これからも、ずっと
『これからも、ずっと一緒にいようね』
この言葉に私は騙された
ずっと一緒にいられるわけじゃないのに
何の根拠もない言葉なのに
言われた時はただ嬉しくて、
そんなリスクも考えなかった
生きがいなんて何もなくて
辛く苦しい日々を彼が変えてくれた
彼は私の心の隙間を見つけては
滑り込んできて、それを埋めてくれた
彼のおかげで初めて人生が楽しいと思えた
私には彼しかいない
そして、彼もまた私しかいないのだろう
心のどこかでそう思っていた
それがいけなかったのだろうか
彼は私の隠れたところで
他の女にも同じことをしていた
甘いマスクで誘惑し、
疲れた心を見つけてはそれに取り憑くのだ
私もきっと見事に騙されたんだ
その日、彼を問い詰めた
あの言葉は嘘だったのかと
どうせ私のことはおまけだったんでしょと
まるで三流ドラマのようなセリフを言っていた
そこで告げられたのが
さよならだった
こんなの詐欺と同じじゃないか
現金を盗まれるよりもよっぽど辛い
心を弄ばれた挙句の果てに粉々に壊された
これからも、ずっと…
孤独なんだろうな、そう思った
沈む夕日
18時、橋の下
水面に夕日が映った
石を投げた
波紋と共に消えていく
涙を悟られぬように
顔を洗った
赤ん坊が黄昏泣きをする理由が
少し分かった気がした
孤独は好きなはずなのに
心のどこかで『寂しい』という声がする
行き場のないこの感情も
夕日と共に
暗闇に沈んでしまえばいいのに
星空の下で
かつて親友と星空の下で交わした約束があった
“大人になったらまたここで会おう”
結局、その親友は小学校を卒業する際に親の都合で
遠くに引越してしまった
当時私たちはまだスマートフォンを持っていなかった為
お互い、電話越しでしか連絡を取ることができなかった
だから再々話せるわけでもなく、
だんだんと疎遠になっていった
もう会えないだろう
親友の存在が頭から離れようとしていた時
家の押し入れからある物が出てきた
それはタイムカプセルだった
ただ普通のタイムカプセルと違うのは、
それを作ったのが自分ではないということだ
小学生の頃、その親友と未来の自分に向けた
メッセージを書いた紙を菓子の容器に入れ、
タイムカプセルを作った
そして別れる際にそれを交換していたのだ
“未来のお前へ
ちゃんとした仕事についていますか?
綺麗な奥さんはいますか?
辛いことがあったらいつでも言うんだぞ!
星空の下、あの場所で待ってるからな”
それを読み終わり、自分が微笑んでいることに気づいた
星空の下、あの場所で…
…行ってみよう
親友と共に過ごしたあの場所へ
数日後、その場所へ行ってみた
それは小さな公園だった
交互に滑った滑り台
並んで乗ったブランコ
一緒に登ったジャングルジム
全部あの日のまま残っていた
まるでこの場所だけ時間が止まっているかのように
やはり親友はいなかった
空を見上げた
星が出ていた
しばらくして目の端で光るものを捉えた
流れ星だった
“また親友と会えますように”
絶対にまた会える
私と親友は同じ星空の下で繋がっているのだから
それでいい
隣にあなたがいる
それでいい、それだけでいいの
だから、“将来のこと”とか言わないでよ
結婚しようだとか、子供を育てるかとか、
急に聞かれても困るし…
私は今の距離感が好きなのに
私達の関係は『恋人』それ以上でも以下でもない
かと言って別れるのは嫌だから
今日も曖昧にやり過ごそう
いつまで先延ばしにできるかな…
せめて、来月までは…
この世から去る日までは彼のそばにいたいな…
私は、数ヶ月前から不治の病で余命宣告を受けていた
でもそのことは彼には言わなかった
だって、最後に見たいのは
彼の泣き顔じゃないから…
一つだけ
僕は“死にたい”と思い、ビルから飛び降りた
この高さなら間違いなく死ねると思っていた
でも結局、死ねなかった
「奇跡だ」「なんでこんなことをしたの」
重度の骨折で終わった僕を見下ろして、
両親と医者から言葉という名の酸性雨が浴びせられる
それらは僕の心の傷を悪化させるだけだった
喜ばないで、問い詰めないで、慰めないで…
僕は“死にたい”というよりも
“消えたい”のかもしれない
僕を知る全ての人の記憶から
おとぎ話の世界のように、魔神というものがいて
願いを叶えてくれるのだとしたら
僕は間違いなくこう答えるだろう
「ただ一つでいい、消えさせてくれ」と