自称バカの君よ
今まで暑かったからという動機はわかる
だからといって、傘も差さず気持ちよさそうに雨に打たれ続けるのはどうなのか
バカは風邪引かないと君は言うが、風邪というのは頭の良さではなく体の丈夫さで発症が決まるので、どうか傘を差してほしい
それと、君はバカだったかな?
私の見てきた君は、大げさでなく天才的だったと思うが……
「バカと天才は紙一重ですよ」
そういう言葉はある
あるけれども、君のことをバカという人間がいたら、私はその人のことがとても心配になる
誰の目から見ても、君はわかりやすい天才だから
紙一重などにはならない、ひたすら天才なだけの君だ
とはいえ、風邪も恐れず雨に打たれ続ける今現在の君はまあ、バカと言えなくもない
「私は生まれてこのかた風邪を引いた覚えがないんです
気持ちのいい雨に打たれて、風邪を引いてみるのもいいんじゃないでしょうか?」
バカだなあ
これはバカだ
ひたすら天才という私の言葉は撤回せざるを得ない
好奇心から風邪を引く人間がどこの世界にいるのだろう
いや、天才だからこそ、好奇心が抑えきれずに、突っ走ってしまうのかもしれない
やはり君の言う通り、バカと天才は紙一重だったか
「これで本当に風邪を引いたら本物のバカですね」
そう思うのならやめればいいのに
降り続ける強い雨と君の行為に付き合わされる私の身にもなってほしい
君は先に帰っていいというだろうけど、そういうわけにはいかないんだよ
そろそろ帰ろう
「……もう少し、雨に打たれていたいです」
急に私に背中を向けて、そう言った君の声は震えていた
やっぱり君は、まだ……
雨に打たれるのは、暑さの反動でも、風邪への好奇心でもないね
本当の理由を口にするほど私は無粋ではないから、何も言わないけれども
そういうことなら、私も待っていようじゃないか
そして、私は何にも気がついていないフリをしよう
君は人前で涙を流すことを極端に嫌うからね
そうだな
待つ口実に、スマホを使う用事を思い出したということで、適当にスマホをいじるとするよ
私のスマホの用事が終わったら、今度こそ帰ろう、なんて言って待ってる
雨の中なら、雨粒か涙かなんてわからないだろう
誰だろうと、天才だろうと、親友が遠くへ引っ越してしまったら寂しいよ
連絡をとれても、一緒に過ごしたりはできないものな
泣きたい時は、泣くのが一番だよ
でも、たまには弱みを見せて、心の内をぶちまけてほしいな
私は君のお姉さん的立ち位置のつもりだからさ
9/7/2025, 11:19:36 AM