ストック1

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9/10/2025, 11:38:38 AM

さて、君は一旦死んでしまったわけだが、死者は別の世界に転生する決まりなんだ
転生世界は通常こちらで勝手に決めることになってる
しかしね
今ならキャンペーンで好きな世界へ転生できるのだよ
しかも記憶を保ったまま
今死んでよかったな
さて、そこに三つの世界があるだろう
Red, Green, Blueだ
好きな世界を選びたまえ
その前にどんな世界か紹介しよう
いずれも君がいた世界ととても似ているから、混乱することはないはずだ
まずRed
この世界はなかなか生きやすい世界だ
特徴としては、君と気の合う鎌田という人がいる
他にも山下や、小野田がいる
次にGreen
この世界もけっこう生きやすい世界だ
こちらの特徴は、君と気の合う村本という人がいる
他にも、木原や牧がいる
最後のBlue
この世界ももちろん生きやすい世界だ
特徴を言うと、君と気の合う鎌田と山下と牧がいる
よく考えて三つからひとつを選ぶといい
と、言いたいところだが
なんと、キャンペーン対象者の中から抽選で一名に全ての世界を行き来できる権利を与えることになっており、君が選ばれた!
おめでとう!
実は世界を選ばなくていい!
サプライズだ!
当選者へのおまけとして、さらに黄瀬版という名の世界への転生権も付けよう
この世界は、Red, Green, Blueとほぼ同じ世界だが、黄瀬という、他の世界では赤の他人だが、この世界では無二の親友になる人物がいる
さらに、君と気の合う村本と木原と小野田もいるぞ
君は四つの世界で四つの人生を好きな時に好きなように生きられるのだ!
さあ、存分に四重の人生を楽しみたまえ!
きっと明るい未来が待っている!
なお、四つの世界の住人は交換したりはできないから、そこは注意してくれ

9/9/2025, 11:24:35 AM

楽しみだ
ものすごーく楽しみだ
あれを破壊された時、人々はどのような反応をするのだろうねぇ
前からぶち壊してみたかったんだ
台無しにしてみたかったんだ
うまくいけば、きっと素晴らしい芸術が完成するだろう
骨の折れることだけどね
あぁ、興奮してきたぞ
皆が信じているものが、あっけなく崩れていく様
想像するだけでゾクゾクするじゃないか
そして、破壊という名の芸術のあとにも、また新たな芸術が誕生するんだよ
美しいものを見ていた人々の目には、痛みを伴うものが映り始める
そこで皆は現実に引き戻され、打ちのめされるわけだ
安心しきった夢の中から無理やり引きずり出されて、厳しい現実を思い知らされるなんて、最高の芸術だと思わないかい?
計画はすでに進んでいる
もう止められる者なんてどこにもいないんだよ
方法は企業秘密さ
芸術の技法は広められるべきだけど、これはそういうタイプの芸術じゃないからね
僕の計画は完璧さ
これで、都合のいい情報だけに浸らせてもらえる時間は終わる
次に不都合な現実が皆に襲い掛かってくるんだ
ほらほら、もうすぐだ
もうすぐフィルターバブルをバチンと割って、人々が見たくもない現実を見せてあげるよ!
アハハハハハハハ!!

9/8/2025, 11:08:23 AM

私は誇り高き龍
空を翔ける姿は、人々に畏敬の念を抱かせ、口からは炎を吐くことができる
多くの人が私のことを崇め、私もそれに応えようと様々なことをした
龍として世のために力を振るうのはとてもやりがいがあり、そして楽しいものだ
私は自分が人々を助ける力を持つ龍であることが嬉しかった
だが……
人間界で龍に関する研究が進んでいったらしい
そこで、衝撃の事実が発覚した
私は龍ではなく、西の地でドラゴンと呼ばれる、似て非なる存在だったのだ
しかも、ドラゴンはその地で災いと恐怖の象徴であるという
神聖であるとされる龍とは真逆ではないか
たしかに、おかしさは感じていた
私には毛がない
ヒゲもない
体は細長くない
手に玉も持っていない
そもそも、四つ足だ
大きな翼も生えている
そして、口から炎を吐く
全く姿が違うのだ
だが、私はその姿の違いを見てみぬふりをしてきた
それを口にしてしまえば、なにかが壊れる気がしたからだ
私はどうすればいいのだろう
答えは浮かぶが、決心がつかない
私は踏ん切りをつけるため、龍の長のもとへ向かった
龍の長はいつにも増して真剣な顔をしながら、私の出生について話してくれた

「昔、わしが海から流れ着いた大きな卵を見つけた
卵から龍に似た、とても強い力を感じたわしは、その卵を孵すことにしたのだ
その卵から孵ったのがお前だ
わしも、お前のことはどこかの地から来た種類の違う龍なのだろうと信じていたが……
ドラゴンという存在だったとは、わしにとっても予想外だ」

「私は、龍ではなくドラゴン
龍の仲間になれなくて、とても悲しいです
私は、この地を去るべきなのでしょうか」

いや、聞くまでもない
私は災いを呼ぶ存在だ
そんな存在にいられては、人々も不安だろう
だが、長は意外な言葉を口にした

「それを決めるのは、お前だ
ドラゴンとして去るか、龍として人々のために生きるか
ドラゴンとして去る場合、どこへ向かうかが問題だな
龍として生きるならば、どうやってお前が善良であるかを、人々に信じてもらうかが課題だ
今までのお前の生き様を考えれば、そう難しいことではないだろうがな
……少なくともわしは、姿は違えどお前のことを正真正銘の龍だと思っているぞ」

まさか、留まる選択肢も提示されるとは
私は、話が済んだらすぐにでも去るつもりだったのに

「この地に留まって、いいのでしょうか?」

「留まりたいなら、留まればよい
障壁があるならば、仲間として力を貸そう」

長は優しい声で告げる
ならば私は、この地で人々のために生きていきたい
今までのように

「答えは決まったようだな」

長だけでなく龍の仲間たちも、私を今までどおり受け入れてくれた
そして……
私がドラゴンであることに恐れを抱く地域もいくつかあったが、私を変わらず崇めてくれた人々の根気強い活動により、徐々に態度を変えていく
私は前と同じく、堂々と人々のために力を振るえるようになったのだ
私の姿は恐ろしいドラゴンだ
だが、この魂は誇り高き龍である
それはこの先も変わることはない
私は龍として、この地に生き様を刻んでいく
今までも、そしてこれからも

9/7/2025, 11:19:36 AM

自称バカの君よ
今まで暑かったからという動機はわかる
だからといって、傘も差さず気持ちよさそうに雨に打たれ続けるのはどうなのか
バカは風邪引かないと君は言うが、風邪というのは頭の良さではなく体の丈夫さで発症が決まるので、どうか傘を差してほしい
それと、君はバカだったかな?
私の見てきた君は、大げさでなく天才的だったと思うが……

「バカと天才は紙一重ですよ」

そういう言葉はある
あるけれども、君のことをバカという人間がいたら、私はその人のことがとても心配になる
誰の目から見ても、君はわかりやすい天才だから
紙一重などにはならない、ひたすら天才なだけの君だ
とはいえ、風邪も恐れず雨に打たれ続ける今現在の君はまあ、バカと言えなくもない

「私は生まれてこのかた風邪を引いた覚えがないんです
気持ちのいい雨に打たれて、風邪を引いてみるのもいいんじゃないでしょうか?」

バカだなあ
これはバカだ
ひたすら天才という私の言葉は撤回せざるを得ない
好奇心から風邪を引く人間がどこの世界にいるのだろう
いや、天才だからこそ、好奇心が抑えきれずに、突っ走ってしまうのかもしれない
やはり君の言う通り、バカと天才は紙一重だったか

「これで本当に風邪を引いたら本物のバカですね」

そう思うのならやめればいいのに
降り続ける強い雨と君の行為に付き合わされる私の身にもなってほしい
君は先に帰っていいというだろうけど、そういうわけにはいかないんだよ
そろそろ帰ろう

「……もう少し、雨に打たれていたいです」

急に私に背中を向けて、そう言った君の声は震えていた
やっぱり君は、まだ……
雨に打たれるのは、暑さの反動でも、風邪への好奇心でもないね
本当の理由を口にするほど私は無粋ではないから、何も言わないけれども
そういうことなら、私も待っていようじゃないか
そして、私は何にも気がついていないフリをしよう
君は人前で涙を流すことを極端に嫌うからね
そうだな
待つ口実に、スマホを使う用事を思い出したということで、適当にスマホをいじるとするよ
私のスマホの用事が終わったら、今度こそ帰ろう、なんて言って待ってる
雨の中なら、雨粒か涙かなんてわからないだろう
誰だろうと、天才だろうと、親友が遠くへ引っ越してしまったら寂しいよ
連絡をとれても、一緒に過ごしたりはできないものな
泣きたい時は、泣くのが一番だよ
でも、たまには弱みを見せて、心の内をぶちまけてほしいな
私は君のお姉さん的立ち位置のつもりだからさ

9/6/2025, 11:24:02 AM

深夜の誰もいない教室に、それは現れる
過去にこの学校に在籍しており、病気で若くして亡くなった少年
生徒の間で噂される、学校十三不思議のうちのひとつ
No.8、絵師霊
七不思議では足りないため、数字が増えた十三不思議の中にありながら、彼が恐れられることはなく、むしろ生徒たちから愛されている
彼の姿を見たものはいないのが、それでも人気なのだ
その理由は、彼の生前からの夢と未練によって引き起こされる怪奇現象にある
彼は漫画家になりたかった
小さい頃から様々な漫画を読み、親しみ、感動してきた彼が、その夢を持つのもごく自然なこと
その夢を忘れられず、この世に残り続ける彼は、チョークで黒板に漫画を書き始めたのだ
その漫画が生徒に評判で、絵師霊という名で呼ばれるようになった
漫画はすべて写真として保存されている
絵師霊の出没する教室には、漫画を愛する彼のため様々な漫画が供えられており、それらは絵師霊を楽しませるだけではない
新たなアイディアの源泉でもあった
絵師霊は嬉しくて、夢中で毎晩様々な漫画を描き、生徒たちを楽しませる
そんな中で、噂を聞きつけた会社から、彼にプロとして連載する話が舞い込んでくる
絵師霊は初めて、人前に姿を表した
その姿は、どこにでもいる普通の少年だ
会社側は、学校への配慮と、幽霊というプロフィールではなく、自身の実力で頑張れるよう、絵師霊の正体を隠した上で連載したいと言い、絵師霊はそれが自分の望みでもあるため、快諾した
絵師霊は地縛霊ではない
単に、漫画を大勢に見せたかったから、慣れ親しんだ学校にいたのだ
亡くなった場所が学校ではなく病院なのがその証拠
だから絵師霊は連載のため、一時的に学校の外へ出た
生徒たちは秘密を守り、彼を応援する
打ち切りになる不安もあったが、絵師霊は前向きに、ダメでもまた生徒たちが自分の漫画を楽しんでくれるさと、明るい気持ちで連載に取り掛かった
絵師霊の連載は好評だった
月刊で連載される漫画を描く傍ら、時々息抜きで学校へ行き、以前のような漫画を黒板に描いたりもする
そうして数年の連載を続け、ついに漫画は最終回を迎えた
学校の卒業生や在校生は、夢を叶えた絵師霊が満足して消えてしまうのではないか
そう不安になりながらも、彼が満足できたならそれでいいと、納得もしている
だから、盛大に見送ろうと彼を学校に迎えたのだ
絵師霊は消えなかった
彼の漫画への探究心はとどまるところを知らない
夢を叶えてなお、彼は学校で夜な夜な漫画を描きながら、次の連載に向けて構想を練り始めたのだ
絵師霊の漫画家としての道は、まだ始まったばかりだ

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