「さぁ冒険だ!
世界が私たちを待っている!
どんな困難も乗り越えて、まだ見ぬ景色、まだ見ぬ文化、まだ見ぬ人々のもとへ辿り着こう!」
のんきに楽しそうですね
僕たち部下はあなたについていくのに精一杯で、いつも神経すり減らしてますけどね
僕は冒険に付き合った挙句、呪いで喋れなくなりましたよ
「呪いなんていつか解けるさ!
私がチューして解いてあげようか!?」
なんでこの人は僕の言いたいことがわかるんだろうな
とりあえず、セクハラはやめてください
そんなんで解けたら苦労しません
ふざけてるとチョップしますよ
「暴力だっていけないんだぞー!」
そうですね
もちろんチョップは冗談ですが
とにかく、冒険するのはいいですけど、周囲の部下にも気を配ってくださいよ
あなたが向こう見ずで無茶するから、僕たちはハラハラするし、サポートだって大変なんですよ?
あなたに何かあったら、僕たちは深く悲しみますからね
あと、あなたも僕たちに何かあったら大泣きするでしょ?
僕が呪われた時、僕以上にショック受けて一晩中泣いてたじゃないですか
「うっ、よく覚えてるね」
とはいえ、あなたと冒険するのは、僕たちもなんだかんだ楽しんでますが
あなたが楽しそうだと、僕たちもつられて楽しくなってしまいますからね
でも、もう少しアクティブさを抑えてくれるとありがたいです
「君たちに余計な心配はかけられないもんね
わかったよ
ちょっと自重するよ」
本当に、お願いしますよ?
じゃ、そろそろ冒険に出発しますか
みんな呼んできますんで
「うん、任せた!
……静かだけど、おしゃべりだよなあ
私にしか聞こえない声
なんか、特別感があって嬉しいな」
「見てごらん、あんな過酷なところでも、一輪の花が笑んでいるよ」
咲いているのを花が笑うって表現するの、詩的だね
いつも小難しいことを喋ってるけど、そういうことも言えるんだ
というか、花に興味を持つなんて思わなかったよ
「ハッハッハッ
私の視線はこういうものがよく目につくんだよ
君とはまた、違った景色が見えていると思う
それに、実は私の興味の範囲は広いのだよ
普段は抑え気味だけどね」
じゃあ小難しい話より、あなたの広い興味の話が聞きたいよ
「すまないすまない
私の話は退屈だったか」
言っちゃ悪いけど、意味わからないしね
意味のわかる話じゃないと、聞いててつまらないし、まともに返事もできないよ
「では意味のわかる話をしよう
笑うという意味の笑むは、花が咲く、の咲くの字を使って咲むとも書くから、花が笑んでいるというのも、実はひねった表現というわけでもないんだよ」
確かに、そういう表現ってたまに見かけるもんね
笑と咲で同じ意味にもなるんだ
というか、また小難しい話に繋がりそうだな
「そうだね
では、お互いの行ってみたい場所でも語り合うかい?」
おお、いいね
そういう話なら大歓迎だよ
私の行きたい場所はローゼリアス城下町かな
「ゲームに出てくる町だね
私も君の隣でゲーム画面を見ていたけど、あの一輪の花がモチーフの城の光景は、迫力があったね」
そうだね
街並みも含めて綺麗だしね
というか、また花の話になっちゃった
この話のきっかけも一輪の花だったよね
「話が戻ってはいないが、戻ったような気分になるね
あの花と城は全然違う姿だが、どちらも美しいことに変わりはない」
なんかかっこつけたこと言ってる
今日はそういう気分なのかな?
それはともかく、あなたはどこに行きたい?
「私は最近、激しい運動がしたくてね
散歩はするが、このままでは体が鈍る一方だからね
思いっきり走れるドッグランがいい」
現実的ですごく身近な場所だね
じゃあ、次の休日にでも行こうか
それにしても、なんで私は犬のあなたの言ってることがわかるんだろう?
「それは君が特殊能力を持ち、私も超能力、長寿命を持つ少々特殊な犬だからだが、詳しい話、聞きたいかい?」
小難しい話は理解できないからいいって
そんなしっぽふって目を輝かせても、聞かないよ
「それは残念」
「夜空の輝きと掛けまして、犯人と解く
その心は、どちらも星でしょう」
絶妙にうまくない謎掛けをしているな
というか、下手だ
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、これなーんだ
正解は人間でした」
それを言うなら最初は四本足、次に二本足、最後は三本足じゃないのか?
ある意味、間違ってはいないけれども
……なあ、現実逃避してもいいことはないぞ?
ここはキッチリ切り替えていこうぜ
「お前に何がわかるんだよ
俺の心の傷はお前の想像よりも深くて痛いんだよ」
秘密のノート見られただけだろ
「それが致命傷なんじゃねえか
よりによって永遠なる闘争の剣(エターナルラグナロク)を一番見られたくない姉に見られたんだぞ」
確かに、あの人に見られるのは嫌な感じはするけど
「見つかった時のあのニヤけ面を思い出すだけで冷や汗が出そうだよ、俺は」
全部見られたんだったか
「そうだよ
俺の考えた魔法の、混沌に染まりし暗雲(カオティックダーククラウド)も、審判下す王の双眸(ジャッジメントロードアイズ)も、深淵より出でし怨嗟の慟哭や、その他も余さず見られたよ」
キツイなぁそれは
だが気を落とすな
俺のノートを見せて、苦しいのは自分だけじゃないと思わせてやるから
「俺並みにキツイのがお前にもあるってのか?」
正直、お前並みにキツイかどうかはわからない
お前とは方向性が異なるからな
キツイの種類というか、意味が違う
見てくれ、俺がかっこいい魔法とかを作ろうとすると、なぜかこうなってしまうんだ
ほら
「えーと、トゥインクルドリーム?
ん?
おかしくね?」
そうだよ、おかしいんだよ
俺がかっこつけようとするとなんかこんな感じになる
「ハートフルアロー
マジカルハッピーシャワー
え、魔法少女もの?
なんでかっこつけようとしてかわいい感じになるんだよ?」
知らん
そして、かっこよくならずに、かわいらしくなってる自覚はあるところが不思議でならない
どうだ、俺に比べればなんの問題もないだろう
かっこつけようとしてかっこついてるんだから
恥ずかしがる必要はない
俺なんてかっこつけた結果、なんかファンシーになってるぞ
さらに俺の生み出したものは全く俺の趣味じゃないし
ともかく、姉に笑われたからなんだ
自分の好きなものに自信を持て
かっこつけたっていいじゃないか
お前のは普通にかっこいいし、痛くなんかない
黒歴史なんかじゃないと胸を張れ
「まあ、そうだよな
好きなことだもんな
元気が出てきたよ、ありがとう」
それにしても、永遠なる闘争の剣(エターナルラグナロク)とか、俺も思いついてみたかったな
「月並みだけど、きっといつか思いつけるようになるさ
がんばれよ」
そうだな、俺もがんばってみるか
手始めに強い光線を相手に放つ魔法の名前とか、考えるかな
ええと、キラメキシューティングスター
……ダメだこりゃ
「穢れ祓いし清浄なる一閃」
ああ、これは絶対にお前には勝てないな
僕は人生を、土砂降りの中歩んでいる
逃げ出したいけど、逃げることはできない
投げ出したいけど、それもできない
それらをしたところで、もっと苦しむだけだから
だからといって、立ち向かっていけるほど僕は強くはないし、うまく行くとも思えなかった
このままひとりで、心に豪雨を受けたような苦しみに苛まれ続けるのか
そんな絶望に包まれる
そんな中で、君は僕に気付いてくれた
雨の中、座り込んで震える僕に手を差し伸べて、一緒に戦うと言ってくれた
そのおかげで僕は、苦しくても、逃げ出したいとか、投げ出したいとか、そんなことを考えず、立ち向かえる力を手に入れる
もうひとりじゃないし、怯える必要もない
この雨を止ませよう
君となら、それができる
長い間土砂降りの人生だったけど、降り続く雨がついに止んで、その先で君と見た虹は、とても輝いていて、美しかった
私は夜空を駆ける
リヤカーに乗って
楽だから私もサンタみたいにソリに乗りたいけど、あれは高い
あのおじいさん、補助金出てるからね
しかもトナカイに引っ張ってもらってるし、快適そうで羨ましいよ
大してお金のない私はリヤカーなのさ
とはいえ、真面目に働いて稼いでるから、箒じゃなくて済んだけどね
あれの乗り心地は最悪だった
絨毯も、安い割には物も少し乗せられるんだけど、ちょっと乗り心地悪いんだよね
その点、リヤカーはカスタマイズすれば乗り心地は、よくはないけど特段悪くもないって感じにはなるし、物もけっこう運べるからね
ああ、でもいつか自家用ソリでドライブしたいな
私の目標のひとつでもあるんだ
そういえば、前に観光ツアーで乗った馬車
あれすごいよかったなあ
まあ、よほどのお金持ちじゃない限り、個人で所有なんて不可能だけど
それにしても、夜空を駆けるのは気持ちがいいよね
休日の夜はやっぱり空のドライブが最高
夜景もきれいだし
週に一度のリフレッシュには最適だよ