
やってきた
その夜は
多分いつもの
夜ではなくて
ふわりふわり
ふわりふわりと
浮いて輝く
光を目立たせ
我々に
魅せてくれるため
明日は多分
もっと賑わう
この夜に魅せられた
人々のことを
きっと私は
忘れない
ふわりふわり
ふわりふわり
イルミネーションの
虜となって
ずっと静かな
この人々を
きっと私は
忘れない
きのしたにおかれた
りぼんでぐるぐるまきに
つつまれたひとつのつづら
なかにはいっているのは
こどもたちのねがいか
おとなたちのよくぼうか
とおいみらいのゆめか
せいやにあたえられた
たったひとつのプレゼント
こどもたちにとっては
これいじょうにうれしいことはない
だがおとなたちにとって
それはときにきょうふをあたえる
あのころのむじゃきさなんか
とうにわすれて
クリスマスのひに
あさからばんまではたらく
こどもたちはそんなおとなたちを
うるんだひとみで
まっているのだ
柚子風呂に入る時に時々思う
柚子から薫るあの匂いの正体は
一体どこに行き着いてしまうのだろうと
柚子の甘酸っぱい薫りは
私の体に今染みている
先日転んだ時に不本意にできてしまった
小さな傷にさえも
じわじわと染みていく
私の体に染みていくこの薫りは
私が柚子を入れる前から既に薫っているものであり
風呂に入れた瞬間に薫りが染みていくといったことは
決してない
柚子の薫りは当然
柚子から生まれるものである
だが元を辿って行けばきっと
実から枝へ
枝から幹へ
幹から根へと
そして土壌へと
薫りはきっとそこからやってくる
風呂に柚子を入れ入浴する
ただそれだけのことなのにも関わらず
私はこんな思考を無駄に張り巡らせ
頭を疲れさせる
浮かんでいる数多の柚子たちは
相変わらず薫りを放っている
その先にあるのは
一つの幸せと
温もり
遥か遠くから
聴こえてくるのは
今年の終わりを
告げる鐘
柊の木には
飾りをつけて
遥か昔の
人を祝う
神様は多分
知っているだろう
私たちがいま
祈っていること
教会は今
真夜中を照らす
この日を祝う
ベルの音で
----さんたさんは
きっとくるよね
ぼくことしは
とてもいいこにしたよ
ぷれぜんとは
なにがくるかな
くっきーをつりーのしたにおいて
さんたさんをもてなしてあげよう
べるのおとがとおくからきこえる
もうことしがおわってしまうのに
おとなたちはまだ
そんなこともしらずに
あせりながらいきている
しんだしんかいぎょのめをして
いそがしくいきている
さんたさん
ぼくがほしいぷれぜんとはね
みんながゆったりいきていけるような
こころのよゆうがほしい
みんなががんばりすぎて
しんじゃわないような
そんなものがほしい-------
ベルは未だ
鳴り続けている
眠りについた
子どもを残し
人々はきっと
生き続けている
そんな音の
正体も知らず
柊の
その木の下に
たった一つの
ぬいぐるみ