君の奏でる音楽
冷蔵庫を開ける。
さて、今日のご飯は何にしよう。
豆腐と、乾燥わかめが、どこかにあったはず。
実家から貰った手作り味噌も、いい感じに発酵が進んで、私好みだ。
消費期限が明日までの豚バラ肉で、生姜焼きでも作ろうか。
漬け込みはしないで、パパっと作るぐらいが簡単で美味しい。
付け合せは千切りキャベツ。
袋入りでとても便利なすぐれもの。
これで完璧だろう。
炊飯器から、しゅうっと音を立てて蒸気があがっている。
私のキッチンが、一番にぎやかになる時間。
朝ごはんは、時間があればなにか食べるが。
毎朝寝坊気味なため、そう回数は多くない。
昼ごはんは、外食かコンビニか。
即席ラーメンに、冷凍食品は強い味方だ。
だからこそ、晩ごはんはしっかりと。
一日頑張ったご褒美に。
でも、食べすぎには要注意。
窓際に置いた、iPadからお気に入りの動画を流しながら。
聴こえてくるのは、好きな声。
軽快なメロディーや、ちょっと寂しげな音楽も。
料理で動く手も、足も、すこしリズムにのりながら。
今日も美味しいご飯が、できそうだ。
麦わら帽子?
公園の中。ブランコの近く。
フラッと立ち寄ったその場所に、ちょんっと落ちていた。
砂場と滑り台、鉄棒。いくつかのベンチと水飲み場。
なんてことない小さな公園。
少し茂った雑草と、色あせた遊具の色。
所々剥げたペンキ。
少しだけ手入れされた花壇には、花が咲いていた。
久し振りに訪れたそこは、昔見たときより狭くて、小さくて。
何をして、遊んでいたんだったか…。
遠い記憶すぎて、うまく思い出せない。
拾ってふれた麦わらの感触も、久し振りにさわるものだった。
チクチクと肌を刺すものだから、あまり好きではなかったけれど。
こんがりとしたような、藁の匂いは好きだった。
さて。落とし主は現れるのか…。
ブランコの上に置いてみる。
風で飛んでしまうかもしれないが。
持ち主を待つのに、地べたよりは良いだろう。
私が、昔使っていた麦わら帽子は。
まだ、何処かにあるだろうか?
終点。
ふと、考えることがある。
終わりとは何なのか。
何をもって終わりとすのるか。
ぼんやりと見つめる目の前は、いつもの街並みが流れていくだけで。
身体に感じる振動も、揺れもいつもと変わらない。
何かを始めるとき、また、終わりもいつかくる。
どんな道も、走り続ければ、いつか道の終わりは来るだろう。
勿論、どう走るかで距離も時間も長くもなれば、短くもなる。
物も、人も、世界もきっといつか終わるときが来るだろう。
自ら決める終わりもあるはずだ。
悔いなく終わるのか。
諦めて終わるのか。
自分の意志とは関係なく終わってしまうのか。
何処を最後と決めるのか。
意味を見いだせなくても考える。
私にとって、終わりはいつ来るのだろう。
『次は、終点……駅です。お乗り換えのお客様は…の……ホームへ…………。』
あぁ、とりあえず今日の晩御飯を買いに行こう。