いつまでも捨てられないもの。
クローゼットの奥。
ベッドの下。
本棚の隙間。
色んな場所に、ちょっとずつ。
あの頃の、写真。
いろんな人に貰った、手紙。
お気に入りの、洋服。
ちょっと変わり者の、文房具。
昔使ってた、手帳。
あのとき聴いてた、CD。
何ならはじめて書いた、履歴書まで。
大きなものから、
小さなものまで。
人から見たら、いらない物でも。
自分にとっては、大切なもの。
いつか手放すかもしれないけれど。
今は、そばにいてほしい。
どんどん増えてく、ものたちが
私の周りを埋め尽くす。
たくさんの思い出を、これからも。
(想いがあるから、捨てられない。)
誇らしさ。
朝。
眠い頭と体を無理やり起こしてボーっとする。
今日も、あっという間に朝が来た。
布団に逆戻りしたいが、そういうわけにもいかない。
出かける準備をしなければ。
とりあえず、
テーブルの上にあるリモコンで、テレビをつけた。
そこからは時間との勝負だ。
… とは言っても、ほぼ流れ作業で終わらせる。
毎日のことだから。時々、油断することもあるけれど。
すこしだけ早めに準備が終わって。
でも、朝ごはんを食べるほどの余裕はない。
ケトルを手にとって、お湯を沸かす。白湯でも飲もう。
健康とか、美容とかのためじゃなく。
胃腸が強くないから、朝は白湯くらいが丁度いい。
お茶ぐらいならいいかもしれないが、
ゆっくり味わえないのなら、茶葉がもったいない。
合間に聞こえるテレビの音。
今の流行りだとか、今日の天気だとか、
スポーツの結果や、話題の映画や音楽とか。
朝からとても賑やかだ…。
目に映るテレビの向こうは、みんな元気でにこやかで。
自信にあふれて、どこか誇らしげに話してる。
現実はわからないけど、そう見えるだけでも尊敬だ。
飲み終わったカップを片付けて。
さて、今日も1日乗り切ろう。
…占いの順位は、真ん中だった。
(得意げに話はしても、誇らしいと思えない我が身。)
夜の海。
真っ暗。何処までも真っ暗で、何も見えない。
車のライトだけが明るく照らしているが、
エンジンを止めてしまえば、一瞬で暗くなる。
ドアを開いて外に出れば。
むわっと生ぬるい湿った空気に、海の匂い。
防波堤を踏む感触は、昼間の暑さを伝えてくる。
ざざぁっと打ち寄せる波の音。
引いて押してを繰り返す。
見えないけれど、確かに音で伝わるのだ。
目の前に、海がひろがっていること。
別に、夜の海に来たかったわけじゃない。
海を楽しむなら、青く、水平線が続く海を見たい。
そのほうが、色んな色を楽しめる。
遠く近くの海の色、打ち寄せる波と泡。
砂と岩に、コンクリート。沢山の生き物たち。
また、明るい時間に来てみようか。
昼間の日差しは、痛そうだけれど。
遠くの方。海岸沿いの空の上。
ピカッと、何か光って消えて、
どぉんと、遅れて音が響く。
あぁ、始まった。今日は、隣町の夏祭り。
ちょっと大きな花火があがる。有名では無いけれど。
海の近くであげるから、海に来たら見えるんだ。
波の音を聴きながら。
小さく見える、花火を見つめて。
いつもと違う、夏の夜。
自転車に乗って。
小さい頃。
自転車に乗るのは、ステータスの1つだったと思う。
乗れるか、乗れないかで、友だちとの遊び方も変わった。
何せ行動範囲も変われば、移動にかかる時間も変わる。
遊ぶために全力をかけているのだから。
…子どもの世界も、なかなかシビアなのだ。
幼い頃は、ただ乗りたくて頑張った。
買ってもらった自転車が嬉しくて、ワクワクしながら跨った。
補助輪を、ガラガラ鳴らして走り出す。
ドキドキしながら、ひとり立ち。
ちょこっと大人になった気分。
転んだってへっちゃらで。
前に、先に進んでく。
お風呂につかった傷跡が。
痛くてすこし涙する。
頑張って乗れるようになったのに。
遊ぶためじゃなくなった。
跨ることも、なくなった。
久し振りに乗った自転車は、なんとも頼りなく走り出す。
サドルに乗ったお尻さえ、座り心地が落ち着かない。
体に力が入るから、ブレーキばっかり掛けちゃって。
自分で自分に、苦笑い。
あぁ、あんなにうまく乗れたのに。
知らぬ間に、忘れてしまった乗り方を。
どのくらいで思い出す?
… ケガしないように、気をつけよ。
心のけんこう。
さて。
世間は、夏の真っ只中。夏休みもそろそろ後半に入る頃。
テレビをつければ、お盆だなんだ。
休みの人は遊びにでも行くんだろう、そんなニュースが流れている。
夏の風物詩のスポーツも、大いに盛り上がっているようだ。
そんななか、サービス業は休みはない。
むしろ、今だろ?
と言うばかりに、仕事が入る。
そう、今の世の中。お盆休みもないところもあるのさ。
たまには帰省して、お墓参りとか、お盆らしいことをしたいものだ。
そろそろ、ご先祖さまに怒られそうな気がする。
あぁ、夏休みが恋しい。
実際に長期休みを貰った所で、休み明けが恐ろしいことになるよなぁ、なんて。
それでも、あの子供の頃の、だらっと過ごした休みが羨ましいのだ。
寝て、起きて。仕事をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、また、眠る。
出来上がったルーティンは、なかなか、どうして変えられない。
変えるつもりが、無いだけか?
気力が無いのか、何なのか。
やりたいなぁとか、行こうかなぁとか思うだけ。
体は全然動かない。
…年のせいにしてみたり。
多分、余裕がないから。
今が、精一杯だから。
だから、余った時間で自分を甘やかす。
ちょっとぐらい、許されるよね?
私のこころも、大切にする時間だから。
だから。
暑いあつい夏の夜。しゅわっとはじける炭酸が。
すごく、似合うと思うんだ。