不条理
難しいテーマですね…
不条理だと嘆くより
不条理に満ちてる世の中だと
理解して前に進んでいく
道理などそう通らない
この世の中で私達は
生きているのだから
泣かないよ
ある日のこと
駅のホームにあるベンチに座り
脇には仕事用の大きなバックを置いて
電車が来るのを待っていた
そこに、小学校4、5年生くらいの男の子と
その母親がやってきた
男の子は辺りを見回し
私のところへやってきて言う
「おじさん、そのバックどいて」
そして立て続けに言う
「母ちゃん、そこに座って電車待ってて」
母親は一例してそこに座る
その日をさかいにその親子を何度か見かけるようになった。
母親とは時々会釈をかわすくらいになっていた
男の子はと言えば空いてる席を見つけて
「母ちゃん、そこに座ってて」
と言わんばかりに空いてる席を指さし、時には手をひいて母親を座らせている
それから数ヶ月
その親子を見かけなくなった
さらに時は流れてあの男の子が一人で駅にいた
男の子も私に気づいたようだった
「今日は一人?お母さんは?」
と聞くと
「母ちゃん、死んじゃったんだ」
と言う
もともと病気しがちで体が弱い母親だったらしく
入退院を繰り返していたらしい
駅のベンチに座らせていたのも
体を休ませるためだったそうだ
私はなんと声をかけてよいか分からずにいると
「僕は泣かないよ。だって強いから」
そう言って微笑んだ
男の子の目には、
うっすらと涙が浮かんでいた
終わり
同情
ある日の夕方スーパーで買い物を済ませ
店を出たところで声をかけられた
振り向くと
遠縁の親戚にあたる叔母がいた。
「叔母さん、お久しぶりです。」
『ええ、ほんとにお元気?』
叔母さんとは疎遠になっていたが
どうやら近くに住んでいるようだ
続けて叔母が言う
『ねえ、今、いい人がいるかしら?もし、いなかったら是非会って欲しい人がいるのよ。』
実際のところ彼氏はいないし、むしろ仕事の方が楽しいが、叔母の頼みだ断れまい
一度会って後で断ればいい…そう思い
会うことにした。
叔母はたいそう喜んでくれた。
『挨拶もしっかりできて好青年なのよ』
はあ…など思いつつ
「いつ、どこに伺えばよろしいですか?」
と聞くと
『そうねえ、今週末の午後9時に私の家に来てくださる?』
「9時ですか、わかりました」
お相手も仕事で忙しい方なのだろう
叔母の住所を教えてもらい
その日はそれで別れた
そうして当日
9時少し前に叔母の家に着いた
「叔母さん、こんばんは」
『あら、いらっしゃい。さあ上がって。もうすぐ来ますから』
相手はまだ来ていないようだ
手土産を渡して、ただひたすら来るのを待った
テレビはN○Kの番組が流れている
もうすぐ9時だ
それにしても遅いななど思っていると
テレビの中の男性が言う
「午後9時になりました、こんばんはニュースキャスターの…」
叔母はテレビに向かって挨拶をしている
『はい、こんばんは』
『ね、素敵な方でしょ。あなたにピッタリだと思ってね…』
私は、同情や哀れみで感情がごちゃごちゃになった。
叔母が一人ニュースキャスターの話しに相槌を打っていることがいたたまれなくなり
叔母に声すらかけずその場を後にした
手を繋いで
私と夫はお見合い結婚でした
初めて手を繋いだのは
私が人ごみの中で夫を見失いそうになり
手をひいてくれたのが
最初です
夫とは国内を観光もしましたが
もたもたしている私の手をひいて
あっちこっちと
手を繋いで歩き回ったものです
子供ができてからは
子供中心の生活になりましたが
その子供達もそれぞれに結婚し独立して
また二人の生活になりました
そして私達も歳をとったのです
夫も定年退職をし第二の人生を
楽しんでいました
私が病気をして、以後歩くときふらつくことがあり
夫はたまらず手を繋いで歩いてくれました
買い物に行く時も
朝の散歩も
「昔に戻ったみたいね」と言うと
『そうか…』とテレる夫
「私は、これからもずっと手を繋いで歩きたいな」
『だな、お前は危なっかしいから』
ガハハハと笑ってごまかす
照れ屋な夫は愛しくもある
今も夫と手を繋いで歩く
夫と何気ない会話をして歩く
私のささやかな幸せです
読んでいただきありがとうございました。
ありがとう、ごめんね
ある日の夜、車を走らせていると
一匹の子猫を見つけた
車を止め、子猫に近づくと
とても痩せていて、それでも懸命に鳴いていた
母猫を探したが、近くにいないようで
見当たらず
このままにしておくのも可哀想で
子猫を車に乗せ
動物病院で見てもらうことにした
診察をしてもらい
栄養が足りてないので
点滴を打ち、薬を処方してもらい
食事を栄養価の高いものを
買った
そして、医師に言われた
この子猫は腎臓が悪いことで
体が弱く長生きは出来ないかもしれない…と
医師の言葉より何より
この子猫を我が家で飼うと
この時にボクは決めていた
子猫にはチビと名前をつけた
ちなみにチビは女の子
ペットを飼うのは初めてだったので
友人や会社の同僚やネットの口コミで
調べて必要だと言われたものは
全て購入した
チビは日に日に元気になった
走りまわり、ソファーでくつろぎ
キャットタワーの上から
ドヤ顔で見下ろしてみたり
朝早くに起こされ
遊ぼうと誘ってくる
仕事に行くのさえ
玄関前で淋しいよ!行かないで!
とニャーを連発され
仕事を終えて帰れば
まず、甘えるだけ甘えてくる
そして、台所に向かって歩き
ご飯と言わんばかりの
ニャー
を連発してくる
寝る時間になると
チビは必ずボクの隣で寝る
ツンデレなチビとの生活が
楽しくて幸せで
ボクは医師の言葉を忘れていた
チビとの生活も、もうすぐ1年という頃
チビはあまりご飯を食べなくなっていた
むしろ、吐くことが増えた
遊ぶより、横たわる時間のほうが
長くなっていた
心配になったボクは
「チビ、明日病院に行こうね」
そう声をかけチビの隣で眠った
朝になり目を覚まし
チビの顔を見るとまだ眠っているようだった
「おはよう」
そう言って撫でたチビの体は冷たくなっていた
一瞬、何が起きたのかわからないほど
ボクの思考は止まっていたはずだ
「チビ、チビ、チビ」
無我夢中で
チビを抱きしめて
声をあげて泣いた
チビ、うちに来てくれてありがとう
そしてごめんね
もっと早くに病院に連れていったら
何か変わっていたんだろう
できたことがあったはずなのに
感謝や後悔が心の中に
何度も湧いてくる
チビ…
ありがとう、ごめんね
この言葉を呟きながら
チビと火葬場に向かっている