君と見上げる月
拝啓
雷雨が立ち去り、静かな香りに包まれた秋がやってまいりました。
ふと見上げた月は貴方のように凛と光り輝き、美しいものでした。
貴方はいつもわがままばかり言い、拗ねてる日が多かったですね。
ですが、何か嬉しいことがあるところころと顔色を変え、そんな貴方の笑顔はまるで太陽のように私の心を温かく包み込んでくれました。
貴方が寂しいと言った日はそっと私の傍により、可愛らしい寝息をたてていましたね。
私が風邪をひいた時はなれない料理をし、火傷を負ってしまいましたね。あの時のお粥は、本当に美味しかったです。
貴方の柔らかな髪、貴方の声、一つ一つの仕草が愛おしくて、貴方は、まさしく私の太陽でした。
貴方が亡くなり、49日が経ちました。
今夜は十五夜です。
今年も、貴方と月を見たかったです。
本当に、大好きです。
もし叶うならば、もう一度貴方を抱きしめたい。
今夜の月が、貴方に届いていますように。
敬具
君と見たあの桜はどこまでも美しかった。
桜は1年の眠りにつき、この暖かい春に優しく微笑む。
けれども、その優しさはどこまでも儚く、ぽとりと落ちている桜の花びらはまるで自信をなくした君のようだった。
そっと君の手を握るとあなたは悲しそうに笑った
春爛漫
桜が陽に照らされて狂い咲くように、貴方はまるで花が微笑むように咲らい、そして桜のようにすぐどこかへ行ってしまった。
けど、また、会えるよね。
さようなら
そういうのは簡単だけど、心は直ぐに言うことを聞いてくれない。
止まらない涙に、震える身体。
もう、本当に二度と会えなかったらどうしよう。
こんな気持ちになるなら言わなかったらよかった。
後悔ばかり重なる言動に嫌気がさした。
彼の背中ばかりみつめて、私は前を向こうとしない。
どうしたら、いいの?
ねぇ、また、本当は、また会いたい。
Bye bye. Hope to see you again...
We hope you are too.
君と見た景色はどこまでも色鮮やかで、暖かくて、ほんの一瞬期待してしまった。
このままずっと俺の傍にいてくれると。
その暖かい温もりを逃がしたくなくて必死になればなるほど、 君は遠ざかり、少し手を離せば君は頬を膨らませ怒り、でも、それでも、俺のそばにいてくれた君は俺の愛する人で、かけがいのない人で、俺と君は住む世界が違うくて。
部屋にスーツを脱ぎ捨て、硬いベッドに寝転んだ。
何日も寝ていなかった疲弊しきった目には隈があり、充電は既になくて、充電器に指し、電源がつくと大量の通知音に、彼は溜息をつきながら電源切った。
部屋から差し込む暖かい月の光は彼にとってはただの邪魔の存在でカーテンを勢いよくしめ、何度目か分からない溜息をつきそっと手を伸ばした。
そこにはコーヒーの缶があり、震える手でそれを空け一気に飲みきれば立ち上がり、ガラッと窓を開けた。
あの日見た夜景は何一つ変わっていなくて。
変わってしまったのは俺だけだった。
カリ、カリ、とドアを引っ掻く音が聞こえ、最初は無視していたが無性に気になりドアをそっと開けた。
そこには、あの人が気に入っていたイヤリングと同じ目の色をしていた猫がいた。
猫は何も言わずに部屋へ押し入れば、窓の前で立ち止まり、俺をじっと見つめた。
『まだ、わたしはあなたのそばにいるよ。』