ストック1

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4/6/2025, 11:08:28 AM

新しい地図アプリをダウンロードした
これはただの地図アプリじゃない
私に絶対に必要なアプリだ
私はよく異空間に迷い込むことがある
そこから脱出するのに毎回苦労させられているのだけど、この地図アプリは自分が今いる異空間の地図と現在位置を表示
スムーズに脱出できるそうだ
これで無駄のない攻略が可能になった
あとは、化物がいるような空間がほとんどだけど、まあそれに困らされたことないし、そこの解決はいいや

で、アニメのPOP UP STOREで楽しんだ帰りのこと
私は駅で異空間に迷い込んだ
そこは照明がちょっと暗い不気味な駅構内で、真の迷宮と化している
さっそく地図アプリを開く
おお、異空間の構造が丸わかりだ
私はこの辺りだから、このルートで出られる
あとは、道中に何があるかだけど、そっちはどうにでもなる
進んでいくと気持ち悪いほどいい笑顔の、いびつな顔した化物が佇んでいた
化物は私を視認すると、ナイフを振りかざして向かってきた
やたら早いとかではなく、全速力なら逃げられそうな速度
ははぁ、ここは迷宮を逃げ回りながら、いかに移動し続ける化物とバッタリ会わずに脱出するか、という空間だと思う
曲がり角の先とかで見つかったらゲームオーバー
遠くから発見されたら追われるので、相手の視界から消えつつ、分岐などを上手く使って追跡をかわさなければいけない
そんな感じだろう
けど、残念
私には関係ない
私は化物を正拳突きでノックアウトした
化物はサラサラと黒い粒子となって消えていく
最期までいい笑顔だった
白目剥いてたけど
やっぱり拳骨最強
化物相手に、拳骨に勝る武器なし
暴力はいいぞ
それにしても便利な地図だな
ここは比較的広そうだけど、これなら簡単に脱出できる
こうして、私はものの十分程で脱出に成功した
強制的に趣味の悪い異空間に引きずり込んで、くだらない脱出ゲームをやらせる相手には、こちらも相応のずるをさせてもらう
そして、化物には鉄拳制裁も辞さない
私はこの拳骨と新しい地図アプリで、あらゆる異空間を滅茶苦茶にしてやろう、と改めて誓うのだった

4/5/2025, 11:08:06 AM

別に評価が低いわけじゃないんだよ
でも世間じゃ、面白いけどパッとしないって意見が大半なんだよな
だがそんなの関係無しに俺は一番好きだよ
確かに今までの作品とは毛色が違うけどな
同じような内容一辺倒じゃないってことを示したし、それでいて十分魅力的だと思うんだ
ただ、あれが一番好きって言うとな
通気取りだ、みたいなことを言われることもあって、それがどうもムカつく
別にマイナー好きの自分を演出して、かっこつけるために好きって言ってんじゃねえんだよ
俺は実際に面白いから好きだと言ってるだけなんだけどな
俺に言わせれば、マイナーを好む人間を気取り屋だとレッテル貼って、メジャー好きが素直な楽しみ方だ、ってやつも、思いっきり気取り屋だと思うがね
ま、大半の人間はそんな事考えず、自分の好きなもんを好きでいると思うが
おっと、話が逸れたな
ともかく、俺の好みに共感してくれる人ってけっこう少ないんだよ
他の作品なら話込める相手も、あの作品について語ろうとすると、「あぁ、あれも面白いよねー」くらいで、あまり盛り上がらねえ
俺はそれがものすごーく残念でね
まあ、そこまで残念がれるほど好きなのはいいことなんだろうけどな
だから、こんなところで同好の士に出会えるとは思わなかったよ
ほんと、ありがたい
少し話したが、あんたはかなり詳しい人だろ
楽しく語り合うと同時に、俺も勉強させてもらう
絶対にあんたのほうが造詣が深いからな
好きなものの新たな一面を発見するのは楽しい
お互いに楽しもうぜ
こんな機会、普段はなかなか無いからさ

4/4/2025, 11:51:24 AM

僕はその日、初恋を経験した
一目惚れだった
散歩で来た、桜のきれいなあの公園で、花びらが舞う中に、その子は立っていた
桜を眺めながら
小6になったばかりの僕と同い年くらいの女の子
話しかけたいけど、見ず知らずの相手に会話がしたくて話しかけるのは、どう考えてもヤバいと思う
僕はそのまま何もせず、ドキドキしながらすぐに帰った

また別の日、同じ公園に来てみたけど、あの子はいなかった
それはそうだ
毎日来てるのでもない限り、あの日、たまたまいた子が、またいるわけがない
僕はなんでちょっと期待したのだろう?
もう桜は散っている
意味もなく公園を歩いていると、僕も持っている、漫画のキャラのキーホルダーが落ちていた
誰かの落とし物だろう
なんとなく拾って見ていると、横から誰かが走ってきた
あの子だった

「あ、あの、そのキーホルダー
わ、私のもので……」

その子は激しく動揺した感じで、僕に話しかけてきた
キーホルダーはこの子の物だったのか
それにしても、こんなに動揺するなんて、内気な子なのかな?
あと、声をどこかで聞いた気がするけど、思い出せない
それに見た目も、なぜか見覚えを感じる
気のせいか?
とにかく、僕はキーホルダーを返した

「偶然だけど、そのキーホルダー、僕も持ってるんだよね
このキャラ、好きなの?」

「え?
あ、うん」

「この漫画、面白いよね」

「そ、そうだね」

やっぱり、なんか動揺しっぱなしだな
あんまり話しかけるのも悪いから、名残惜しいけど、僕は帰ることにした

「ええと、ありがとう」

「うん、それじゃ」


翌日、学校ではあの子と話したことが頭をぐるぐる回って、あまり授業に集中できなかった
休み時間、友達に呼ばれて付いて行った時も、あまり頭が回らず、どこへ向かっているのかもわからないくらいだった
友達は普段、学校の中でも人があまりいないところへ僕を連れてきていた

「あのさ、俺、双子の妹いるじゃん」

「あー、そういえばそうだった
でもなんか、付き合い長いわりには、君の妹、会ったことも見かけたこともないよね、僕は」

そこで何かが僕の中で繋がった
公園にいた子に感じた、見覚えや声の聞き覚えは、そうだ
目の前の友達だ
ということは、あの子は双子の妹だったのか?
だとしたら最強の接点が生まれたぞ!
是非ともお近づきになりたい

「おい、聞いてるか、俺の話?」

「あ、ごめん
ちょっとボーっとしてた
なんだっけ?」

「だから、妹を昔から見てて、ちょっと俺、羨ましく感じてたんだよ」

羨ましく?
なにをだろう?
なぜかちょっと嫌な予感がする

「それで、親に頼んで、女の子の服とか買ってもらって、着てたわけ」

ん?
今、なんて言った?
ちょっっっと待って
この先を聞いたら僕の何かが終わりそうな感じがするんだけど?
この先を聞いていいのか僕は?

「昨日、キーホルダー落として、お前に拾ってもらったやついただろ
頼むから誰にも言わないでほしいんだけど、あれ、俺なんだ」

ああああぁぁぁぁ
終わった、何かが、いや初恋が
あのキーホルダー、僕が君と何年か前に一緒に遊びに行った時、僕の親にお揃いで買ってもらったやつの片方だったのか……!
動揺する僕だったが、不安そうな友達の顔が見えたので、かろうじて崩れ落ちずに済む
僕の事はこの際いい
勇気を出した友達を、僕と普段から仲良くしてくれる友達を安心させないと

「大丈夫だよ
僕も人に知られたくないことのひとつやふたつやみっつ、あるから言わないよ
もしよければ、そのうちのひとつを教えて、秘密をお互いバラさないようにするとかでもいいよ」

「いや、そこまでしなくていい
お前のその言葉で安心したよ、ありがとな」

友達はめちゃくちゃいい笑顔で握手してきた
安心してくれてよかったけど、僕の悲しみはしばらく続きそうだ
きれいだった桜ももう散ったけど、きれいだった僕の初恋も散っちゃったね

4/3/2025, 11:25:54 AM

僕には視える
君と共にいるそれが
君とは長い付き合いだけど、君にはそれが視えたことがないようだ
壮厳な姿をして、君の背後に浮かぶ守護霊
君を危険や不幸から守ってくれる
君は自分を運がいいほうだと言うけど、それは守護霊のおかげだ
そして守護霊は僕に対して、普段の壮厳さとは裏腹に、実に柔和な笑顔で手を振る
自分で言うのもなんだけど、主である君への僕の普段の行いがいいのだろう
何かの間違いで君の機嫌を損ねた時が、ちょっと怖いけど
でも、君といるのも楽しくて、守護霊の表情を見るのも楽しくて、二倍の楽しさを味わうことができるのは素晴らしい
それでとても幸せな気分になる
守護霊は意外と表情が豊かなのだ
そして、どうやら君と一緒の時、守護霊は僕のことも守ってくれているらしく、たまに疲れ気味になっている
心配になるけど、すぐに元気になるのは、君が楽しそうにしていることで、霊力が戻るからかな
ともかく、君と守護霊のおかげで僕の毎日は常に楽しさで溢れている
そんな話を君にしたけど、まあ信じないだろう
本当のことだけど、君は冗談だと思って笑う
守護霊を見ると、口に人差し指を当てて、「シー」、と言っている
守護霊はどうやら、存在を知られず、影の立役者でありたいようだ
それが守護霊の望みなら僕は黙っていよう
これからも、君と、もうひとりと、楽しい生活を続けられたら、それで満足だ

4/2/2025, 10:52:32 AM

空に憧れ、いつも空を眺めている恐竜がいた
その恐竜は、空を自在に翔ける翼竜を羨ましく思い、なんとか飛べないものかと考え続ける
しかし、様々なことを試しても、どれだけ考えても、ついに空を飛ぶことはなかった
そして、自分は空を飛べないのだと悟り、残りの生を仲間や子供のためだけに捧げる
悔いはなかった
納得して諦めたのだから
だが、その背中を見てきた子供は、親の願いを叶えようと決意した
しかし、彼は知っていた
自分が飛ぶことは絶対に不可能だと
一方で、知識はないはずなのに、連綿と受け継がれてきた遺伝子が記憶していたのか、進化というものをなんとなく理解していた
自分が叶えられずとも、子孫が必ず達成してくれる
彼が自身に課した使命は、子孫に命を引き継ぐこと
これまで、祖先から親までがしてきたことと何も変わらない
生きて、競争に勝ち続け、愛するつがいを見つけ、子孫を残す
ただ、それだけでいい
恐ろしくなるほどに達成は困難だが、同族が、他の恐竜が、いや、この世の生きとし生ける多くのものがしていることだ
ありふれた行動だ
難しいが、何も複雑じゃない
そして彼は使命を全うしてみせた
最期の時まで、夢を見続けた一生だった
彼の血だけでなく、遺志も引き継がれたのか、彼の子孫たちは何代も何代も、誰に言われるでもなく同じ夢を抱き、空を目指し続けた
そうして、どれだけの時間が経ち、どれだけの世代が変わっていっただろうか?
気の遠くなるような時の流れの中、恐竜は空を飛んだ
夢が叶ったのだ
だが、そこで満足しなかった
もっと上手く、もっと自在に、もっと自由に
さらに時間と世代をかけ、彼らは先祖と自分たちの夢に向かって、子孫を残し続ける
もはやその姿に、かつての面影は見られなかった
それでも、彼らは確かに恐竜だった
彼らは後に、「鳥」と呼ばれる
空に向かって夢を抱いたその一頭は、時を、世代を超え、子孫たちによってようやく夢を叶えたのだ

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