『バイバイ』
貴方に出会って早2ヶ月で、こんなにも早く別れが来るとは思わなかった。
あの頃は。
私の全てを許したのは貴方だけなのに、貴方にとって私は全てではない、それがただ悲しかった。
貴方が見据えたのは、私のいない未来だった。
貴方は時折感傷に浸り、いずれ何処かの男に私が奪われるだなんて、可笑しな妄想に取り憑かれていた。
私はいつだって貴方の隣にいるのに。
貴方とならどんな未来でも、一緒にいると決めているのに。
そんな私の気持ちはいつも届かず、一向に伝わらなかった。
こんなにも愛してるのに、その愛を疑われるほどに私は混乱した。
そうしているうちに、貴方と共にする時間がまるで自傷しているかのように感じるようになった。
愛していたけれど、ずっと恋に囚われていて苦しかった。
傷付きが何度も積み重なって、別れを切り出すしかなかった。
あれから何年もの月日が経った。
彼は元気だろうか?
貴方といてこんなにも痛みを知れたから、私は人としての深みが出たと思う。
もう、二度と会うことはないけれど、あの愛に偽りはない。
だから、あの頃の私の真心に、二度目の『バイバイ』。
ー手のひらの宇宙ー
指先の感触を愛でるよう、そっと丁寧に触れると、優しさという宇宙が私の心を駆け巡る。
それは日常のさり気ない瞬間。
朝の冷たい水が肌に触れる時、観葉植物に触れる時、寝る前の柔らかな布団に触れた時。
そして、あなたにそっと触れた時。
この感触は、感覚は、私だけの小宇宙のようだ。
誰にも奪えない、奪われない、かけがえないもの。
どうか、なくさないように握りしめていて。
ーそっとー
涙が流れた。
星空が美しくて、君を思い出すから。
叶わない、手が届かないと知ったから。
冬の風に吹かれて、冷たく濡れた頬を、
静かな夜だけが、そっと包んでくれた。
ー星のかけらー
夜空に浮かぶ星々は、命を燃やして輝く。
星々が瞬く間に弾け飛んで、キラキラと音を奏でている。
さぁ、星のかけらを、拾い集める旅に出かけよう。
両手のひらから零れんばかりの星のかけらを集めるんだ。
そして、その星のかけらをこの胸に美しく飾ろう。
いつか、その輝きを手放すその瞬間まで。
ー追い風ー
穏やかな冬の青空。
瞼の奥に焼きつくような、柔らかで眩い日差しが降り注ぐ。
冬の風が私の背中を押して、枯れ葉が軽やかに舞い上がった。
サラサラと音を立てながら、枯れ葉は空中で踊り出す。
それはまるで、この世界から贈られた祝福のようで、不思議な心地よさが胸に広がる。
風で乱れた髪を指先で整えながら、少し先の未来を見据える。
不安も悩みも尽きないけれど、風のように軽やかに自由でいれたなら、私はきっとどこへでもいけるだろう。
背中をそっと押す風に包まれながら、心がふっと軽くなった。
背中の風に導かれるまま、また一歩、私の未来を踏みしめた。