amerin

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4/1/2025, 2:10:55 PM

『はじめまして』

と、言う場面が無い。

それほど、人との交流をしていない自分に気付かされた。

でもね、もうひとつ気がついたの。

最近始めたこのアプリ。

毎日、何人もの人と「はじめまして」をしているって。

お互い、直接的に言葉を交わしあうわけではないけれど、出会う文や言葉は、とても新鮮で刺激的。

はじめましてが、こんなに素晴らしいものなのだと。

だから、私は、今日も書きます。

3/30/2025, 5:27:12 AM

『涙』

山奥で突然命を絶たれた。
その後、神のような存在が現れて、一つだけ「記憶」をあの世へ持ち帰って良いと言われた。

私は、最後に見た「青」の記憶を選択したのだが、なぜか白色の世界へ飛ばされた。

そして、「七色」に染まる池を見つけたが、それは、暗くて冷たい色ばかりの底なし沼のよう。どうにか「青」の世界を創りたくて、色をかき混ぜてみるのだがなかなか出来ない。

 白色があれば希望が見えるのに。

 私は、あきらめて白い世界に埋もれていった。

 どのくらいの時間が経ったのか。

 ーお父さん…

 すぐ側にある沼から聞こえる声に飛び起きた。沼に張り付いている色をどうにかかき分けていくと、底に風景が見えてきた。

緑の木々が広がる深い山の中。道もなく草が生い茂る果てのない荒野。

これは、現世を見ているのかもしれない。
複数の人が見える。老夫婦は、草むらに座り込み肩を揺らしてうずくまっている。それから、女の子とその母親らしい二人組は、じっと立ったまま涙を流し続けている。

ーお父さんー

聞こえるのは、涙交じりのか細い声。

なぜ泣いているのだろう。

ーバカな子ね…

聞こえるのは、涙交じりのあきらめの声。

悲しくて泣いているのだろうか。

ーどうして…

聞こえるのは、涙交じりの戸惑いの声。

私には涙の理由はわからなかったが、それぞれ、人によって感情が違うのだと思った。

「青」以外、現世での思い出も記憶もない自分なのだが、この人たちの涙は、私の心を強く惹きつけた。

すると、沼の表面に波紋が広がった。それは、いくつもの輪になってまるで花火のようだった。

いつのまにか、私は大粒の涙を流していた。そして、輪の中心に向かって、そっと震える手を伸ばした。

#ショートストーリー#1-3「涙の理由」

3/27/2025, 11:54:03 AM

『春爛漫』

昼のワイドショーで、桜の話をしていた。

老木の桜は、もう大きくならないと分かったら、豪華な花を咲かせることに集中するらしい。

若い桜の木は、花にはあまり関心がなくて、とにかく成長したいという思いが強いらしい。

テレビの中の誰かが、「春爛漫ですね」と言っていた。

一日中ソファーで寝そべりながらテレビを見ている自分は、若いのか老いているのか、自問自答してみる。

そして、私は、意を決して外へ出た。
忘れかけていた「春爛漫」を感じたくて。

3/26/2025, 4:13:29 PM

『七色』

最後に見た記憶。
手を伸ばした先にある、どこまでも続く青空。まばゆい青にどんどん引き寄せられ、私の体は浮上していった。

ああ、気が遠くなる。

気がつくと、周りは何もなかった。人もいなかった。天井も床も白色に統一され、例えるなら「無」に近い世界だった。

ここは天国か地獄か。

しかし、キラキラとした物が遠くにあるのが見え、私はすがる思いで走った。ふわふわした道を音もなく走った。

行き着いた先にあったのは、小さな池だった。茶色、黒色、灰色…。七色の、暗くて不気味な色を映し出していた。

これは、底なし沼に違いない。

私はゴロンと仰向けになり、真っ白な空をじっと睨んだ。

私は、現世で悪いことをしていたのだろうか。記憶が、最後に見た「青」以外何もないのだ。

そうだ、あの「青」を創ってみよう。七色を混ぜ合わせればできるかもしれない。

私は、沼に手を入れ、ぐるぐるとかき混ぜてみた。しかし、色の層は一瞬動くのだが、すぐに元通りになってしまう。何度もやってみたが無駄だった。青色にならない。

神は意地悪いことをする。

私はまた仰向けになった。頭上にある白色が、うらやましく見える。あの色があれば、きっと希望が見えてくるに違いないのに。

私はいったい、現世でどんな生き方をしてきたのだろうか。

頭がぼんやりとしてきた。
ああ、もう何も考えられなくなる。

白色をつかもうと、私は震える手を上へと伸ばした。


#ショートストーリー#1-2「記憶の中の青」

3/25/2025, 2:29:24 PM

『記憶』

木々が生い茂る山奥で、突然、事故に遭い、私は命を絶たれた。

すると、神のような存在が現れてささやいた。
「あの世に持っていける記憶は、一つだけだ。さあ、選ぶがよい」

私は、昔の記憶を巡らせた。

小さくてかわいい娘との楽しかった日々。

一目惚れするほど美しかった妻との10年間。

苦労して私を育ててくれた両親との日常。

どれも素晴らしい思い出で、一つに絞ることなど出来そうにない。なぜ神は意地悪い事を言うのだろうか。

私の頭は、モヤがかかったように少しずつぼんやりとしてきた。
ああ、もう時間がないのだな。
最後まで自分は一人なのだな。

そもそも孤独になってしまった原因は、自分にある。
ギャンブルして借金して、転職を繰り返して。良い父親でも夫でも息子でもなかった。だから、みんな、私から離れてしまった。

そうだ、そんなろくでもない自分の記憶は、持っていかないほうがよさそうだ。

私は、樹木の間から垣間見える空に向かって、震える手を伸ばした。

最後の記憶は、これがいい。

どこまでも青い空。


#ショートストーリー#1-1「最後の記憶」

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