同情
ある日の夕方スーパーで買い物を済ませ
店を出たところで声をかけられた
振り向くと
遠縁の親戚にあたる叔母がいた。
「叔母さん、お久しぶりです。」
『ええ、ほんとにお元気?』
叔母さんとは疎遠になっていたが
どうやら近くに住んでいるようだ
続けて叔母が言う
『ねえ、今、いい人がいるかしら?もし、いなかったら是非会って欲しい人がいるのよ。』
実際のところ彼氏はいないし、むしろ仕事の方が楽しいが、叔母の頼みだ断れまい
一度会って後で断ればいい…そう思い
会うことにした。
叔母はたいそう喜んでくれた。
『挨拶もしっかりできて好青年なのよ』
はあ…など思いつつ
「いつ、どこに伺えばよろしいですか?」
と聞くと
『そうねえ、今週末の午後9時に私の家に来てくださる?』
「9時ですか、わかりました」
お相手も仕事で忙しい方なのだろう
叔母の住所を教えてもらい
その日はそれで別れた
そうして当日
9時少し前に叔母の家に着いた
「叔母さん、こんばんは」
『あら、いらっしゃい。さあ上がって。もうすぐ来ますから』
相手はまだ来ていないようだ
手土産を渡して、ただひたすら来るのを待った
テレビはN○Kの番組が流れている
もうすぐ9時だ
それにしても遅いななど思っていると
テレビの中の男性が言う
「午後9時になりました、こんばんはニュースキャスターの…」
叔母はテレビに向かって挨拶をしている
『はい、こんばんは』
『ね、素敵な方でしょ。あなたにピッタリだと思ってね…』
私は、同情や哀れみで感情がごちゃごちゃになった。
叔母が一人ニュースキャスターの話しに相槌を打っていることがいたたまれなくなり
叔母に声すらかけずその場を後にした
2/21/2024, 2:46:55 AM