通りすがりの一般人

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2/12/2025, 10:20:36 AM

【創造の記憶の時間】


「ぜったい、けっこんしようね!」

...と、私がずっと小さい頃に、当時近所に住んでいた同じ年頃の男の子と約束した事がある。

男の子の方も「うん!」と頷いてくれ、将来はどんな事するか、何処に家を作るか...なんて創造してた。

2人で、まだ見る事のできない未来の記憶を一緒に作っていた時間は、すごく、すごくすっごく楽しかった。

そんな私も、もういいおばさんになった。

結局のところ、あの時絵描いた筈の未来の記憶は、私の記憶になることは無かった。

中学までは一緒だったけど、私と男の子は高校で違う道を歩んだ。

今、この人生に後悔はしてないわ。

でも...あの時確かに話した、未来の記憶を想像するあの時間は...2人で話してた時間はすっごく楽しくて...

何にも縛られてない自由の時間だったな。


お題「未来の記憶」完

2/11/2025, 10:41:13 AM

【心か、こころか、ココロか。】


俺には"心"という娘がいる。

心優しい子に育って欲しいという思いから、妻と話し合って名付けた、愛しい子。

去年、心が幼稚園に通う事になり、妻と一緒に幼稚園の持ち物に名前を書こうとした時、気がついた。

漢字で心と書いたら先生には分かっても、娘の友達には分かってもらえないんじゃないか...と。

だから、娘の持ち物には"こころ"と書いたんだ。

それから暫く経って、昨日、娘が幼稚園で俺達の似顔絵を描いてくれた。

心を真ん中に右に妻、左に俺が描いてある1枚の絵。

よく見ると、妻の絵の足元にはママ、俺の絵の足元にはパパ、心の絵の下には"ココロ"と書いてあった。

心と、こころと、ココロ。

心の方を見ると、上手く描けたでしょと言わんばかりに笑っていたので、俺はわしゃわしゃと笑って撫でた。

キャハハ!と笑う心の嬉しそうな声が家に響いた。


お題「ココロ」完

2/10/2025, 10:50:06 AM

【これだけあれば...】


友人に流星群を見に行こうと誘われた。

夜も更け、友人が運転する車の助手席に乗って山の上を目指して登っていく。

うとうとしたかけた時、友人から「着いたよ」という声が聞こえ、狭い車内で体を伸ばす。

寝ぼけたまま助手席のドアを開けて地面に下りた時、やけに周りが明るいように感じ、空を見上げた。

暗いはずの夜空には、沢山の星の光が綺麗に弧を描いて俺らのいる場所を照らしてた。

あんなに...星が流れてる綺麗で異様な夜空に俺は目を奪われていた。

そんな時、友人が「願い事をしたから願いが叶うらしい」と俺に言った。

小さい頃、俺は流れ星を見た時、両親が仲直りするよう願い事をしたが、叶わず両親は離婚した。

それから俺は、星に願い事をすれば叶うなんて、嘘だと心底落ち込んで、勝手に星を恨んでた。

...でも、今日、夜空にはこれだけの星が流れてるんだ。

隣で両手を合わせて願い事をしてる友人を見て...

この星空に願い事をしたら1つくらい叶いそうだなと思った。

...ちょっとだけ、希望が持てたんだ。


お題「星に願って」完

2/9/2025, 10:36:56 AM

【背中が語る成長】


5歳の君は私の側から離れない内気な子だった。

7歳になって、小学校に通うようになってもそうだった。

周りが怖いと怯える...そんな貴方の小さな背中を私は撫でて「大丈夫」だと言って落ち着かせた。

でも、13歳になると貴方は私に言葉で、態度で、反抗するようになった。

そんな貴方の背中はとても遠くて...私は、指1つ触れられなかった。

男の子って、こんなに怖いんだと思った...

それが、16歳になると、貴方は随分落ち着いた男性へと変わり始めた。

そして、20歳になった大人の貴方は、もう実家と呼ぶようになる、この家から、荷物を持って出ていくの。

あんなに小さかった背中は、とうとう私よりも大きくなってて...とても誇らしかった。

そんな君の背中を私は、笑顔で貴方のただ1人の母親として、力強く押す。

いってらっしゃい。元気で頑張って...!


お題「君の背中」完

2/8/2025, 10:22:18 AM

【紙飛行機】


いつも俺達は3人だった。

2人とは小学校で出会ってそこから20年間、何をするにも3人一緒だった。

小学生の時は3人の誰かの家に集まって遅くまで遊んだし、外でキャッチボールもめんどい宿題もやった。

中学生の時は進学を必死に悩んで話し合ったり、恋バナもちょっとしたよ...結局、進学先は3人みんな違った。

高校生の時でも相変わらず3人で会って、課題したり、遊んだり、好きな女の子の話もした。

大学生・社会人の時もそれは変わらなかったし、3人共車を持ったからドライブしたり、遠出する事もあった。

そんな思い出を紙に綴る。

2年前の今日、3人の仲間の内、1人が病気で死んだ。

見舞いには2人で毎日、毎日、毎日行って、最後の日も勿論会った....葬式も出た。

そして、つい最近なんとか死の事実を飲み込めた時、2人で上に行ったアイツに手紙を書こうという話になった。

と言っても何を書くか悩んだ末、俺とソイツも今までの山あり谷ありの懐かしい思い出を書いた。

俺の住んでるマンションの窓を開け、俺達はベランダに出た。

手紙を良く飛ぶ紙飛行に折って、空に向け、飛ばした。

遠く....ずっっと遠くにいるアイツに届きますように。


お題「遠く....」完

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