美しい
瑠璃色のガラス玉のように美しい君の瞳に恋をした。
見つめているうちにまるで吸い込まれてしまうような…
小さな手や細身の肌は雪のように白く、美しい。
淡いピンク色の唇はこの世のものとは思えなかった。
彼女は今まで見てきた中でも一番の逸材であった。
私は彼女の美しい容貌を無駄にしないように
慎重にドレスを選んであげた。
明日、彼女が大勢の人々のもとへと行ってしまうのは
嬉しくもあり、悲しくもある。
だが、この美しさを独占するわけにもいかない。
彼女の細い腕を紐で優しく縛る。
足も少し吊った。
こうして完成した「マリオネット」は
明日の展覧会で多くのお客様に見られるのだ。
この世の美しいものが一つ二つと増えていく。
私はそれが楽しみでたまらない。
この世界は
この世界はどこまで続いているんだろう。
何が初めの生物を生み出したんだろう。
考えたらキリがないけれど。
やっぱり時々考えてしまう。
人間は神様に何を求められているのか。
それは誰にもわからない。
どうして辛くても生きないといけないんだろう。
私1人が生きたって、死んだって
何も変わらないのに。
ずっとこのまま
暖かい朝ごはんを食べて
学校で友達と話をして
家に帰れば家族がいる
当たり前のことだけど、とても幸せ
この「当たり前」がいつまで続くのかはわからない
世界には家族がいない人、環境に恵まれていない人
困難という名の壁に直面している人も沢山いる
私達の当たり前は
その人達にとってはかなりの贅沢なのかもしれない
ずっとこのままでいたいと望むことは
悪いことではないけれど
私はそれよりも
この当たり前を辛い思いをしている人に分け与えたい
寒さが身に染みて
肌寒い朝
コートを着て家を出た。
車のドアに触れた瞬間
私の天敵である静電気が手を襲った。
…幸い、車のエンジンはかかってよかった。
20分後
小さな墓地にたどり着いた。
私の祖父と祖母がここにいる。
本当は本物の花がよかったが、
寒さで枯れてしまわないように造花を供えた。
それから、家から持ってきた雑巾で2人の墓石を優しく
拭いた。
氷のように冷たい。
北風にふかれて、何度も火が消えそうになる線香。
それを必死に守りながら
私は2人に手を合わせた。
日本の冬は寒い。
でも、ただ寒いだけではない。
目の前からは消えてしまったけれど、
今も心の中で生きている人。
彼らの温かさは
周りが寒いからこそ、私の中で際立つのだ。