私は誇り高き龍
空を翔ける姿は、人々に畏敬の念を抱かせ、口からは炎を吐くことができる
多くの人が私のことを崇め、私もそれに応えようと様々なことをした
龍として世のために力を振るうのはとてもやりがいがあり、そして楽しいものだ
私は自分が人々を助ける力を持つ龍であることが嬉しかった
だが……
人間界で龍に関する研究が進んでいったらしい
そこで、衝撃の事実が発覚した
私は龍ではなく、西の地でドラゴンと呼ばれる、似て非なる存在だったのだ
しかも、ドラゴンはその地で災いと恐怖の象徴であるという
神聖であるとされる龍とは真逆ではないか
たしかに、おかしさは感じていた
私には毛がない
ヒゲもない
体は細長くない
手に玉も持っていない
そもそも、四つ足だ
大きな翼も生えている
そして、口から炎を吐く
全く姿が違うのだ
だが、私はその姿の違いを見てみぬふりをしてきた
それを口にしてしまえば、なにかが壊れる気がしたからだ
私はどうすればいいのだろう
答えは浮かぶが、決心がつかない
私は踏ん切りをつけるため、龍の長のもとへ向かった
龍の長はいつにも増して真剣な顔をしながら、私の出生について話してくれた
「昔、わしが海から流れ着いた大きな卵を見つけた
卵から龍に似た、とても強い力を感じたわしは、その卵を孵すことにしたのだ
その卵から孵ったのがお前だ
わしも、お前のことはどこかの地から来た種類の違う龍なのだろうと信じていたが……
ドラゴンという存在だったとは、わしにとっても予想外だ」
「私は、龍ではなくドラゴン
龍の仲間になれなくて、とても悲しいです
私は、この地を去るべきなのでしょうか」
いや、聞くまでもない
私は災いを呼ぶ存在だ
そんな存在にいられては、人々も不安だろう
だが、長は意外な言葉を口にした
「それを決めるのは、お前だ
ドラゴンとして去るか、龍として人々のために生きるか
ドラゴンとして去る場合、どこへ向かうかが問題だな
龍として生きるならば、どうやってお前が善良であるかを、人々に信じてもらうかが課題だ
今までのお前の生き様を考えれば、そう難しいことではないだろうがな
……少なくともわしは、姿は違えどお前のことを正真正銘の龍だと思っているぞ」
まさか、留まる選択肢も提示されるとは
私は、話が済んだらすぐにでも去るつもりだったのに
「この地に留まって、いいのでしょうか?」
「留まりたいなら、留まればよい
障壁があるならば、仲間として力を貸そう」
長は優しい声で告げる
ならば私は、この地で人々のために生きていきたい
今までのように
「答えは決まったようだな」
長だけでなく龍の仲間たちも、私を今までどおり受け入れてくれた
そして……
私がドラゴンであることに恐れを抱く地域もいくつかあったが、私を変わらず崇めてくれた人々の根気強い活動により、徐々に態度を変えていく
私は前と同じく、堂々と人々のために力を振るえるようになったのだ
私の姿は恐ろしいドラゴンだ
だが、この魂は誇り高き龍である
それはこの先も変わることはない
私は龍として、この地に生き様を刻んでいく
今までも、そしてこれからも
9/8/2025, 11:08:23 AM