如雨露

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夜の海。

真っ暗。何処までも真っ暗で、何も見えない。

車のライトだけが明るく照らしているが、
エンジンを止めてしまえば、一瞬で暗くなる。

ドアを開いて外に出れば。
むわっと生ぬるい湿った空気に、海の匂い。
防波堤を踏む感触は、昼間の暑さを伝えてくる。

ざざぁっと打ち寄せる波の音。
引いて押してを繰り返す。
見えないけれど、確かに音で伝わるのだ。
目の前に、海がひろがっていること。

別に、夜の海に来たかったわけじゃない。
海を楽しむなら、青く、水平線が続く海を見たい。
そのほうが、色んな色を楽しめる。
遠く近くの海の色、打ち寄せる波と泡。
砂と岩に、コンクリート。沢山の生き物たち。

また、明るい時間に来てみようか。
昼間の日差しは、痛そうだけれど。

遠くの方。海岸沿いの空の上。
ピカッと、何か光って消えて、
どぉんと、遅れて音が響く。

あぁ、始まった。今日は、隣町の夏祭り。
ちょっと大きな花火があがる。有名では無いけれど。
海の近くであげるから、海に来たら見えるんだ。

波の音を聴きながら。
小さく見える、花火を見つめて。
いつもと違う、夏の夜。

8/15/2022, 10:58:54 AM