ストック1

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我々の敵は天体だった
青く深く、我らの地球にうり二つの星
その星、彩蒼は意思を持っていた
彩蒼は生物だったのだ
突如生まれた彩蒼は、栄養を必要としており、地球は栄養が豊富らしい
つまり、彩蒼は食事を摂ろうとしている
彩蒼は宇宙のバグのようなものだという
本来現れるはずのないものだが、外部による何らかのきっかけで誕生してしまった
そのきっかけというのは、宇宙外のことであるため、詳しくは観測不能でわからないようだが
我々に彩蒼のことを教えてくれた存在がいた
簡単に言えばそれは宇宙人で、遥か彼方の星の古代文明で神と崇められた種族だ
彼らは自らを、祖羅と名乗った
二十万年前から永き眠りについていたが、彩蒼の誕生を感知し、目覚めたらしい
彩蒼は自分たちの星にとっても危険な存在であり、早々になんとかしたい、とのことだった
事態の解決への道はひとつ
祖羅が技術の粋を結集して作り出したパワードスーツのようなものに身を包み、適性者である私が彩蒼のサッカーボールほどのコアを星から抜くこと
なんの因果か、地球の命運を託されることとなってしまった
適性者は他にもたくさんいるが、彩蒼へ突入できるのは、もっとも適性の高い私ひとり
なぜなら、二人以上での侵入は彩蒼に存在を気づかれ、宇宙へ放出されるからだ
私は覚悟を決めて、祖羅によって彩蒼のコア近くの深海にテレポートする
コアはすぐに見つかった
蒼い光を放ち、美しく、宝石のように輝いている
コアに触れ、コアごと地球にテレポートすれば、任務は完了
だが……
非常に動きづらい
コアが敵に自分が狙われぬよう、海の成分を動きづらいものに変えているようだ
コア自体は、二人以上がいる気配を感じることしかできないので、ひとりである私の存在がバレることはない
しかし、ながく居続ければいつかはバレる
私は静かにもがきながら、コアへ近づいていく
時間はあまりない
焦りと動きづらい苦しみに急かされながら、なんとかコアにたどり着き、触れる
すると、彩蒼の思念が流れ込んできた
私の精神が悲鳴を上げる
恐ろしいほどの孤独感
彩蒼の感じているそれが私に襲い掛かってきたのだ
彩蒼が彩蒼になる前からの、私には理解できない宇宙外の記憶と、仲間を欲する心
それと同時に私は知った
彩蒼がなぜ生まれたか、彩蒼になる前に何があったかはわからないが、彩蒼の孤独は癒やさなければならない
彩蒼は絶対に殺すことはできない
コアを抜いても、孤独感により再び星が形成され、空腹により地球は食われる
そして、コアの破壊は不可能
我々がするべきことは、コアを孤独から救うことだ
私は思念に耐えながら、コアと共に地球へ帰還した
私の彩蒼でのできごと聞いた祖羅は驚きもせず、淡々とコアを謎の技術で改造し始めた
驚かないことに驚いたが、そういう種族なのだろう
しかし祖羅への信頼はあるが、やはり地球の命運がかかっているので、心配だ
だが私の心配をよそに、改造はすぐ終わった
コアは人間の子供になっていた
祖羅は言う
地球で人として暮せば、孤独とは無縁
彩蒼を改造する際、人間としての思考を埋め込んだ
星を形成する力も封じた
彩蒼は普通の人間へと生まれ変わった、と
私はホッとした
地球が救われたからだけではない
彩蒼が抱えていた孤独感を拭えるだろうからだ
彩蒼はその後、蒼と改めて名付けられ、私が育てることとなった
祖羅も数名が残り、協力してくれている
こうして、地球を襲った未曾有の危機は、思ってもいなかった形で防がれた
私が本当に頑張らなければならないのは、これからなのだろうな
だが祖羅の協力もある
大丈夫だろう

6/29/2025, 12:30:10 PM