ストック1

Open App
7/3/2025, 11:14:01 AM

私は確かに遠くへ行きたいと流れ星に願った
それは間違いない
もう生活に疲れ果てて、全て捨てて誰も知らない場所に行きたいと思ったのは認める
けど、これはおかしくないかな?
最初タイムリープしたかと思ったんだよ
流れ星に願った直後に意識が遠のいて、気がついたら十年ちょっと前の小学生時代の実家で目が覚めたから
でもタイムリープじゃなかった
じゃあなんなのか、って話だけど、それはとりあえず置いといて
やった、これで人生やり直せる、とかちょっと思ったけど、よく考えたら今まで築き上げてきたものも消滅したじゃん!とすぐに絶望したよね
私は、そうは言ってもそこまで追い詰められてなかったんだよ
疲れが溜まって弱気になってただけでね
だから、時間的に遠くへ飛ばされるなんて本位じゃないわけ
まあでも、それならそれでしかたないか、いい感じにやり直すか、と思ったんだけど
さっきも言った通り、タイムリープじゃないんだこれが
私の名字、柳瀬なのにさ
表札見たらなんて書いてあったかって
瀬能だって
下の名前は同じだった
……と思いきや、ノート見たら私の名前、実優が水優なってたよ
読みは同じで漢字が違う
柳瀬 実優が瀬能 水優
つまり、パラレルワールド
もとの瀬能 水優がどこに行っちゃったのか、そもそもこの世界が今始まったのか
元の世界はどうなってるのか
それはわからないけど、あまりにも遠すぎるし、これ絶対帰れないよね
私、疲れてたけど、元の世界に愛着はあったのにな
まあ、でもこうなったからには、スパッと諦めて新しい生活を始める方がいいかもね
もしかしたら、全部リセットして新しい世界で人生をやり直したほうが、幸せになれるってことなんじゃないの?
そうでも思ってないとやってられないよね
前の世界より幸せになってやるぞ!
……ん?
よく考えたら私、小学生なんだよね
まずい、子供らしい態度とかちゃんとできるかな?
うまくやらないと周りから浮きそうだよ
そもそも、パラレルワールドだから自分がどういう状況かわからないし
家でどう過ごしてることになってる?
交友関係は?
あー、めんどくさ!
初っ端から波乱の予感!
よし、こうなったら様子を見つつ、記憶喪失だってことにしよう!
それがいい!
ま、なんとかなるでしょ

7/2/2025, 10:40:24 AM

たまたま立ち寄った店に、マジッククリスタルという商品が売っていた
上下に先端のあるクリスタルの結晶のような見た目の、半透明なプラスチック製品だ
これはまた懐かしいものが売られてるな
色も何色かあって、それぞれの属性を表してるんだよな
昔流行ったけど、まだ生産してたとはね
子供の頃、よくこれでごっこ遊びみたいなことをしてたな
自分は魔道士で、普通はひとつの属性しか使えないんだけど、クリスタルに選ばれた存在だから全属性使える、みたいな設定で
魔法の名前や効果、呪文詠唱なんかも考えて、紙に書いてたっけな
もう具体的な内容も覚えてないけど
あれはいつ頃だったかな
たしか、小学校中学年くらいにやってたのかな
で、高学年に入ってすぐやめたんだった
そのあと中学に入ってから、書いてた頃の紙を発見して、それをもとに内容のレベルを上げて、また色々と設定を作ったんだよね
その一環で自分の設定を、かつて勇者に倒されて異世界から転生してきた魔王とかに変えて、クリスタルの力で再び魔法が使えるようになった、とかにして……
いや、この先は思い出さないほうがいいな
なんだか嫌な、もとい痛い予感がする
それにしても、このマジッククリスタル
世界観設定が加えられて、クリスタル以外にも、ファンタジー的な商品を展開するシリーズになってるんだな
うわぁ、それ俺が子供の頃にやってほしかったな
三頭身の勇者や魔王のおもちゃとか、魔道書、ドラゴンなんかもあるのか
で、商品はキャラやアイテムごとに世界設定が書いてある、と
へぇ、その設定をもとに今度アニメ化もされるんだ
これはちょっと見たいぞ
大きなシリーズに成長していて、なんか嬉しいな
久々にどれか買ってみよう

7/1/2025, 11:28:30 AM

夏の匂いか
なにがあるかな
スイカのほどよく甘い匂い
童心のワクワクするプールの匂い
海の潮の匂い
花火の匂い
うーん、魅力的な匂いたちだね
他にどんなものがあるだろう
とか考えてたのに
君はなんてことを言うのか

「夏の臭いっていったら、この前炊いたご飯腐らせちゃってさ
あれは臭かったね」

臭いじゃなくて匂いって言ってるだろ
僕がせっかくポジティブな匂いの話をしようとしてるのに、よりによって腐ったご飯の話って
確かに夏は食品が腐りやすいけどさあ
僕もうっかり冷蔵庫に移すの忘れてひどい目にあったよ
でもそうじゃないじゃん
いい匂いの話じゃん

「あとさ、夏は汗かくから体臭が気になるよね
なるべく自分を汗臭くしたくないなあ」

うん、だからそういう話じゃないんだよ
いい匂いなんだって、僕が話そうとしてるのは
なんで臭い方に持っていこうとするの?
僕もなるべく体が臭わないように、外に出るときは対策するけどさ

「そういえば、久々に冷房つけたらかび臭くってさあ」

まだ続ける?
ああもう、気持ちのいい話をしようと思ったのに、なんなんだよ!
わかったよ、もういいよ、夏の臭いの話で!
夏の臭いでしょ?
あれだよ、あのー、ええと
あぁー、なんか夏の嫌な臭いの方はなんにも思いつかない!
なんかムカつくな!

6/30/2025, 11:39:18 AM

友人がふと、呟いた

「改名したい」

彼は名前を山田 創人といい、どう考えてもその名前になんの不都合もないだろうから、改名なんてできないのではないか?
確か、改名にはそれなりの理由が必要なはず

「知っての通り、僕は創天っていう神様を考えて、後付で名前の由来にしたわけじゃん?」

なんだそれ、初めて知ったぞ
後付の由来ってなんだよ
名付け親が決めた時の理由が由来だろう
それ以外は由来とは言わない

「それで最近、炎連っていう神様を考えてさあ
そっちのデザインが渾身の出来だったんだよ」

そういえば創人は絵がうまかった
今度見せてもらいたいな
で、その神を考えたからなんなんだ?

「炎連を気に入っちゃってさ
鞍替えしたくなったわけ」

なるほど、創天由来(という設定)の名前だったけど、炎連のほうを気に入ったから、そっち由来の名前に変えたいと

「創天から炎連に鞍替えして、名前を炎人にしたいと思ったんだよね」

まあ無理だな
その理由じゃ通らないよ
というか、なんでそんなことをしようと思ったんだ?
そもそも創人の名前の由来は、自分の道を創り出す人になってほしい、だろ
ところでなんで俺は創人の名前の由来を知ってるんだっけ
まあどうでもいいや

「僕はさ、前から改名に興味があってね
しかもただの改名じゃないんだよ
壮大な改名に憧れてたんだ」

壮大な改名?
神の鞍替えのことか?

「知ってる?
ツタンカーメンは始め、ツタンカーメンじゃなかったんだよ
改名したんだ」

へえ
ツタンカーメンって改名してたのか

「僕も詳しくは知らないけど、ツタンカーメンはより正確にはトゥト・アンク・アメンなんだけどね、アメンはアメン神のことなんだよ
けど、ツタンカーメンの父親がアテン神以外は認めないって言ってたらしくてね
元々はトゥト・アンク・アテンって名前だったんだ
言語を変えれば、ツタンカーテンだね
でも父親の死後、多神教に戻ってアメン神が最高神に返り咲いて、アメンになったらしいんだよ」

なるほど
つまり、神を鞍替えして、ツタンカーテンはツタンカーメンになったのか
鞍替えって言い方が正しいかは知らないけど

「それを知って、これだ!って思ったんだよね」

なんでこれだ!って思っちゃったんだろうな
しかも創人の由来は本来の由来とは違う、完全な後付だろ

「だからね、僕は改名するよ!
山田 創人は山田 炎人になる!」

なんか決意してるけど、無理だろうなあ
ツタンカーメンみたいにはいかないよ
しかも後付だもん

6/29/2025, 12:30:10 PM

我々の敵は天体だった
青く深く、我らの地球にうり二つの星
その星、彩蒼は意思を持っていた
彩蒼は生物だったのだ
突如生まれた彩蒼は、栄養を必要としており、地球は栄養が豊富らしい
つまり、彩蒼は食事を摂ろうとしている
彩蒼は宇宙のバグのようなものだという
本来現れるはずのないものだが、外部による何らかのきっかけで誕生してしまった
そのきっかけというのは、宇宙外のことであるため、詳しくは観測不能でわからないようだが
我々に彩蒼のことを教えてくれた存在がいた
簡単に言えばそれは宇宙人で、遥か彼方の星の古代文明で神と崇められた種族だ
彼らは自らを、祖羅と名乗った
二十万年前から永き眠りについていたが、彩蒼の誕生を感知し、目覚めたらしい
彩蒼は自分たちの星にとっても危険な存在であり、早々になんとかしたい、とのことだった
事態の解決への道はひとつ
祖羅が技術の粋を結集して作り出したパワードスーツのようなものに身を包み、適性者である私が彩蒼のサッカーボールほどのコアを星から抜くこと
なんの因果か、地球の命運を託されることとなってしまった
適性者は他にもたくさんいるが、彩蒼へ突入できるのは、もっとも適性の高い私ひとり
なぜなら、二人以上での侵入は彩蒼に存在を気づかれ、宇宙へ放出されるからだ
私は覚悟を決めて、祖羅によって彩蒼のコア近くの深海にテレポートする
コアはすぐに見つかった
蒼い光を放ち、美しく、宝石のように輝いている
コアに触れ、コアごと地球にテレポートすれば、任務は完了
だが……
非常に動きづらい
コアが敵に自分が狙われぬよう、海の成分を動きづらいものに変えているようだ
コア自体は、二人以上がいる気配を感じることしかできないので、ひとりである私の存在がバレることはない
しかし、ながく居続ければいつかはバレる
私は静かにもがきながら、コアへ近づいていく
時間はあまりない
焦りと動きづらい苦しみに急かされながら、なんとかコアにたどり着き、触れる
すると、彩蒼の思念が流れ込んできた
私の精神が悲鳴を上げる
恐ろしいほどの孤独感
彩蒼の感じているそれが私に襲い掛かってきたのだ
彩蒼が彩蒼になる前からの、私には理解できない宇宙外の記憶と、仲間を欲する心
それと同時に私は知った
彩蒼がなぜ生まれたか、彩蒼になる前に何があったかはわからないが、彩蒼の孤独は癒やさなければならない
彩蒼は絶対に殺すことはできない
コアを抜いても、孤独感により再び星が形成され、空腹により地球は食われる
そして、コアの破壊は不可能
我々がするべきことは、コアを孤独から救うことだ
私は思念に耐えながら、コアと共に地球へ帰還した
私の彩蒼でのできごと聞いた祖羅は驚きもせず、淡々とコアを謎の技術で改造し始めた
驚かないことに驚いたが、そういう種族なのだろう
しかし祖羅への信頼はあるが、やはり地球の命運がかかっているので、心配だ
だが私の心配をよそに、改造はすぐ終わった
コアは人間の子供になっていた
祖羅は言う
地球で人として暮せば、孤独とは無縁
彩蒼を改造する際、人間としての思考を埋め込んだ
星を形成する力も封じた
彩蒼は普通の人間へと生まれ変わった、と
私はホッとした
地球が救われたからだけではない
彩蒼が抱えていた孤独感を拭えるだろうからだ
彩蒼はその後、蒼と改めて名付けられ、私が育てることとなった
祖羅も数名が残り、協力してくれている
こうして、地球を襲った未曾有の危機は、思ってもいなかった形で防がれた
私が本当に頑張らなければならないのは、これからなのだろうな
だが祖羅の協力もある
大丈夫だろう

Next