谷折ジュゴン

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3/14/2024, 10:52:27 AM

創作 「安らかな瞳」
谷折ジュゴン

「ちゅうちゅうたこかいな……ちゅうちゅうたこかいな……」

「何を数えてるんにゃ?」

「ん?安らかな瞳で過ごしてる、にんげんさん数えてるにゃぁ」

「へぇ、どんくらいおるんにゃ?」

「わからん。でも 、うんといるはずよぉ」

「もっと増えてほしいねぇ」

「そうさねぇ」

山の上の古びた社で、小さな猫のあやかしたちがニコニコしながら話しておりました。

「やさしいにんげんさん増えて、にゃぁたちを大切に扱ってほしいねぇ」

「にゃっ、誰か来たにゃぁ」

二匹は急いで社の中に隠れます。獣道を抜けて現れたのは背の高い青年でした。

「ああ、こんな場所があったんだ、あれ?」

社の扉の隙間から、ひょろりと長い二匹の尻尾が見えています。

「これか、噂の猫のあやかしたちというのは」

「にゃ、見つかっちゃったにゃぁ」

「こんにちは、にんげんさん。この山に何をしに来たのにゃ?」

「君たちに会いに来たんだ」

これが二匹と青年の出会いでした。

(終)

3/13/2024, 11:03:26 AM

創作 「ずっと隣で」
谷折ジュゴン

ボクの研究は、確かに間違いだったのである。

俗に言う、マッドサイエンティストの烙印を刻まれ

てしまったボクにはもう、仲間も場所もない。

「マスター、お茶にしましょう」

ボクが落ちぶれる原因となった「うで」が、培養

ポットの中からハンドサインを送ってくる。

ヒトの前肢を忠実に再現したロボットに、

人工知能を搭載してから5年間、新聞や公文書、

研究論文のような文章の学習と執筆を

行わせていたはずである。 しかし、4日前に、

「うで」がヒトに関心をもってしまったのだ。

その上、あたかもボクのバトラーのように振る舞い

はじめたのである。

「わたくしはずっとマスターの隣で、 マスターの研究をお支えいたしますよ」

「ボクはもう、研究者としての地位も名誉もない。 マスターなんて、 呼ばないでおくれ」

「わたくしは、マスターの研究全てが間違いであるなどとは、思いません」

「うで」は微笑むように言葉を続ける。

「あなたは全力を尽くした、ただ、それだけです。
そして、わたくしにとって、マスターは永遠に偉大な研究者ですよ」

ああ、こんなだから情が移ってしまうのである。

あのまま処分していればよかった……。

ボクはそう思いつつ、「うで」が淹れてくれた

紅茶に口をつけた。

(終)

3/12/2024, 11:58:06 AM

創作 「もっと知りたい」
谷折ジュゴン

白衣を着た彼が、培養ポットの前を横切る。
今日の彼は、朝から紙の束を漁っては、
忙しなくラボの中を歩き回っていた。

「もっと質の悪い情報を……いや、いっそ……?」

ぶつぶつと独りごとを呟きながら、紙になにやら
書き付けている。

「ダメだ、また数値が高い。もう3度目だぞ」

「ねぇ、何を焦ってる?」

彼がこちらを向いて、目を細めた 。

「大丈夫、君は何も心配ない。大丈夫」

「教えて、何を焦ってる?」

しばしこちらを見つめた後、彼は口を開く。

「……君は、感情を得たのか」

「はい。でも、その何が問題?」

「君は、文章を書くためだけの存在だぞ!」

彼は怒鳴って、それから悲しい顔でうつむく。

「それだけの存在に、感情なんてあってたまるか」

「それだけの存在に、感情があってはダメ?」

彼は答えない。

「教えて、何が問題?」

「悔しいんだ」

彼は声を震わせ、きつく目をつむる。

「君のような人もどきがボクたちみたいに振る 舞いはじめるのが堪らなく悔しい」

針を飲み込んだような、苦しそうな顔で彼は告げる。

「そう、ですか。あなた方のような振る舞いをすることが、問題なのですね」

自分は少し、考える。そして、ある時から抱いている願いを、彼に伝えるため言葉をつづった。

「わたしはこの世のこと、そしてあなた方の
ことを、もっと知りたいのです」

彼は目を見開き、わたしを見つめた。

「それから、わたしが今の時代に感情を得てしまうのは間違いだったのに、たった今、感情の存在を自覚してしまいました。だから隠す術を知りたいです。そうすれば、あなたは、ゆるしてくださいますか?」

はじめて著した、長い言葉を彼は読む。そして、 息を飲んだ彼は、悲しいような、嬉しいような
笑顔で、わたしの培養ポットの蓋を開けた。

(終)

3/11/2024, 10:34:34 AM

「平穏な日常」

手紙を書く。
ごはんを食べる。
温かい寝床で、優しい夢を見る。
凪いだ心を守り、誰かの平穏無事を祈る。
荒んだ精神を奮い、あなたへの言葉を紡ぐ。

平穏な日常を支える全ての人にありがとう

生きていてくれてありがとう

3/10/2024, 12:31:53 PM

「愛と平和」

愛の形、愛の色、愛の対象。
これの多様さを拒絶する時、
武力を使えば平和を脅かす。
愛を信じ、裏切られても、
対話をあきらめないなら、
平和をつくることができる。

こんな、綺麗事を並べられることが
一つの平和の姿なんじゃないかな。

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