喉の奥で遠慮して、出てこなかった言葉たち。
“プライド”という汚れた壁が邪魔をして、
馬鹿みたいな嘘を作った。
体の片隅にあった重いもの
いつのまにか、はっきり見えるようになってさ。
どれだけ布を貼ったって、いくつの針で縫ったって
ボロが出る。
本当の自分はどこにいるのだろう?
その答えを見つけ出すのは、骨が折れて
『解なし』と書きたくなるくらいだった。
あの日の幸せも、この夜の涙も、
全部まとめて、笑って、話せる未来。
人々が渇望してやまない世界。
私の理想郷。
#懐かしく思うこと
#力を込めて
吹ける夜風が、レースカーテンを揺らして
月の光が、そっと二人の影を重ねた
嗚呼、あなたが喘ぐ
私は、無言で力を強める
ただ、あなたへの愛の大きさを、知ってほしかった
嗚呼…嗚呼、あなたは強く悶えた
あなたの主張が、嘆きが、後悔が、
私の脳裏に入り込んでくる
私は、さらに力を強めた
…あ、あああ__
もう、あなたは何も言わなくなった
何もかも受け入れたように、心を失ったように
あなたは絶句した
私は力を込めるのをやめた
空虚を眺めて
「これでよかった」と言い聞かせる
あなただったモノを見た
首元に残る、生々しい手の跡、爪の跡
その全てが“私”を象徴していた
冷たくなったそれを撫でながら
そっと、キスをした。
#星座
夜空に輝く君は一等星
距離も、大きさも、明るさも、温もりも、
なにもかも敵わないけれど
たとえ何千光年離れてたって
僕は君を見つけるよ
この夜が明けても
君だけは消えないで
#踊りませんか?
ネットとは、姿の見えない仮面舞踏会
嘘のレッテルを貼り
嘘の関係が生まれる
「本当」は部屋の隅にでも隠して
私はこれが好きなんです。
私はこれが趣味なんです。
私はこれが得意なんです。
そういうことを綴るだけで、
自分のことを理解してもらえたって思ってしまうような
その「本当」でさえも創った『嘘』かもしれないのに
なぜか異常な依存性
なぜか絶えない承認欲求
顔を見て言えないようなことでも、
言いやすくなってしまうから
それはきっと、殺人罪
魅惑の煙に包まれて、人々はみな辿り着く
ここは危険な仮面舞踏会
そろそろ一曲、どうですか?
#静寂に包まれた部屋
僕は部屋
少し前に建てられたばかりのアパート
まだ人はいないけど
それでも僕は部屋
ガチャリ
最初に越して来たのは四人家族
小さい女の子と中くらいのお兄ちゃんが一人
学校から帰って、疲れたようすのお兄ちゃん
「頑張ったねぇ」とナデナデする女の子
それを見て微笑む両親
数十年後、すっかり大きくなった子供達は
あまりここに来なくなった
それでも、訪れるたびに笑顔で話していた
次に越して来たのは金髪のあんちゃん
毎日毎日、そりゃあもう酒臭くて、タバコ臭くて…
何度か綺麗な女性も連れて来てたっけ
意外と女性と付き合うのは苦手らしくて
フラれた時にはクッションに顔を埋めて泣いていた
大丈夫だよって言ったんだけど、
ちゃんと伝わってたのかな?
ある日は、眼鏡をかけた男性が来て
カメラを構えながら、「新たな心霊アパートだ…!」
と叫んでた
ちょっとちょっと、人が来なくなっちゃうから
やめてくださいな
__
まぁこれも全部数百年前のことであって
今は誰もこのアパートに住んでいない
僕に残ったのは、静寂の空間だけ
維持費とかもかかるんでしょう?
どうせなら壊しちゃおうよ
だけど家主のおじいさんは、このアパートを見上げては
にっこりと笑うだけ
その微笑みは「温もりはずっと残しておくべき」と
言わんばかりだった
もう何度目の秋晴れが
僕のそばを通り抜けていった