『雪を待つ』
ふと遠くの山々を見れば紅葉から雪山へと移り変わり、
冷たい風が私の頬を撫でた。
この季節になれば心做しか胸がぽっかりと、何か空いた空虚な気持ちになる。
そんな空白を真っ白な雪は埋めてくれる。
私をも覆い隠さんとする雪は秋を隠し、春を待つ。
そんな雪を、ずっと待っている。
そして、いつか私に春の日差しが来ることを願って──
『イルミネーション』
空を見あげれば、それは、まるでイルミネーションのようにキラキラと輝いていて、雪が白い息で解けて──
星はまるで泣いているかのように光って、そして、雪のように解けていく
人は時が過ぎるのを待ち、光りは届くのを待つ
でも、そこに、光はずっとあって、私もここにいる。
私は冷たくなった手をそっと握りしめた。
誰にも言えない秘密
あなたの事が好きでした
これが言えたら、今、僕は楽だったのかな
モンシロチョウ
初めて幼虫を見た時気持ち悪いと思った。
2回目に卵を見たら発狂した。
うにょうにょ動き出すソレは私の心を不快にさせ、ぶすぶすと包丁を突き立てたくなった。
けれども、そんなことをしたら包丁が汚れるからしなかった。
だから私は知らないフリをした。
でも、むしゃむしゃと小さい口で頑張っている姿は何故か愛嬌を感じた。
私はその子を捕まえ、食べる様子をもっと近くで観察することにした。
きゅうりを与えてみたり、トマトや人参の皮。
でも、1番食べたのはやっぱりキャベツだった。
その子はサナギになったまま旅立った。
あの可愛らしいフォルムをしている蝶にはなれなかった。
私はごめん。そう謝り、庭の隅にそれを埋めた。
翌年、キャベツ畑の周りを飛ぶモンシロチョウが目に入った。
なぜか、自然と涙が出た。
人間は想像豊かだ。
明日世界が無くなるとしたら何を願う。
「世界がなくなりませんように」
「今日をいつも以上に幸せに過ごせますように」
「亡くなったあの人に出会えますように」
「全ての人が最後、幸せな気持ちになれますように」
それとも、
「世界が地獄化しますように」
「自分以外全ての人が不幸になりますように」
「全員地球が消える前に消えますように」
「自暴自棄になり、何もかも荒れ果て、混沌の渦になり、殺し、殺し合い、そして……世界がなくなりませんように」
そこで、猫や犬、野生動物に同じ質問をしたらどう返ってくるだろう。
たまに覚えてる人間以外の生物もいるだろうが、ほとんどの生物は1時間もしていたらなんの質問をされたか、そもそも、明日が無くなることも忘れるだろう。
だが、動物は危険察知は極めて鋭い。
恐らく動物たちは暴れ回り、混乱し、自分が生きようと必死になるだろう。
きっと、本当に明日世界が無くなるとしたらそれらと同じ動物である人間も最終的にはこうなるだろう。
『死にたくない』
こう思うだろう。
そして、どういう終わりになるかなど、想像ができない。
溺死になるのか、窒息死になるのか、それとも焼死?
あぁ、もしかしたら衝撃死かもれないな。
なら、僕はこう願おう。
“楽に死ねますように。”
どうせ死ぬなら、何も痛みを感じず死にたいものだ。
ただ、僕が最も願っていることは──
この話が嘘でありますように。
なんだけどね。